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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第十二話  男の娘ではなく女の子

 初仕事から3日が経った。俺は木山先生の残りの論文を始めとして、現状で公開されているAIM拡散力場や脳科学の論文を読みあさり、レベルアッパーで意識不明になってしまうのを回避する手段を探していた。『探している』ではなく『探していた』である。

 アリスに調べてもらったところ、俺の脳波はすでに一部が木山春生のものと同一になっているみたいで、現時点で他人の脳を使った演算で能力上昇している状態らしい。しかし、俺の演算能力パラメーターには100兆という数値が入っているので、実際には誤差程度にしか上がっていないという状態なのだ。まぁ、今現在どのくらいの人数がレベルアッパーを使用しているのか分からないが、俺自身は演算能力が上昇したという実感など全然無いわけである。

 まず、俺は最初にレベルアッパーの解除方法を考えてみた。レベルアッパーにはアンインストールプログラムというものがあるはずなのだが、どうやらそれはネットワークに接続されたパソコン上には存在しないようで、手に入れることが出来ていない。ネット上に公開されてないものでも、ネットに接続されたパソコンからなら、アリスの能力を使えば簡単に入手することが出来る。しかし、物理的もしくは論理的にネットワークとの接続がされていないパソコンからは、どうやっても入手が出来ないのである。一応、パソコンがネットワークに接続されることがあれば、即座に入手するようアリスに頼んである。

 次に考えたのは、レベルアッパーで演算能力の全てが他人に使用される、という事態を回避できないかということだった。俺の演算能力は100兆に設定してあるので、1万人に1億ずつ使われたとしても99兆が残る計算になるのだが、数値がそのまま能力の大きさにならないとするなら、もしかしたら1844京に設定しても足りないのかもしれない。

 そして最後に考えたのが、木山春生の脳を逆に乗っ取るというものだった。さすがにその方法を考えた時点では絶対に無理だろうと思っていたのだが、木山先生の大脳生理学の論文や他の人が書いた脳科学の論文などを読むことで、俺の中で少しずつ現実味を帯び始めてきて、実際に俺の考えた方法で木山先生の脳にアクセスしてみたら、なんとアクセスすることが出来たのである。そして、俺の脳の演算能力の使用最大値を10%に制限することが出来てしまったのである。

 しかし、それをやってしまったことで、木山先生には脳にアクセスしたことがばれたのではないかと思っている。レベルアッパーの事件は7月に佳境を迎えるはずなので、木山先生がそれまでの間に何かしらの対抗手段を講じてくることも考えられるのだ。

(アリス、木山春生の動向を少し気にかけておいてくれ)

(うん、分かった)

 取り敢えずアリスに木山先生がどう動くのかを監視してもらうことにして、俺は自分のパラメーターを再確認してみることにした。

「なっ!!」

 俺は普通にパラメーターの確認だけするつもりだったのだが、見ようとした瞬間に『アップデート』という情報が飛び込んできたのである。っつーか、あの神様、一体何を考えてるんだか……。

 さて、俺のパラメーター変更能力についてなのだが、実際には脳内イメージでの作業になるので、他人から見て何かが分かるということは無い。ということで、今回の『アップデート』という言葉も、脳とか意識というものに直接感じたわけだ。

 脳内イメージを表現するのは普通ならかなり難しいのだが、少なくともパラメーター変更能力に関して言えば、パソコンで何かしらの数値設定をする画面みたいなものだと思ってもらえばいい。イメージとしては左側に項目名があって右側が数値入力となっている感じで、今回の『アップデート』の言葉は、巨大なポップアップが出てきたと思ってもらえば分かりやすいだろう。

 というわけで、俺はそのアップデートをしてみたのだが、何というか……本当にパソコンの画面で例えると説明しやすいな。今までは、項目がたくさんあって全て上下のスクロールで探していたと思ってもらいたい。それが今回のアップデートでは、『身体能力』とか『論理能力』などいくつかのタブに分かれるように変更されている。

 早速色々と確認してみるが、『身体能力』では視力や聴覚などに始まり、筋力や体力といった項目が並んでいる。『論理能力』では思考力や記憶力、学園都市製超能力、演算能力といった項目が並んでいる。『魔力関係』では魔術、魔法、魔道、魔導などが並んでおり、よく見たら今まではいくつもあった『MP』という項目が、『DQ-MP』や『FF-MP』などに名称が変更されていた。まぁ、今まででも初期値が255だったり9999だったりしたので、分かりやすかったと言えば分かりやすかったのだが……。

 そんな感じで、色々タブを確認していたのだが、最後に『外見的特徴』というタブがあった。中を見てみると『種族』『性別』『年齢』『身長』『体重』などの項目が並んでいるのだが、ここだけは数値以外の項目ばかりだ。ってか、種族とか性別って……。そして、一番下には『設定を更新する』や『元に戻す』、『設定保存』という、パソコンで言えばボタンのようなものが設置されている。

