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エターナルトラベラー

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第五十二話

約束の三週間が過ぎ、いくらかした頃、ゴレイヌから交信(コンタクト)が入る。

ゴン達のゲンスルー組への対策ができたし、期限の3週間も過ぎた、もしも万が一そっちに向かったらアカンパニーを使用してゴンの元へと行ってもらいたいそうだ。

そんな話を聞いていた時に遠くから何かが近づいてくる気配がする。


ギュイーーーンと音を立てて何者かがこちらへと飛んできた。

「皆っ!」

俺が声を掛ける前にそれぞれ異変に気が付いて身構えている。

バシュっと着地した瞬間に俺達はその相手から全力で距離を取る。

現れたのは大人の男が四名。

片膝を着いて、着地の姿勢で現れた男たちの内一人は体に大小さまざまな傷を負い、その首根っこを加害者であろう男に握られる形で地面に縫い付けられている。

「なんだ、何処の誰かと思ったら、ツェズゲラと一緒にいたガキ達じゃないか」

現れたのはゲンスルー組の3人、それとおそらく強制的にアカンパニーを使用させられたプレイヤーが1人だ。

抑えられているプレイヤーはおそらくどこかで偶々俺たちとすれ違ったプレイヤーだろう。

ゆっくりと立ち上がりながらこちらに視線を向けるゲンスルー、しかしその手に掴んだ男性を放してはいないので、男性は引きずられて立ち上がった。

「…もういいだろうっ!ちゃんとあんたらの指示に従ったんだっ!」

「まあ、もうちょっと待て」

「ぐあっ」

引っつかんでいる首もとの手に力を入れたのか、押し黙った。

俺はバインダーを出して同行(アカンパニー)のスペルカードを取り出して使用しようとしたところゲンスルーがそのままの体勢でこちらに話しかけてきた。

「まあまて。お前たちには関係ないかも知れないが、お前たちが逃げようとすればこの男を殺す」

「………」

うん、マジ関係ないね。ただ、目の前で人が死ぬのはいい気がしないけれど。

「そこで、俺たちとトレードしないか?」

「トレード?」

訪いかけてきたゲンスルーに俺が代表して対応する。

「俺たちが独占している『大天使の息吹』と、あんたらが持っている『一坪の海岸線』と『モンスターハンター』と『奇運アレキサンドライト』の3枚だ。フェアな取引だろ?ついでにこの男の命も助かる」

フェアか?

単純に1:3でつり合ってないけどね。

しかもSSランク2枚とAランク一枚は法外だろう。

しかし、どうしようか。ツェズゲラとの取引での期限は3週間は過ぎている。

こちらに来たのはツェズゲラの読み間違いだし、取引に応じても良いんだけど…

「どうする?早くしないとこの男を殺すぞ?」

「アオ…」
「お兄ちゃん…」
「………」

非道に慣れていないフェイトとなのはが心配そうな声を出す。

二人とも頭では人を人が殺す事がある事を理解しているが、心の奥では理解したくないのだろう。

「『ブループラネット』は持っているか?」

「………ある」

「『ブループラネット』を付けてくれるならトレードを受けよう。ただしこちらはオリジナルカードは渡せない。聖騎士の首飾りでオリジナルと確認後、目の前で複製(クローン)を使う、そちらもその条件で構わないか?」

出来れば『闇の翡翠』も欲しかったけれど、高圧的なPKプレイヤーにしてみればかなりの譲歩だし、ごねると未だその手に首根っこを掴まれている男性が殺されてしまいそうだ。

「良いだろう」

万全を期し、交換の際、ソラを同伴させて聖騎士の首飾りでフェイクじゃないかを確かめる。

どうやら本物のようだ。

複製(クローン)で増やそうと向こうもしたのだが、まずオリジナルカードを聖騎士の首飾りを装備してもらって確認し、目の前で増やさないのならばトレードしないと伝えるとしぶしぶオリジナルカードを取り出したした。

