FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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暁の天狼島
大爆発が起き、煙が少しずつ晴れていく。俺たち想いを託した者は全員が結果を見るべく顔を上げた。
そこには、ふわりと舞っているナツさんのマフラー。そして、
「ぐおっ!!」
ハデスの頬に拳を突きつけるナツさんの姿があった。
「ガァァァァッ!!」
殴られたハデスは体を回転させながら飛ばされていく。
「ナツ!!あっ・・・」
ルーシィさんは飛ばされていくナツさんのマフラーを発見する。そのマフラーが戦艦に大きく空いた穴から外に出ていこうとしていたため、ルーシィさんは急いでそれを掴む。
「よっ!!」
しかし、取ったところが悪く落ちそうになってしまっていた。
「って、キャー!!落ちるー!!」
「ルーシィさん危ない!!」
「あーーー!!」
ウェンディが落ちそうなルーシィさんを助けようと片足を引っ張ったら開脚のような形になってしまい、ルーシィさんは悶絶していた。
「ば・・・ばかな・・・裏魔法が効かぬのか!?」
ハデスは自分の魔法を正面から受けたはずのナツさんが立っている姿を見て驚いていた。
「ありえん!!私の魔法は・・・!!」
ハデスは赤く輝いている右目を突然押さえる。
その手を退けると、目の色が左目と同様に、通常の人間と同じ色に変わっていた。
「まさか・・・」
「うおおおおおおおっ!!」
ナツさんは尻餅をついたまま立ち上がれないハデスにアッパーを入れる。ハデスはそれにより宙へと舞った。
第三者side
一方、先程から自分たちの目の前にある、あるものを停止しようとしていたハッピーたちは、それを無事に停止させることに成功していた。
悪魔の心臓の戦闘員たちはそれを見て頭を抱え、リリーは「ギヒッ」と笑っていた。
「やったね!!」
「うん!!」
「そうね」
ハッピーたちは全員でハイタッチをしている。
実はハッピーたちの停止させた物は、ハデスの長寿と大魔力を支えている“悪魔の心臓”だったのだ。これを破壊されたことにより、ハデスはその圧倒的な魔力を失ってしまったのだ。
シリルside
(私の心臓を・・・!?)
ハデスが何かに驚いた顔をしていると、さっきまで俺たちに攻撃していた悪魔たちがその形を留めることができずに崩れ始めている。
「なんだ?土塊の悪魔たちが・・・」
「消えていく?」
「ど・・・どうなってるんだ?」
エルザさん、グレイさん、俺は何が起きたのかわからず、その様子を呆然と見送る。
(あれをやられたら・・・私の魔力が・・・)
ナツさんはハデスに次から次へと攻撃を加えていく。ハデスはさっきまでとはうって代わり、なす統べなくその攻撃を受け続けている。
「ん?あれ?」
ナツさんが怒濤の攻撃を続ける中、ウェンディが何かに気付く。
「どうしたの?ウェンディ」
「何かあったの?」
ルーシィさんと俺がウェンディの方へと視線を向ける。
「な!!」
「そんな・・・」
俺たちはそれを見て驚いた。そこには本来、あり得るはずのない光景があったのだ。
「天狼樹が・・・」
「元通りに・・・」
「戻ってる!?」
グリモアのアズマによって倒されたはずの天狼樹が元通りに立っていたのだ。
キィィィン
突然、俺たちのギルドマークが光り出す。
「え!?これって・・・」
「紋章が光って・・・」
「よくわかんないけど・・・」
「魔力が元に・・・」
「戻っていく!」
ギルドマークが光ったかと思ったら、魔力が尽きかけていたはずの俺たちに、再び力がみなぎってくる!!
「うおおおおおおおっ!!」
魔力が全開したナツさんはハデスに向かって再び突っ込む。
(私が・・・この私が・・・マカロフに負けるというのか?)
