ケツアルカトル
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第四章
その信仰はだ、次第にだった。
「へえ、ケツアルカトルか」
「あの神様への信仰もはじまったんだな」
「この場合は復活か?」
「けれど面白いな」
「ああ、そうだな」
人々も興味を持つのだった。
「それじゃあな」
「私達も信仰してみましょう、ケツアルカトル」
「そうだな」
「それじゃあな」
こうしてだった、ケツアルカトルへの信仰は復活した。そして遂にだった。
ある年が来た、その年は。
一の葦の年だった、あのマヤの暦での。
その年にだ、神殿に。
彼は帰って来た、そして従っていた彼の従者に言った。
「長かったな」
「はい、この時まで」
「すぐに帰っては来れないと思っていた」
神殿の中には誰もいない、真夜中で静まり返り実に静かだ。
だがその中にだ、彼は帰って来てだった。白い肌の従者に言ったのである。
「しかし思っていたよりもな」
「長かったですね」
「私への記憶は消え去り」
「キリスト教が流行り」
「その中に完全に埋もれてしまっていた」
「そうでしたね、ですが」
「ようやく私のことが思い出され」
ゲームや小説や漫画、そうした媒体でだ。
「そしてだ」
「信仰もそこから」
「蘇りな」
「そして、でしたね」
「こうして戻って来られた」
「一の葦の年になり」
「そうだった、だが」
ここでだ、こうも言った彼だった。
「彼等は私が戻ったことに気付くだろうか」
「姿を見せていないからですね」
「かつては見せていた、だが」
「神のあり方が変わっていますね」
「姿はあろうともだ」
それでもというのだ。
「人に見せることはしなくなった」
「どの神もですね」
「だから私もだ」
「姿を見せないですね」
「それでも彼等は気付いているだろうか」
「心の表では気付いていなくとも」
それでもとだ、従者は彼に話した。
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