戦国異伝
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第二百十五話 母子の和その八
「東国、みちのくもな」
「関東だけでなくですか」
「奥羽もですか」
「織田家がその政を磐石のものとする」
「江戸城を築き」
「そうなる、天下は定まる」
東国におけるそれもというのだ。
「この国はな」
「そして、ですか」
「そこから先はですか」
「天下は泰平となる」
「そうなりますか」
「わしはここまでは考えておらなかった」
その江戸城を見ての言葉だ、見れば天守台も築かれている。
「到底な」
「検知や刀狩りも」
「そして諸法度もですか」
「そうしたことは」
「全くじゃ」
そうだったというのだ。
「上様はそのわしのさらにな」
「上をですか」
「行っておられましたか」
「既に」
「そうだったのですか」
「うむ、わしはやはりな」
到底、というのだ。
「天下を手に入れても収められる器ではなかった、一国が精々じゃ」
「それではですか」
「以後はですか」
「領国の政にですか」
「力を注がれますか」
「そのつもりじゃ、わしはもう天下は望まぬ」
達観した顔であった、実に。
「一大名として生きよう」
「では我等も」
「その殿と共に」
片倉と成実はここで政宗についた。
「政に力を注ぎます」
「そうさせて頂きます」
「頼むぞ、そしてじゃ」
「そして?」
「そしてとは」
「長い因縁も終わらせるか」
政宗はここで西の方を見た、その遠くを見てだ。
そしてだ、こう言ったのだった。
「わしのな」
「と、いいますと」
「やはり」
「因縁なぞ終わらせるに限る」
自分自身への言葉だった、かなりの部分。
「そんなものはな」
「では」
「殿もですか」
「この安土で」
「完全に」
「そうする」
一言で返した言葉だった。
「わしもな」
「左様ですか」
「その様にされますか」
「うむ、母上とのことも小次郎とのことも」
政宗もわかっていた、完全に。それが言葉に出ていた。
「そしてな」
「さらにですな」
「そのうえで、ですか」
「後は因縁をなくしたうえで」
「そうして生きられますか」
「そうする」
この決意も述べるのだった。
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