 どうやら、『種族』と『性別』の項目に関しては選択制のようだ。『種族』という項目を操作してみようとしたが、今は『人間』以外を選べないらしい。パソコンで言えば淡色表示の選択不可項目として、『エルフ』や『ハーフエルフ』など何種類か種族があるのが分かる。しかし『ドラゴン』ってどうなるんだろ、ジェローム・ブリリアント3世とかシロちゃんみたいになるのだろうか、もしくはミルガズィアさんやフィリアさんみたいな感じになるのだろうか。それから『性別』なのだが、これは『男』も『女』も選択できる状態になっていた。

 その後の『年齢』から下は数値で表すのでは無くスライドバーの形式になっていて、左右にスライドさせて調節するようになっているみたいだ。そう言えば、『B』と『W』と『H』ってスリーサイズか……。それ以外にも、髪の毛の長さから手足や指の長さの調整まであったりするのだが……、この世界に来た時に使いたかったな、この設定。

 取り敢えず俺は洗面所の鏡の前へ行き、年齢のスライドバーを動かしてみる……が、特に見た目の変化は感じられない。しかし、年齢以下の項目のスライドバーは、恐らく変化させた年齢に応じて、だと思うが変化している。そこで、俺は一番下のボタンを思い出した。恐らくここで『設定を更新する』を選ばないと変更されないのだろう。

 設定を更新してみると急に身長が高くなり、大人になった状態の俺が鏡に映っていた。服はそこそこ余裕のある服を着ていたので今回は破れずにすんだが、通常の状態で急に変化させると大変なことになりそうだ。

 年齢を元に戻した後も色々鏡の前で試してみたが、どうやらスライドバーに関しては、下の項目に対してのみ変化を与えることが出来るようである。また、上の項目の位置によって下の項目のスライドさせられる範囲が決められてしまうようだ。

 さすがに手足の長さや指の長さをスライドバーの一番端まで持って行くと、見た目にちょっとおかしいんじゃないかというぐらいの変化をするのだが、宇宙人みたいになるようなことは無かった。色々試してみた感じで言えば、そんな極端に人間離れした体格には設定出来ないようだ。

 一応、外見的特徴といっても、髪や皮膚、目などの色を変更したり、顔の形を変えるなどのことは出来ないようだ。それが変えられれば、絶対ばれない変装とか出来そうなんだけど……。

 取り敢えず、俺がベストバランスだと思える設定を見つけ出し、そこで『設定保存』をしてみる。すると、一番下に『保存1』というボタンが新しく加わった。少なくとも『1』と付いているからには、恐らくいくつかの設定が保存出来るのだと思う。

 俺は衣類を収納している作成空間を開き、女性用の衣類を取り出す。今までいくつかの世界では女性になっていたこともあり、一応トータルで30年ぐらいは女性としても生活してきたので、女性用の衣類もそこそこ持っているのである。

 女性用衣類を取り出してやることといえば、当然性別の変更である。まず性別を女性に変えるだけで設定を更新してみる。身長や体重などのスライドバーは多少変化したようだが、男性と女性の体型の違いで微妙に変化するのだろう。顔立ちと髪の長さは確かに女性になっているし、多少胸の膨らみもあるようだ。服を着替えて髪の毛を整えてみると、そこそこの美少女が鏡の前に立っていた。しかし、このままでは多少服が大きいので年齢を少し、というかこの服に合う体になるぐらいまで年齢を上げてみる。服のサイズはちょうど良くなり、バストサイズも元の年齢の時より少しサイズアップしているようで、ブラジャーのサイズもちょうど良くなっていた。つまり、バストサイズも年齢に応じて適切に再設定されるのだろう。

 当然ながらこのままだと女性になる時には年齢も変更しなければならなくなるので、元の年齢で女性化しても大丈夫なように服を買っておきたい。それで取り敢えず少々サイズが大きめでも、着てて違和感が余りないようなワンピースを作成空間から取り出す。元々がミニ丈なので年齢を戻してもサイズ的には問題ないが、多少ウエストの余裕がありすぎるのでベルトを取り出してしめてみる。ちょっと変な気がしないでもないが、まぁそんなにおかしいわけでもない。服を買いに行くだけならこのままでも良いとして、その時にはベルトも買っておいた方が良いかもしれない。

 一応服のサイズだけを考えるのであれば、ほぼピッタリのサイズの服を持っていないわけでもない。シェーラを拾ったスレイヤーズの世界をはじめ、ロードス島戦記やその他RPG系な世界で、ハーフエルフやエルフなどになったこともあるのだ。エルフやハーフエルフという種族は人間よりも多少小柄なので、体格的にほぼ今の体つきと同じだったと言って良いだろう。ではなぜその服を着ないのかというと、見た目からして思い切りファンタジー世界の衣装なので、この世界で着るとどう見てもコスプレにしか見えなくなるからである。もし、この学園都市でコスプレイベントなるものが開催されることがあれば、それを着てみるのも良いかもしれない。

 取り敢えず、俺は財布や身分証などを持って出かけようとしたのだが、そこで気がついた。そう言えば、この身分証って女の状態だと使えないのだ。なので、まぁ身分証は置いていったほうが良いだろう。

