ダンジョンに復讐を求めるの間違っているだろうか
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怨讐深化
前書き
書けていたんですけど、諸事情によりうpできなかったのですが、晴れてうpできました。
待ってくださった方が居ましたら、申し訳ありません。
誤字脱字が目立つつたない文章しか書けませんが、今後ともご愛読のほどを願いします。
『ギギッ』
脳天に振り下ろされた爪をデイドラは難無く横にかわす。
眼前にいるのは、蟻をそのままデイドラの背丈ほどに大きくして、鈎爪を持たせたようなモンスター『キラーアント』。
その光沢を持つ外骨格は並の冒険者のあらゆる攻撃を弾く程に重装甲で、それに攻めあぐねているうちに致命傷を受けるということは稀ではなく、このことから『初心者殺し』と呼ばれている。
そして、デイドラも攻めあぐねている一人だった。
攻撃は簡単によけることができているが、こちらの斬撃は当たりはしても硬殻に小さな傷を作るだけだった。
だが、キラーアントに弱点がないわけではなく、そこを攻めれば簡単に倒せるのだ――ただ、デイドラはそれを知らないだけなのである。
彼のアドバイザー、ミネロヴァはデイドラが七階層に行くとは思いも寄らず、七階層初出のモンスターの情報は申し訳程度にしか伝えてなかったのだ。
デイドラは七階層に下りるのは初めてだったが、爪と剣を交えて数分もせずにデイドラはキラーアントがどのようなモンスターであるかに気付き、防戦に切り替えたことが幸いしていた。
(今の俺では攻撃が通らない)
劣勢に変わりはなかったが、デイドラは冷静に思考を巡らし逆転の隙を探していた。
(だけど、あそこなら)
キラーアントの弱点は知らなかったが、経験からモンスターが概して弱点である部位を攻撃する隙を探っていた。
『ギッギ!』
その時攻撃が一向に当たらないことに業を煮やしたキラーアントが力任せに爪を繰り出した。
神経を研ぎ澄ましていたデイドラがその隙を見逃すはずもなく、頭上からの爪をキラーアントに肉薄することでよけ、そのままキラーアントの下、二対の足でできたトンネルをスライディングの要領でくぐり抜けると、反転して跳躍した。
すると、キラーアントがタイミングよくデイドラを追って振り返った。
そのキラーアントの顔面を両手の短刀で交差させるように袈裟斬りに斬り払った。
『ギッギィッ!』
その短刀は寸分違わず、キラーアントの両の複眼をえぐった。
目は構造上、どのモンスターも弱点になるのだ。
視界を失ったキラーアントは傷口から紫色の体液を撒き散らしながら、見えていないというのにも拘わらず、首を巡らせている。
デイドラがこの好機を逃すほど甘いはずもなく、追撃を見舞った。
爪を根本、つまり関節から切り落としたのだ。
(関節も脆いな)
ついに武器さえも失いよろけるようにして後退するキラーアントを見て確信する。
(殺れる)
そう思い、とどめを刺そうと足を踏み出した時だった。
『ギチギチギチギチギチギチギチ』
キラーアントが鳴いた。
デイドラはキラーアントの初めての行動に、思わず足を止める。
(何も起きない?)
だが、しばらくしても何も起きず、デイドラは内心で首を傾げるも、目の前のキラーアントは体液を滴らせながら不気味にじっとしていることが、デイドラの心に形を成さない恐怖を生じさせ、足を拘束していた。
(いや、何かが起きている)
そんな時、デイドラの第六感が何かを捉えた。
何の根拠もなかったが、自分を囲むように何かがこの場所に集まって来ているように感じた。
デイドラはその感覚に従い通路に目を向けた。
「なっ………………」
そして、デイドラは絶句した。
彼の目に映ったのは、キラーアント。
四方の壁にあるそれぞれの入口から二体、すなわち合計で八体のキラーアントが現れたのだ。
その光景にデイドラは戦慄を禁じ得なかった。
『どうした、デイドラ?まさか恐れをなしたわけではないだろうな』
そのデイドラは、計ったように、聞き覚えのある声を聞いた。
(お、恐れてなどいない!)
恐怖に屈してしまいそうなっていた心を奮い立たせるように言った。
『ならば戦え。お前の目の前にいるのはただの復讐対象であろう?』
(そうだ。ただの復讐対象だ)
頭の中に響く声に、そして自分に言い聞かせるように答えた。
『死に対する恐怖は邪魔なだけだ。平穏にも恐怖にも別れを告げろ。モンスターを殺戮する人形となれ。さすれば、貴様は絶対的な力を得られよう』
(絶対的な力…………)
『さあ、周りを見ろ。あれらは何だ?』
(復讐対象)
『そうだ。殺戮せよ。そして、生き残って復讐を遂げるのだ』
と、言い残し頭の中の声の主は靄に沈んで気配を霧散させた。
それを確認して、デイドラは前方のキラーアントに色のない瞳を向ける。
短刀を握る手に力を込め、一歩踏み出す。
(殲滅するのみ)
◆
ノエルの前を忠実なる下僕となった冒険者三人が走っている。
場所は七階層。
通路には一定間隔でモンスターの死骸が打ち捨てられていた。
下僕三人によると、死骸は標のように続いていたが、途中でバックパックがいっぱいになり、引き換えしたそうで、ノエルはその場所まで案内するよう命令を下したのだ。
そして、その場所に死骸を見付け、標を追って七階層に降り立ってたのだ。
(早く見付けなければ)
ノエルはこのことでより一層に焦躁に駆られていた。
デイドラは七階層まで下りたことがなく、それだけでも危険であるにも拘わらず、七階層は『初心者殺し』が出現する階層であるのだ。
このことにノエルは気が気ではなかった。
――そのため、ノエルはリズが人知れず、足を止めて、何かに引き寄せられるように四人とは別の方向に走り出していたことに気付いてなかった。
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