「勝つのは・・・俺たちだぁ!!」
ナツさんはハデスに向かって拳を向ける。だが、
「否ぁ!!」
ハデスはそれを掻い潜り、ナツさんの顔に平手打ちを入れる。
ナツさんはそれに怯んでいると、ハデスはすぐに飛び蹴りを放つ。
「魔道を進む者の頂きに辿り着くまでは」
ハデスは意地でナツさんを投げ飛ばす。
「悪魔は眠らない!!」
しかし、そのハデスの前に一人の男が立ちふさがる。
「うおっ!!」
その男はさっきまで倒れていたはずのラクサスさんだった。ラクサスさんはハデスの顔に右ストーレートをぶちこむ。
「ラクサス!!」
「いけー!!妖精の尻尾!!」
ナツさんは炎と雷を体に纏う。
「カァッ!!」
「うおっ!!」
ラクサスさんは体勢を立て直したハデスから攻撃を受け倒れる。しかし、その後ろから俺たちがハデスに突進する。
「恐らくこれが最後の一撃!!」
「戻った魔力を全部ぶちこむぞ!!」
「返り討ちにしてくれるわ!!」
ハデスは両手から魔法を俺たちに繰り出す。だが、それを俺たちは交わす。
「契約まだだけど・・・開け!!磨羯宮の扉!!カプリコーン!!」
「仰せのままに。ルーシィ様」
ルーシィさんが召喚したのはヤギの姿をしたタキシード姿の星霊。初めて見る星霊だ!!
「お願い!!」
「はっ!」
カプリコーンはハデスに向かって走り出す。
「うぬは・・・」
「ゾルディオではありませんぞ!!」
カプリコーンはハデスに瞬く間に連打を入れていく。
「私はルーシィ様の星霊、カプリコーン!!」
カプリコーンはハデスの顔にエルボーを決める。ハデスはそれにより目を閉じてしまい、次の攻撃に気付くのが遅れた。
「見よう見まね!!天竜の翼撃!!」
「うわあああああ!!」
ハデスはウェンディの攻撃を受け床を転がっていく。
「うおおおおっ!!」
その上からグレイさんが両手に氷の剣を持ち、
「氷魔剣!!」
「ぐはぁっ!!」
ハデスを十字に斬った。
「換装!!」
続いてエルザさんが天輪の鎧へと換装する。
「天輪・・・五芒星の剣《ベンタグラムソード》!!」
エルザさんは空に輝く星のようにハデスを斬りつけた。
「新・滅竜奥義!!」
「!!」
俺が両手で水の球体を作る。
「蛟竜水嵐舞!!」
「がはあああっ!!」
その球体をハデスに向かって投じ、ハデスはその水の中で打ち付けられ外へと放り出される。
カミューニさんの蛟竜得水と俺の水中海嵐舞を合わせた滅竜奥義だ!!
「があああああっ!!」
そしてナツさんが雷と炎を腕に集め、ハデスへと飛ぶ。
「悪魔の法律!!」
ハデスは両手の中心に魔力を集めるが、
「滅竜奥義!!改!!」
(ま・・・間に合わん!!)
ハデスのそれよりもナツさんの方が早かった。
「紅蓮爆雷刃!!」
「うわああああああああ!!」
ナツさんの滅竜奥義を受けたハデスは大きく飛ばされ、白目を向いて床に倒れていた。
それと同時に、地平線から太陽が昇ってくる。俺たちの勝利を祝うように。
「・・・・・」
ナツさんは意識を失っているハデスを見つめ、魔力の消耗が激しかったのか、倒れそうになる。
「じっちゃん・・・奴等に見せてやったぞ・・・全身全霊をかけた・・・ギルドの力を・・・」
そしてナツさんは両手を高々と上げて勝鬨をあげる。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!これが俺たちのギルドたぁぁぁぁぁ!!」
今ここに悪魔との戦いは終結した。俺たちは勝利を喜びをみんなで分かち合っていた。
「終わったな」
「ああ」
エルザさんは鎧をいつもの物へと戻している。
「私たち、勝ったんですね!!」
「やったなウェンディ!!」
「うん!!」
俺とウェンディは手を上げてハイタッチをする。
「はい、マフラー」
「ありがとな」
ルーシィさんはマフラーをナツさんに手渡す。ナツさんはそれを笑顔で受け取っている。俺たちはそんな何気ない光景を見て笑っていた。すると、突然ハッピーたちの悲鳴が聞こえてくる。
「ふぇぇぇん!!」
「みんなぁー!!」
「助けてシリルー!!」
「ん?お前ら・・・」
「あれって・・・」
俺たちはハッピーたちの方へと視線を移す。すると、そこには悪魔の心臓の戦闘員たちに追いかけられていたセシリーたちがいた。
「ここであの人数ですか?」
「まずいぞ・・・」
「くそ・・・さすがにもう魔力がゼロだ」
「はわあ・・・」
俺たちはあまりの人数に動揺していた。さっきまでのハデスとの戦いで魔力が完全になくなっちまったよ・・・
「すまん・・・俺も魔力が・・・」
リリーもどうやら魔力切れを起こしたらしく、いつものミニマムサイズになっていた。その背中には何やら剣を持っているけど。
「みんな怒ってるよー!!」
「そりゃそうでしょうけど・・・」
「どうしよう~!!」
ハッピーたちはあたふたとしている。一体何をしたんだ?
