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戦国異伝

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第二百十六話 慶次と闇その九

「そして真田殿、直江殿に十勇士と揃っていれば」
「何があってもなんだな」
「上様も助かる」
「ならいいけれどな。しかしな」
「今度は何じゃ」
「その『何が』ってのも気になるな」
 煉獄はその目を鋭くさせて己の師匠にまた問うた。
「それは何だよ」
「戦じゃないよね」
 大蛇は自分の両手を頭の後ろに組んだ姿勢で果心居士に問うた。
「そういうのじゃ」
「もう天下に織田家に敵う大名はいないでやんすよ」
 煙もこう言う。
「後は織田家にとっては些細な戦でやんす」
「九州位か」
 拳は己の見立てを述べた。
「精々」
「そんなところじゃ。戦ではない」
「じゃあ刺客か?」
 からくりはこう呼んだ。
「何処かの碌でもない奴からのう」
「ほっほっほ、その時になればわかる」
 果心居士はからくりの今の問いには答えなかった、その代わりにその飄々とした笑いで応えたのだった。
 そしてだ、慶次と自分の弟子達にこう告げた。
「わしも天下が収まることを願っておる、その為に動いておる」
「だからわし等も育てた」
 あや取りがぽつりと言った。
「師匠いつも言ってた」
「その通りじゃ、御主達はそれを果たしてくれる」
「それで師匠も」
 鞠も問うた。
「天下の為に」
「うむ、動いておるからのう」
 そのことは確かだと言ってだ、そして。
 風と共に何処かにと消えようとする、命はその果心居士に問うた。
「お師匠様、また私達の前に出て来られますか?」
「うむ」
 そうするとだ、果心居士は命の言葉に答えた。
「刻限が来ればな」
「そうですか」
「天下は定まる」
 またこう言うのだった。
「そして変わる、御主達はそれを見るのじゃ」
「うん、わかったよ」
 獣は師の言葉に素直に頷いた。
「僕達そうするよ」
「それではのう」 
 ここまで話してだ、そしてだった。
 果心居士は完全に姿を消した、気配も何処かへと煙の様に消え去っていた。慶次は今しがたまで彼がいた場所を見ながら言った。
「さて、噂通りのな」
「凄い人だろ」
「うむ、忍というよりは」
 慶次は風の誇らしげな顔での誇らしげな言葉に応えた。
「妖術使い、いや仙人の様な方じゃな」
「実際そうじゃないかとも言われてるんだ」
 風は左手を拳にして熱い口調で答えた。
「うちのお師匠さんはな」
「実際仙人でも不思議ではない」
 こうも言う慶次だった。
「あの方はな、しかし」
「しかし?」
 鏡は慶次の言葉が続くと見て問い返した。
「しかしとは一体」
「うむ、あの方も何かを感じておられるな」
 慶次がここで言うのはこのことだった。
「どうやらな」
「では闇を」
「かも知れぬな、わしは具体的はわからぬが」
 果心居士、彼はというのだ。
「あの方は違う様じゃな」
「色々と思わせぶりなこと言ってたな」
 煉獄も眉を顰めせて言う。
「師匠、何か知ってるな」
「知っていても言わないね、あれは」
「昔からそういう人だしな」
 大蛇とからくりが煉獄に言う。 
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