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信長のクリスマスプレゼント

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2部分:第二章


第二章

「その因果で代々あの場所で物乞いをしているのです」
「常盤御前だと申したな」
「左様です」
 主の言葉にまた応える光秀だった。
「それによってです」
「因果な話であるな」
 信長はそれを聞いていぶかしむ顔になった常盤御前のことは彼も知っていた。かの源九郎判官義経の母である。その女性である。
「常盤御前といえば最早遥かな昔の話ではないか」
「その因果が残っているのでございます」
「先祖の罪によってか。また惨い話じゃな」
 信長は聞いたうえで目を閉じた。そのうえで腕を組み深い顔になった。だが今はそれだけだった。彼は次の日に城でキリスト教の宣教師達と会っていた。そのうえで彼等の話を聞いていた。
「ふむ、耶蘇でも左様であるか」
 キリスト教のことである。
「釈迦と同じように主とやらの生まれた日があるのか」
「そうです、イエスの生まれた日」
「皆でそれを祝うのです」
 宣教師達はこのことを信長に話すのであった。青い目に茶の髪の彼等は真剣な顔で彼を見て。そのうえで話をしていくのであった。
「ゼズスを信じる者全てで」
「そしてあれじゃな」
 信長はここでさらに問うた。
「贈り物をするのじゃな」
「いえ、それは」
「また違うのですが」
 しかし宣教師達はそれは否定するのだった。
「ただ主の生まれた日を祝うだけですが」
「何処でその話を聞かれたのでしょうか」
「わしはそう聞いたのじゃがな」
 こう話す信長であった。
「じゃが。別にそうしてもいいのじゃな」
「はい、別にそれは」
「いいと思います」
 こう答えはする宣教師であった。
「特に問題はありません」
「ゼズスへの感謝として」
「ゼズスか」
 実はそうした存在についてはどうでもいい信長であった。しかしクリスマスの贈り物の話は興味を持ちさらに言うのであった。
「贈り物はしていいのじゃな」
 再度それについて問うのだった。
「別にしてもじゃ」
「はい、信長様の望まれるように」
「されるとよいかと思います」
「してその日は」
 日も聞く信長であった。
「何時なのじゃ?それは」
「十二月の二十五日です」
「その日です」
「つまり師走じゃな」
「はい、その月の二十五日であります」
「左様か」
 こう話をする宣教師達だった。信長はこの言葉をよく覚えていた。
 そうしてまた天下人として領地の政事にあたり次の戦にも備えていた。天下人である彼には敵が実に多かった。まだ本願寺がおり武田や上杉もいる。その彼等への備えは常に必要だったのである。
 それで多忙であった。しかしだった。彼はまた都に向かうことになった。冬である。
 冬の雪の日であった。信長はまた主だった家臣達を連れて都に馬を進めていた。その中で林が彼に対して声をかけてきた。
「殿、間も無く近江です」
「そうじゃな」
 彼のその言葉に表情を変えず頷く信長だった。
「近江じゃ。となると」
「となると?」
「山中じゃな」
 その集落のことを思い出したのである。
「あそこに入るのう」
 ここであの物乞いのことも思い出した。
 
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