何て思っていると、俺たちと敵の間に数人の人影が割って入る。
「そこまでじゃ!!」
そう言ったのはマスターだった。他にも、簡易ベースに残っていたはずの皆さんもいたのだ。
「じっちゃん!!」
「みんな!!」
「マスターもガジルさんも!!」
「ミラさんたちもいますよ!!」
「よく無事で」
「そうか、天狼樹が元に戻って、島の加護が」
エルザさんはどうやら皆さんが無事な理由がわかっているみたいだ。それにしても、皆さん無事でよかった!!
「うおっ!!増えた!!」
「あ、あれはマカロフか!?」
「てかあそこを見ろ!!」
浮き足立つ悪魔の心臓の戦闘員たち。その一人が倒れているハデスを指さす。
「マスターハデスが!!」
「倒れてる!!」
それを見て悪魔の心臓の戦闘員たちにはさらに動揺が広がった。
「今すぐこの島から出ていけ!!」
「わ、わかりました!!」
「信号弾だ!!」
「お邪魔しましたー!!」
マスターにそう言われた敵はこれ以上戦闘しても勝てないと判断し、大急ぎでこの場から走り去っていく。
「「「「「「「「「「やったー!!」」」」」」」」」」
俺たちは今度こそ勝利したのだと確信し、みんなで抱き合ったりハイタッチしたりと大盛り上がりを見せた。
「ありゃ?」
「どうした?グレイ」
グレイさんはナツさんとハイタッチしたあと、辺りを見回し誰かを探している。
「いやぁ・・・ジュビアは?」
「キャンプには戻ってなかったな」
(無事なのか?ゼレフはどうなった?)
グレイさんはやっぱりジュビアさんのこと気になってるんですね。でも自分の気持ちにも気づいてないなんて・・・鈍感は悪ですよ。
「・・・・・」
「・・・・・」
みんなが喜び騒いでいる中、マスターがラクサスさんに視線を向けるとラクサスさんは気まずそうに目を反らす。
「よくぞ・・・戻ってきた・・・」
マスターはラクサスさんに労いの言葉を・・・
「なんて言うと思ったかバカタレめ!!破門中の身でありながら、天狼島に足を踏み入れるとは!!」
かけることはなく怒鳴り散らしていた。
「うっせぇじじいだな」
「マスター落ち着いて」
「顔でかっ!!」
レビィさんはマスターをなだめ、リリーは巨大化したマスターの顔を見てそう言った。その様子を遠くから見ていたフリードさんたち雷神衆は・・・
「ら・・・ラクサス・・・」
ラクサスさんを見て震えていたかと思えば・・・
「帰ってきたのか!!」
「ラクサスー!!」
「お~~~~いおいおい!!」
「ウザ・・・」
ラクサスさんに飛びついた。フリードさんなんか号泣してるし・・・
「相変わらず厳しいなぁ、マスターは。これぞ漢」
「そうね。破門中か」
ミラさんはマスターのさっきの言葉から何かを感じ取っていたようだ。
「さーて試験の続きだ!!」
「今からやるの!?」
今度はナツさんがS級魔導士昇格試験の続きをやりたいといい始めました。どんだけタフなんですか・・・
「二次試験は邪魔されたからな、ノーカウントだ!!この際分かりやすくバトルでやろうぜバトルでよ!!」
ナツさんはシャドーボクシングをしながらそう言う。そんなナツさんにガジルさんが怒鳴る。
「てめぇの頭どうなってんだ!?」
ガジルさんさすがだな。いくらなんでもここから試験なんて無茶すぎる・・・
「そんなボロボロで俺に勝てると思ってんのかぁ?」
そっちかよ!?あなたも戦う方ですか!?
「やめなよガジル!!」
レビィさんが二人を止めようとする。でも、この二人には通じない。
「ああ、余裕だね!!今の俺は雷炎りゅ・・・ぐぱーっ!!」
言い争っているとナツさんがなぜか落ちた!?
