防空壕
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2部分:第二章
第二章
「そうだよ。空から爆弾を落としていたんだ」
「ふうん。何か色々あったんだ」
「あったさ。それで街も何もかもが滅茶苦茶になってね」
「滅茶苦茶!?」
良太はそれを聞いても今一つわからない感じであった。
「地震が起こった時みたいな感じかな」
「そうだな。あれにそっくりか」
源五郎も孫の言葉を聞いてまた頷く。その通りだと言ったような感じであった。
「ああいうふうになって。沢山の人が死んだ」
「沢山の人が」
「あの公園だったな」
源五郎はここで言ってきた。
「そうだな」
「そうだよ」
良太もそれをまた応えて言う。
「あの公園の穴だけれど。知ってるんだ」
「今から行くか」
彼は紅茶を飲み終えたところでまた声をかけてきたのだった。
「その防空壕に」
「わかったよ。それじゃあ行くんだね」
「すぐにな。色々話すこともあるしな」
「じゃあ行こう」
良太もむべもなく源五郎の言葉に頷くのだった。
「何か色々と興味を持ったしね」
「そうか。それはいい」
源五郎は孫の言葉を受けて笑顔を見せてきた。
「では尚更いい。行くか」
「うんっ」
こうして二人は立ち上がりそのまま公園に向かった。二人で公園まで歩きながら話をしていた。
「この辺りも滅茶苦茶になっていたんだ」
「この辺りも」
源五郎は今歩いている道の周りを見回りながら良太に話していた。
「そうさ。アメリカ軍の爆撃でな」
「何かイラクとかのあれみたいなんだね」
「ああ、同じだな」
孫のその言葉に頷いてきた。
「ああした感じで徹底的にやられた」
「戦争だからだね」
「戦争になるのは色々あって仕方がないことさ」
源五郎はそれについては諦めている感じだった。それが言葉にも浮き出ていた。
「人が死ぬのも。当然なんだ」
「死ぬのも」
「良太はそんなことはわからないよな」
「悪いけれどね」
良太は素直に祖父の言葉に頷いてみせた。
「戦争って。テレビで観るだけだから。あとは漫画やゲームかな」
「そうしたものだろうな。それも仕方ないさ」
「仕方ないって」
「実際に経験しないとわからないものなんだ」
それを孫に対して告げてきた。
「戦争は特に」
「特になんだ」
「ひい爺ちゃんが戦争に行っていたのは知ってるよな」
「左手なくなったんだったっけ」
良太の曽祖父であり源五郎の父である亀太郎は戦争で左手をなくしているのだ。良太は彼に会ったことはないがそのことは聞いていたのだ。
「確か」
「そうさ。けれどそれも仕方ないんだ」
「全部仕方ないんだね」
「あの戦争だってな。皆賛成したんだから」
それが彼の考えであった。
「皆。しなければいけない戦争だったんだ」
「あれっ、それって」
だがここで良太はあることに気付いた。
「先生と言っていることが違うよ」
「あのね、良太」
先生のことが出たところで源五郎の顔が微妙な感じになった。それからまた彼に対して言うのであった。
「先生がいつも正しいとは限らないよ」
「そうなんだ」
「特に最近の先生はね」
こうも言い加えてきた。
「酷い人が多いから」
「そうだったんだ」
「戦争が終わってから急に酷くなったんだ」
彼はさらに言う。
「終わってから本当に。先生は酷くなったよ」
「それも言っていることが違うよ」
良太には話がわからなくなってきた。先生の言っていることと自分のお爺ちゃんの言っていることのどちらが正しいのかわからなくなってきたのだ。
「それも」
「こう教えているんだろう?」
源五郎にはもうわかっていた。
「戦争前の先生は暴力的で厳しかったって」
「うん」
その通りだった。言い加えればしかも教育の内容も間違っていた。そう全否定されているのである。彼はそれを知っているのだ。
「けれど。多分今の方がずっと酷いね」
「そうなんだ」
「昔は。幾ら何でも感情的に暴力を振るう先生はいなかったよ」
今の教育ではそうした教師がまま見られる。一番恐ろしいのはそうした教師が最近までは何のお咎めもなしだったことだ。これを腐敗と言わずして何と言うのだろうか。
「ちゃんと教育を受けたしっかりした人が多かったからね」
「ふうん」
「少なくともこれだけは覚えておくんだ」
そう前置きして言い加えてきた。
「先生の言うことがいつも正しいとは限らない」
「それをだね」
「良太もそろそろ自分で考えてもいい頃だし。色々な先生を見ていくといいさ」
「見ていたらわかるんだね」
「そうさ。常識を踏まえてね」
そう良太に語る。
「そうして考えていけばいいよ」
「わかったよ。それじゃあこれからそうして考えていくよ」
「御願いだよ。さて」
ここで公園に着いた。そのアジトのある公園だ。夕方もかなり深くなり夜が近付こうとしていた。公園は橙から紫、そして黒になろうとしていた。
「ここだけれど」
「場所、知ってるんだよね」
「勿論」
そう良太に答えた。
「ここも。変わったな」
「変わったんだ」
「昔は何もなかったんだ」
公園を見ながら言う。今公園は木々が溢れ様々な遊び道具も置かれている。ブランコもあれば砂場もある。まさに子供の遊び場だ。
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