あいつら最初から交換なんてする気は無かったのか。

しかし、予めソラのバインダーに保管してある『一坪の海岸線』はフェイクと交換してある。

ソラのバインダーから俺が取り出した『一坪の海岸線』

これだけはフェイクかどうか確認できるものではない。

オリジナルのカードはツェズゲラが持っているだろうと思っているだろうし、彼らも迂闊に『一坪の海岸線』のカードを聖騎士の首飾りで確かめる事は出来ない。

高圧的な交渉には乗ってやるものか。

「その男はもう関係ないだろう。放してやってよ」

「いや、まだだ。カードのトレードが先だ」

ちぃっ

内心で悪態を吐きつつ、トレードをする。

トレードが終わるとようやく人質風の男を解放すると言う段取りになって行き成りゲンスルー組が豹変した。

「もういいだろ!?放してくれよ!?」

恐慌状態の男が叫ぶ。

「ああ、悪い悪い。今放すが、あんまり動くとホラ」

ボフンっ

何かが爆発するような音がしたかと思うと、辺りに血しぶきが飛んだ。

「手元が狂うかもしれないだろう?ってもう聞いてねぇか」

間の前で繰り広げられた惨劇になのはとフェイトの表情が強張るのが見える。

「あはははははははは、最初から約束なんて守るわけねーー。次はガキどもお前達の番だ」

行き成り表情が残忍な物に変わる。

「今ので俺達は99種コンプのはずだ。だが、ナンバー00のイベントが起こらない。という事はお前たちがつかませた一坪の海岸線はフェイクだったと言う事だ」

ナンバー00は99種コンプでイベントが起こると言うのがプレイヤー内で定説になっているし、実際その通りなのだが…

くそっ

俺のせいか…相手を無力化するのも、人質風の男を助けるのも、相手と見合った瞬間にいくらでも方法はあったのに!

ゲンスルー達のオーラが膨れ上がる。

どうやら此方を本気で殺しに来るようだ。

いや、殺しは出来ないが、再起不能なまでに痛めつけるつもりだろう。

その姿勢はいつでも踏み出せるような姿勢のまま既に俺とソラから20メートルの範囲に入っている。

俺たちが同行(アカンパニー)のスペルカードでこの場を離脱するにはゲンスルー達を巻き込んでしまうし、そもそもスペルカード範囲外のなのはとフェイトを連れて同行(アカンパニー)で逃げようとスペルカードを出した瞬間に奴らはこちらへと踏み出してきて俺たちを攻撃するつもりなのだろう。

「ソル」

『スタンバイレディ・セットアップ』

一瞬光に包まれると、服装が変化して甲冑が出現する。

変身バンクなんて物が有るわけも無く、ほぼ一瞬で甲冑が出現する。

「ほう、具現化系か」

相手の勘違いは正さない方が戦いでは有利に運ぶ事が多い。

俺の対応を見て、ソラ達もそれぞれスタンバイして臨戦態勢に入る。

「…類似能力者か…珍しいな」

基本的に念能力は一人一人異なる形態を取ることが多いのは確かだ。

「サブは隣の女を、バラは後ろの二人だ」

なるほど、俺の相手がアンタか、ゲンスルー。

こちらを口角を上げ、いかにも圧倒的強者の態度で見抜く。

戦闘経験、それも対人戦の経験から来る余裕だろうか。

念能力者の実力は年齢と比例しない事が多いが、それでも生きてきた時間の長さは変えられない。

強さと経験は比例する。

おそらく彼らはそれなりに場数をこなしてきたのだろうよ。

相手の余裕そうな表情は自分は圧倒的な強者であると思っているもののそれだ。

自分は狩る者だと認識しているそれだ。

しかし!今日狩られるのはあんた達だ。

別に俺たちはさっき殺された男に面識なんて無かったし、敵討ちをする義理もない。

けれど!助けられたかもしれない…

それを自分の選択が殺してしまった。

ああ、認めるよ。何処かに殺されても所詮は俺とは関係ないって思っていたことは!

だから拘束されたままのトレードも拒否しなかったし別段助けようともしなかった。

けれど結構ショックなものだな。

関係ない人間でも目の前で殺されると言うのは。

だからこれはただの八つ当たりだ!

