真田十勇士
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巻ノ四 海野六郎その三
「この様に」
「そうなのじゃな」
「そして岐阜は」
「これ以上にじゃな」
「賑わっておりまする」
店も多く人が多く行き交う中を見回しつつの言葉だ。
「左様です」
「そうなのじゃな。行くのが楽しみじゃ」
「さて、殿」
由利は町中の立札に気付いた、その札に書かれている文字を見てそのうえで言った。そしtけおう言ったのだった。
「ここでは相撲をしています」
「相撲か」
「はい、何でも優勝すれば褒美が貰えるとか」
「どういった褒美じゃ」
「何でも餅とか」
「餅か、それはよいのう」
餅と聞いてだ、幸村は笑って言った。
「あれは実に美味い。しかもな」
「しかもですか」
「長持ちする、よい食いものじゃ」
「では出て宜しいでしょうか、それがしが」
「いや、わしも出たい」
「わしもじゃ」
穴山と海野も出て来た。
「相撲には自信がある」
「言ったが相撲も強いぞ」
「餅はわしが手に入れる」
「いやいや、わしがじゃ」
「殿、宜しいでしょうか」
三人であらためてだ、幸村に申し出た。
「我等が出て」
「優勝して餅を手に入れて宜しいでしょうか」
「我等が」
「いや、御主達だけではなく」
話を聞いてだ、幸村は三人に言った。
「拙者も出たい」
「殿もですか」
「出られますか」
「相撲の大会に」
「相撲はよい鍛錬になる、それに拙者も好きだ」
だから出るというのだ。
「相撲、そして餅がな」
「そうされますか」
「殿も」
「では四人全員で」
「出ようぞ、そして相撲を楽しみ餅を楽しもうぞ」
こう話してだ、そのうえで。
四人でだ、相撲の大会が行われているというその場に向かった。すると。
多くの大柄な者達がいた、海野はその者達を見て笑って言った。
「おお、これはな」
「どうということはないな」
「大した者はおらんな」
穴山と由利も出て来る者達を見て言う。
「これではな」
「優勝はわしのものじゃ」
「いやいや、わしじゃ」
「わしが優勝じゃ」
二人は早速競り合う、しかし海野が二人に言うのだった。
「案ずるな、優勝はわしじゃ」
「何を言う、わしと言っておろう」
「わしに決まっておる」
「ははは、元気がよい。しかしな」
幸村も幸村で三人に言う。
「拙者もおるからな」
「殿、こうした時はです」
「遠慮は無用です」
「我等も全力でいかせてもらいます」
「当然じゃ、勝負は手を抜いてはならぬ」
幸村は笑顔のまま三人に応えた。
「一切な、だからな」
「それで、ですな」
「全力でぶつかり合って」
「優勝をですな」
「掴むぞ、ではな」
こうしたことを話してだ、そのうえで。
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