「ナツ!?」
「どんな気絶の仕方だよ!!」
「炎以外の魔法を食べた時の副作用だな」
エルザさんが解説してくれる。なるほど、あの雷を食べたから気絶したのか。
「とりあえず、キャンプまで戻りませんか?」
「少しは休まないと体がもたないわ」
「みんなボロボロなんだからさ~」
ウェンディとシャルル、セシリーが皆さんをなだめる。
「それもそうだな」
「帰ろ帰ろ」
「なんかすごい疲れましたね」
俺たちはウェンディの言葉を聞いて簡易ベースへと戻っていく。それにしてもタフな1日だったなぁ。
「え!?ちょっと・・・あたしがナツ運ぶの?」
「大丈夫!!オイラが応援してあげます!!」
「手伝うとか言えないのかしら・・・」
ルーシィさんは気絶したナツさんを運ぶ役を任されて不機嫌そうだ。でも手伝う力も残ってないんだよなぁ・・・ごめんなさい。
「そういうことでしたら、私にお任せくださいルーシィ様」
「カプリコーン!!あ・・・ありがとう」
カプリコーンはルーシィさんを片腕でお姫様抱っこする。
「うわ・・・気のせいかナツがおざなりに・・・」
この戦いのヒーローのはずのナツさんはカプリコーンにまるで荷物のような姿勢で持たれていた。
「こちらのネコ様はルーシィ様のご学友で?」
「あい!!そちらのルーシィ様の先輩に当たります!!」
カプリコーンとハッピーはなぜか仲良く話しをしながら簡易ベースへと戻っていく。
「なんか馴染んでるね」
「二人とも性格は真逆な感じなのにね~!!」
俺とセシリーはそんな会話をしている。カプリコーンは生真面目な性格だし、ハッピーはアホの子なのになんか意気投合してて面白いな(笑)
じー
俺とセシリーが話しているとウェンディがシャルルを抱えたままこちらを見ているのに気づく。
「ウェンディ?」
「シリルの目、さっきまで水色だったのに元に戻ってるね」
そうなのか?自分で目の色は確認できないけど、カミューニさんも目の色は普段は黒だったからなぁ。魔法を使う時に色が変わるのかな?
俺たちは和気あいあいとした雰囲気の中、簡易ベースへと戻っていく。マスターはハデスと何かを話していたようだが、俺たちは別に気にすることもなく帰っていった。
「う~ん・・・」
「あの・・・ウェンディ?」
俺たちはさっき簡易ベースに帰ってきたのだが、ウェンディは俺の顔をじっと見つめている。その理由はと言うと・・・
「ちょっとキズが残っちゃうかな?」
「無理ないよ。貫通しちゃってるんだもん」
ウェンディとレビィさんが俺の額を見てそう言う。さっきウェンディに治癒魔法で治してもらい、塞がることには塞がったのだが、キズが深かったため、少しだけキズが残ってしまいそうだ。
「別に大丈夫だよ。俺気にしないし」
「でも顔だから・・・」
俺は額に包帯を巻き付けながらそう言う。ウェンディは少し心配みたいだけど、そんなに重く捉えることないと思うけどなぁ。
「だったらウェンディ」
「はい?」
そんなウェンディにレビィさんが耳打ちする。何話してるんだ?
「ええ!?」
「ギルドに戻ったら一緒に作ってあげるから」
「は・・・はい・・・////」
ウェンディは顔を赤らめながら何かもじもじしている。どうした?何を話してたんだ?
「ウェンディ、オイラも治癒魔法かけてー」
そう言ってやって来たのはハッピーだった。こいつも頑張ったもんな。
「うん!!いいよ」
ウェンディはそういってハッピーに治癒魔法をかけていく。しばらくすると、
「お~!!もう痛くない!!」
「次・・・レビィさんのケガの手当てをします」
ハッピーも無事に治療完了!!ウェンディは額の汗を拭いながらレビィさんを呼ぶ。
「私は大丈夫!ウェンディも少し休んだら?」
「いいえ・・・天狼樹が元通りになってから、調子がいいんです」
ウェンディはキラキラしながらそう言う。何これ?なんて天使?
「あんたもウェンディを少しは手伝ったら?」
「お!忘れてた!!」
俺も水天竜モードになり、ウェンディと一緒に治療を始める。それにしても、天狼樹が元通りになってからはすごく調子がいいなぁ。それにこの滅竜魔法の魔水晶もあるおかげで水天竜モードを楽に維持できる。
それにしても賑やかだな。ナツさんをリサーナさんがツインテールにして遊んでるわ、雷神衆とラクサスさんとエルフマンさんも妙に楽しそうにしてるし、ルーシィさんもカプリコーンさんにダイエットしなさいとか言われてカナさん苦笑いしてるし、いつのまにか帰ってきたギルダーツさんとラクサスさんが座りながら何か話してるし・・・皆さん本当元気ですね。
「ギルダーツ!!俺と勝負―――」
ガンッ
「ぷぎゃっ!!」
「休ませろっての」
「瞬殺かよ・・・」
目が覚めたナツさんはギルダーツさんに勝負をしかけ、瞬く間に倒された。ギルダーツさんすごすぎ!!