 さて、服を買いに行くのに真っ先に思いつく場所と言えば、当然セブンスミストである。というわけで、俺はいつも通りバスに乗ってセブンスミストへ向かい、色々と服をそろえてみた。男物よりは多少高めの値段が付いているが、それでも多分学園都市の外よりは安いのでは無いだろうか。少なくとも、俺が元居た世界ではこれだけの服をこの値段ではそろえられないだろう、というくらいには安いのである。しかし、店内を見て回っている時に見つけたのだが、ドレス……マリーアントワネットが着ていそうなドレスと言えば分かりやすいだろうか、そんな物を20種類以上も置いてあるって、一体誰がどこで着るんだろう……。ある意味、俺の持っているファンタジー系の衣装よりもファンタジーな気がする。

 アパートに戻って、買ってきた服は取り敢えずクローゼットに入れておき、男に戻ってから暗部連絡用のケータイで土御門さんに電話をかけた。

『こっちにかけてくるって、どうしたんだにゃー?』

「実は、身分証をもう一つ作れないかと思ってるんですけど」

 こういう話は当然暗部用のケータイを使った方が良いだろう。

『一体何に使うつもりだ?』

 怪訝そうな声で土御門さんが聞いてくる。

「俺が女になった時に使うための、女性としての身分証が欲しいんですけどね」

 俺が服を買いに行く前に気付いた、女性化した時の身分証の問題を解決しておきたいのである。ついでに言うと、女性の身分証があれば学舎の園に入ることが出来るかもしれないという期待もある。

『なっ?』

 やはり土御門さんは驚いたようだ。

『話は聞かせてもらった。それでは手配しておこう』

『あ……アレイスターっ!』

「……え、良いんですか?」

 いきなり通話に割り込んできたアレイスターに驚いたと言えば驚いたのだが、それ以上にあっさりと手配してくれるという事態のほうで驚いた。

『ああ、ところで、名前はどうするのかね?』

「それは神代(こうじろ)姫羅(きら)でお願いします」

 アレイスターから名前を聞かれて答える。これまでの世界で女性になっていた時は、だいたいこの名前を使っていたのである。

『バンクには登録しておいた。明日には身分証を発行させるので、女性になった状態で取りに行くと良い、場所は土御門が知っている』

「はい、ありがとうございます」

『チッ』

 さすがアレイスターといったところか、こういうことは即座に出来るようである。しかし、俺がお礼を言った時に土御門さんが舌打ちしてたな。

「それでは土御門さん、明日はよろしくお願いします」

『ああ、分かった。昼過ぎには迎えに行くぜい』

「はい」

 電話を終えると、俺はもう一度女性に戻る。一応、男性に戻って電話していた時も、服装は買い物に行った時のままのワンピースだった。当然下着もそのままだったので、何か変な感じではあったのだが、声が女声のままだと困るので男性になっていたのだ。

 洗面所の鏡の前に行くと、外見的特徴の設定変更の続きから始める。本来なら服を買いに行く前に設定しておいた方が良かったのかもしれないが、そんなに無茶な変更を加えるつもりも無かったので、人が増える夕方になる前に買い物に行っておきたかったのである。

 鏡の前で服を脱ぐと、身長を少し高くしてみる。それに応じて体重なども少し増加しているようだが、体重は少し落としてバストサイズも下げてみる。俺自身で言えばバストは控えめな方が良いと思っている。初めて女性になって転移した時に、その時でも胸の大きさはそれほど大きくなかったはずなのだが、そのちょっとした重さに結構苦労したのである。まぁ、元の世界で男性として生きていた時から、巨乳というのが好きでは無かったので、俺としては理想の体型と言えなくもない。ちなみに現在の設定では、Aカップよりわずかに小さいぐらいになっているはずだ。ちなみに俺の理想としては、成長の止まった時点でBカップぐらいがちょうど良いと思っている。

 その後も手足や指の長さを少し長めに設定し、髪の毛の長さも充分ポニーテールが出来るぐらいの長さに設定、ってか、ポニーテールを解いたら腰ぐらいまでの長さになってしまった。そして少しずつ微調整を繰り返してから設定を保存した。

 翌日、俺は土御門さんが迎えに来た時に、前日に購入した服を着た姫羅の姿で出たのだが、土御門さんは相当驚いていたようだ。ついでに運転手さんも俺の姿を見て驚いていた。

 身分証を発行してもらい、それを受け取ってアパートに戻ると、すっかり忘れていたことを思い出した。パラメーター変更の思わぬアップデートで本来の目的を忘れていたのだ。元々俺は、演算能力の値が上がっているかどうかの確認をするつもりだったのである。
 
 

 
後書き
お読みいただいている皆様、ありがとうございます。
さて、やっとチート能力強化第一弾です。
どうしても超電磁砲のストーリーに介入させたかったので女性化出来るようにしてみました。男の娘にした場合、身分証の問題が解決できないと思ったので……。
次回はチート能力強化第二弾で行きたいと思っています。
あと、十話ぐらいから次回に引っ張るような終わらせ方を心がけてみました。
 
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