ジェヴォダン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六章
「嘘は言えない」
「吸血鬼の実在が確信されている」
「そう、それにだよ」
「それに?」
「私はオカルトは専門外だけれどね」
この前置きからだ、河原崎は話した。
「こうしたことも調べたけれど」
「吸血鬼の実在は」
「私は否定していない」
「そして狼男も」
「狼男、ワーウルフは吸血鬼の眷属だからね」
このこともだ、河原崎は話した。
「吸血鬼がいるのなら」
「狼男も」
「いるとね」
「そうですか、それなら」
「野獣の正体はワーウルフであるかも知れないよ」
河原崎は真剣そのものの顔で豊に言った。
「本当にね」
「まさかと思いますけれど」
「狼男になりきっている人かも知れないしね」
「狼男にですか」
「憧れてあまりにもね」
それで、というのだ。
「そうした人もいるね」
「世の中にはですね」
「そうだよ、そうした人も世の中にはいるから」
野獣もというのだ。
「なりきってね」
「殺人を犯していった人間という可能性もありますか」
「世の中あらゆる可能性がある」
河原崎はこのことも真剣な顔で述べた。
「野獣の正体についてもね」
「そうなんですね」
「残念なことは。野獣は倒されたけれど」
多くの犠牲者を生み出したがだ、遂に射殺されたのだ。
だが、だ。その野獣の屍はだ。
「屍は色々な手違いもあって検証されなかったからね」
「だからその正体はですね」
「永遠の謎だよ」
そうなってしまったというのだ。
「だから私達も今こうして話しているんだよ」
「残念なことですね」
「残念なのかいいことなのか?」
「いいこと?」
「うん、こうして今もね」
それこそというのだ。
「話せるんだよ」
「そうした意味でいいんですね」
「そうも思うね。とにかくね」
「はい、野獣はですね」
「狼男である可能性もあるよ」
確かにというのだ。
「世の中はね」
「あるんですね」
「うん、私はそう思うよ」
微笑んでだ、河原崎は豊に言った。
そしてだ、彼にこうも言った。
「さて、もうお昼だけれど」
「あっ、もうですか」
「これからどうするかな」
「勿論食べに行きます」
昼食をというのだ。
「これから」
「そうか、私もだよ」
「教授は何を召し上がられますか?」
「今日はお蕎麦かな」
それだとだ、河原崎は微笑んで答えた。
「そうしたl気分だよ」
「そうですか、僕はうどんですね」
豊はこちらだった。
「学校の食堂の」
「では一緒に行くか」
「いいですか?」
「食堂にね」
大学のそこにというのだ。
「行ってそして一緒に食べようか」
「そうですね、これも縁ですし」
「それならね」
河原崎は野獣についての話の後は食餌の話をした、そしてだった。
二人で実際にそれぞれ蕎麦とうどんを食べた。その時は野獣ではなく麺類の話をした。
ジェヴォダン 完
2015・2・20
ページ上へ戻る