「ウェンディ・・・シリル・・・こっちも頼む・・・」
「頼りになるな」
「漢だ」
「お前は、ちゃんと治してもらっとけよ、リリー」
「俺のことより、お前のダメージの方が深刻だな」
俺とウェンディが治癒をしていると、いつの間にか長い行列になっていた。
「な・・・なんか行列になっちゃったね」
「大丈夫です!!こういう時こそお役に立てるし!!」
「俺もウェンディの補助ぐらいならいくらでもいけるんで!!」
「あんまり無理しちゃダメよ」
「ほどほどにね~」
俺とウェンディが皆さんの治癒をしていると、不意に声をかけられる。
「ウェンディ、シリル、変わろうか」
「「?」」
俺たちが視線を向けると、そこにはエルザさんがいた。なぜかナース服に身を包み。
「え・・・エルザさんその格好・・・ナース?」
「そんな服どこから持ってきたんですか!?」
「さっき換装したのだ」
「なんで鎧と一緒にナース服があるわけ~!?」
「てかあんたに治癒の力ないでしょ!!」
エルザさんに俺たちは次から次へと突っ込みを入れていく。どんだけ突っ込み所があるんだよ!!
「勝負に能力の差は関係ないぞ、試されるのは心だ」
「ふぇ!?勝負ですか?」
「治療がなんで勝負になるんですか?」
「ちょっと!!ウェンディが怯えるじゃない!!」
「始まった・・・」
「エルザさんってやっぱり妖精の尻尾なんだね~」
エルザさんに勝負を吹っ掛けられ、ウェンディは涙目になり、シャルルは怒鳴り、俺とレビィさんは呆れ、セシリーはなぜか大爆笑していた。
エルザさんは近くの木箱に座ると足を組み、ナツさんたちに言う。
「さぁ素直に言ってみろ、痛いところはどこだ?まずは熱を測ってやろうか?それとも、注射がいいか?」
「ったく。何が始まったかと思えば・・・」
「イカれてるぜ」
「うんうん」
グレイさんたちはエルザさんを見てそう言う。でも、行動と言葉が合致してないですよ?
「ちゃっかり割り込むなっての!!」
「ちゃんと並べよてめぇら!!」
「オス共!!」
「なんで~!?」
なんと俺たちの列に並んでいた皆さんは全てエルザさんの方へと並びました。おまけに、さっきまで並んでなかったギルダーツさんやラクサスさんまで向こうに並んでいた・・・なんて人たちだよ・・・
「ほ・・・ほら!少し休めるからよかったじゃない!!」
「やっぱり、お胸の差でしょうか・・・」
「!!」
ウェンディはさっきまでの天使の笑顔から一転、しょんぼりと肩を落としていた。
慰めようとしていたレビィさんもウェンディに胸のことを言われ何も言えなくなっていた。
「包帯を巻くというのは、なかなか難しいものだな」
「「だぁーー!!殺す気かぁ!!」」
エルザさんに並んだグレイさんとガジルさんは包帯でがんじがらめにされていた。何がどうしてああなった?
「グレイ様、お仕置きするより、お仕置きされる方が好きだなんて・・・ジュビアショック」
「ガァジィルゥ!!」
ジュビアさんはグレイさんを見てハンカチを噛みしめ、レビィさんはなぜかガジルさんを見て怒っていた、
「こうなったら!!ウェンディもナース服に着替えて対抗だ!!」
「ちょ!?それはいやー!!」
きっとエルザさんはナース服だからみんな付いていったんだ!!だったらウェンディもナース服に着替えれば対抗できるに決まってる!!
「気のせいか、悪魔の心臓との戦いが、遠い過去のようだな」
「さっきまで僕たちあんなに大変だったのにね~」
「まぁ、いつものことだから」
「それが妖精の尻尾です!!」
俺たちのそんな光景を見て呆れながらもそう締めくくった。マスターとミラさんは何やら話していたけど、俺たちはそんなのお構いなしに大騒ぎしていた。
そのころ、悪魔の心臓では何やら大変なことが起きていたらしいが、俺たちはそれを知ることはなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
ウェンディとレビィの会話は今後のお話でシリルにちょっとしたサプライズを仕掛けるために出しました。次回もよろしくお願いします。
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