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コントロールタワー

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第一章

                       コントロールタワー
 フランソワ=ダヴーは小学、中学とサッカーをしていていつもミッドフィルダーをしていた。抜群の運動神経に加えて。
 試合の状況を常によく見て動いていた、サッカーの知識も完璧で戦術眼もありだ。試合になると相手チームのこともよく研究していた。
 そのうえでチームメイト達に色々指示も出していた、彼はそうしたプレイスタイルだった。
 そしてだ、その彼がだ。
 高校に入り当然の様にサッカー部に入った。だが。
 その彼にだ、部活のコーチであるフィリップ=ヴォワザンはこう言った。
「君はキーパーだ」
「えっ、キーパーですか!?」 
 フランソワはそのグレーの目を思わず瞬かせて問い返した。
「僕がキーパーですか」
「そうだ、残念だが今年入った一年生はキーパーがいない」
 ヴォワザンは驚く彼に言った、そのブラウンの強い光を放つ目でだ。ヴォワザンの逞しい大柄な身体はサッカー選手というよりはラグビー選手だ、顔立ちは四角く岩の様であり髪は短く刈っている。その彼に対してフランソワは髪はショートにしたブロンドで涼しげな細面だ。体格はすらりとしていて脚も長い。彼はサッカー選手に相応しい外見だ。それもミッドフィルダーを思わせる。
 しかしその彼にだ、ヴォワザンは言うのだ。
「だからだ、君にしてもらう」
「あの、ですが」
「聞いている、君は今まではな」
「今までは、ですか」
「ミッドフィルダーだった」
 また言うのだった。
「これからは違う」
「僕がキーパーですか」
「嫌か?」
「いえ、そう聞かれますと」
 フランソワはヴォワザンにすぐに答えた。
「サッカー自体が好きです」
「ではキーパーもだな」
「させてもらいます、ただ」
「キーパーのなり手がいなくてもだな」
「僕がキーパーでいいんですか」
「むしろ君でないとだ」
 ヴォワザンはフランソワにこうも言った。
「駄目なのだ」
「そうですか」
「だからだ、いいな」
「僕がキーパーで務まるか」
「勿論守りの資質は見させてもらう」
 それはというのだ。
「それもな、だがな」
「今の時点ではですね」
「キーパーは君だ」
「わかりました、それじゃあ」
「そういうことでな」
 フランソワは納得はした、だがやはり釈然としないものがあった。自分が何故キーパーにになったのかを。
 しかしだ、その中でもだった。部活は行われ。
 彼もまた全力を尽くしていた、ポジションには違和感を感じていても彼はサッカーが好きだった。
 だからキーパーとしてもサッカーをした、その時にだ。
 キーパーのポジションからグラウンドを見て考えてだった、仲間達にも言った。
「ルイ、君はね」
「もっとかい?」
「前に出ていいよ」
 攻めるべきだとだ、フォワードの彼に言う。
 そしてだ、もう一人のフォワードであるビクトルにも言った。
「君はもっと慎重にね」
「攻撃をするべきか」
「君のシュートは強い」
 それは確かだと言うのだ。
「だがそれでも」
「慎重に、か」
「迂闊に大きなシュートを狙わずに」
 そのうえでというのだ。
「的確に、ここぞという時にだけ」
「シュートを打つべきだね」
「そうするといいよ」
 こうフォワード陣に言っただ、そしてだった。
 ミッドフィルダー陣にはだ、こう言うのだった。
「君達もね」
「攻めるべきかい?」
「僕達も」
「うん、もっと攻めていいんだ」
「ミッドフィルダーでもかい?」
「フォワードみたいに攻めていいのかい」
「うん、君達はどちらかというと守りが強いけれど」
 それでもというのだ。 
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