戦国異伝
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第二百十五話 母子の和その十四
「数年の後な」
「今の領地に天下の仕組みを整えてから」
「それからですな」
「あらためて天下を一つにする」
「そうしますか」
「急ぐことはない」
決して、という言葉だった。
「むしろ急ぐとじゃ」
「それがかえってよくない」
「そうですな」
「焦ればかえってことをしくじる」
「それ故に」
「遅いのも好かぬが焦っても駄目じゃ」
こう己の家臣達に言うのだった、尾張からの彼等に。
「まずは数年はじゃ」
「政ですな」
「それにかかりますか」
「さしあたっては」
「そうする、おそらく数年の間に島津が大きくなる」
信長は九州のこれからの動きもここで語った。
「龍造寺も大友も強いが」
「あの二家でもですか」
「島津相手には」
「勝てぬ」
これが信長の読みだ。
「次第に抑えどうにもならなくなる」
「では殿」
柴田が信長にここで問うた。
「島津に九州を」
「やらぬ、それでは島津が強くなり過ぎる」
こう考えているからだ、信長も。
「島津が九州を一つにする前にじゃ」
「攻め入り」
「そして、ですか」
「あの地を定める」
こう家臣達に言い切った。
「わかったな」
「島津に全ては渡さない」
「そのことはもう決めておられますか」
「島津が九州の全ては握っては強くなり過ぎる」
それ故の考えだった。
「あの地も全て抑えるとな」
「相当なものですな」
「四百万石を越えておる」
こう佐久間に答える。
「だからな」
「それで、ですか」
「そこまでのものは渡せぬ」
「それ故に」
「うむ、そこまでは渡さぬ」
「ではどれ位にされますか」
「二国じゃ」
佐久間にあっさりと答えたのだった。
「薩摩と大隅だけじゃ」
「島津の本来の領国だけですか」
「あとは精々日向か、しかしじゃ」
「それ以上はですな」
「渡さぬ、とてもな」
「さすれば」
「だから龍造寺と大友が敗れるなら助ける」
このこともだ、信長は既に決めていた。そうしてそのことを主な家臣達に話してだった。信長は家臣達にこうも言った。
「では暫くはじゃ」
「はい、政に専念し」
「天下を定めましょう」
「また数年の間は」
「そうしようぞ」
島津との戦は既に頭の中に入れていた、そしてだった。
信長はまた政に専念するのだった、天下の大半を手中に収めてこそだった。彼は政にさらに力を入れるのだった。
第二百十五話 完
2015・1・30
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