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ニネヴェ

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2部分:第二章


第二章

「このままではエジプトが来るぞ」
「只でさえ攻めるのが長引いている」
「こちらの士気も心配だ」
「しかも敵の士気はまだ高い」
 伊達に戦闘国家ではなかった。彼等は劣勢であっても戦意が萎えることはなかった。彼等にはそうした感情は無縁であるかの様である。
「どうする?力攻めは駄目だ」
「それではどれだけ攻めても意味がないぞ」
「このままアッシリアを生かしておけん」
「滅ぼさなくてならないが」
「しかし」
 それでもだった。やはり攻め落とせない。少なくとも正攻法ではだ。
 攻めあぐね焦っていた彼等だった。しかしだ。
 ここである者がだ。こう言ったのであった。
「そうだ、ここはだ」
「ここは?」
「何か考えがあるのか?」
「ある」
 こうだ。周りに答えたのだった。
「あるからこそ言った」
「ではそれは何だ」
「どうするのだ、それで」
「一体」
「まずは火を焚く」
 そうするというのである。
「城壁の傍でだ。とにかく火を焚く」
「火をだろ?」
「それをか」
「焚くのか」
「そうするのか」
「そうだ、無数の篝火を置く」
 具体的にどうするかも述べられた。
「そしてそのうえでだ」
「それからどうするのだ」
「火を焚くだけか?」
「まさかとは思うが」
「後はそれからだ」
 ここでは多くは言わなかった。
「いいな、まずは火だ」
「それであの街が陥ちるのか」
「ニネヴェが」
「そうだ、陥ちる」
 それは間違いないのだという。
「だからだ。ここはだ」
「とにかくやってみるか」
「そうだな。どのみちこのままではあの街は陥落させられない」
「ではやってみる方がいい」
「まずはそれからだな」
「その通りだな」
 こうしてだった。彼等はとりあえずはそうして陣中で火を焚くことにしたのであった。それはアッシリア側からも見られた。
 彼等はそれを見てだ。まずはいぶかしんだ。
「何だ、あいつ等」
「バビロニアの奴等らしいが」
「一体何のつもりだ?」
「何をしているんだ?」
 城壁の上からだ。いぶかしみながら言うのであった。
 城壁を駆け上がる為の傾斜路があった。しかしその一角にだった。
 火がかけられる。それは一つではなかった。
 連合軍の兵士達は傾斜路に次々と火を投げ込む。それは忽ちのうちに誰も近寄れない程になった。
「何をしているんだ、奴等は」
「火なぞ燃やして何をするんだ」
「昼だというのに灯りが必要なのか?」
「わからん」
「何を考えている」
 アッシリアの兵士達はいぶかしむばかりであった。火には次々と木やそういった燃えるものが投げ込まれ衰えさせられない。そしてだ。
 アッシリア側はその炎に近寄れなかった。熱さ故にだ。しかも連合軍がどうしてそんなことをしているのかわからなかった。いぶかしむばかりだった。
 
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