「ソラ…なのはとフェイトを頼む」

「アオ!」

「一人でやらせてくれ…」

「………分った」

ソラは構えたルナの剣先を下ろす。

「てめぇが一人で俺達の相手をするだと…」

くいっとゲンスルーは掛けていた眼鏡を掛けなおした。

「…なめられた物だな」

ゴゴゴゴゴっ

ゲンスルーの声のトーンが一変すると一気に殺気が表面に現れた。

半身に開いた体から右足で大地を蹴り、凄い勢いで此方へと距離を詰めるゲンスルー。

インファイターか。

ゲンスルーが動くと同時に後ろのバラとサブもそれぞれの標的へと走り寄るが、

「なのは!フェイト!飛びなさい!」

「うん!」
「は、はい!」

ソラの掛け声で3人は一斉に空へと逃げる。

「飛んだ!?」

念能力で飛行能力を会得している人なんて殆ど居ないのだろう。

彼らの衝撃はその表情を見れば明らかだし、空を見上げ、警戒態勢のまま立ち止まったのを見ると空中への攻撃手段が無い事も意味している。

俺は目の前に迫り来るゲンスルーの右掌手を避ける。

拳ではなく掌手…いや、掌手と言うより何かを掴もうとするような構えだった。

ゴン達から聞いたが、ゲンスルーの能力の一つは掴んだ物を爆破する能力だったか。

攻撃をさけ、カウンター気味に拳を突き出す。

ゴウっ!

ゲンスルーの胴に綺麗に決まり吹っ飛んでいく。

「ゲンスルー!?」

ズザザーっ

地面を転がりながらスライドし、15メートルほど転がった所でようやく止まった。

「大丈夫か!?」

ゲンスルーを助け起こすべくバラとサブが駆け寄る。

御神流『(とおし)』を使用して表面でなく裏側に威力を通したパンチだ。

その威力は俺もオーラを纏っていることによってオーラの壁すら貫通する。

「ガハッ…ゲホゴホッ」

ゲンスルーの口からおびただしい量の血が吐き出される。

弱者をためらい無く殺す割には仲間意識は高いようだ。心配そうに助け起こすのが見える。

だが悪いけれどその隙を見逃すほど今の俺は優しくない。

腰に掛けてあるソルの柄に手を掛け、地面を蹴ってゲンスルー達へと迫る。

御神流 虎切

一刀にて間合いを詰めつつ抜刀による一撃。

本来は抜刀術である虎切。しかし、刀身では真っ二つに切り裂いてしまうので今回は鞘を付けたまま振りぬいた。

「バラ!サブ!」

いち早く俺の攻撃に気が付いたゲンスルーはその体を支えてもらっていたバラとサブを両側へと突き飛ばした。

しかし、ためらい無く振りぬいたその抜刀速度は申し分なく、『徹』も使用したその一撃は体の内部を破壊する。

「ガハッ」

さらに吹き飛ばされるゲンスルーに駆け寄って開いている左手を上空へと振りぬきゲンスルーは空中へと躍り出る。

それを追う様に俺も大地を蹴って飛び上がり、そのまま体を捻って蹴りでさらに上空へと蹴り上げる。

3発目の蹴りの後、ソルが操った空気の塊を踏み台にゲンスルーよりも上へと飛び上がり、回転を加えた回し蹴りで地面目掛けて叩き落す。

蹴り落とした先には先ほどゲンスルーが身を挺して庇ったバラが居る。

空中落下するゲンスルーをバラは自分の身をクッション代わりにして受け止めた。

………っ

受け止めるのか!他者を簡単に殺すような奴らがっ!


空中で身を翻し、ゲンスルー、バラ、サブから少し距離を取った所に着地する。

着地すると同時に再び地面を蹴って、今度はサブに向かう。

小太刀二刀御神流裏 奥技之参 射抜(いぬき)

奥技の中でも最長の射程と速度を誇る突き技。

本来ならば二刀だが、今回は右手に持った鞘に入れたままのソルの刀身一本で使用する。

サブが咄嗟に両手を挙げて、ガードする体勢に持っていこうとするが…遅い!

相手のガードは見切った!

御神流『(ぬき)』を使用し防御を突き抜ける高速の突き。

『硬』を使わなかったのはせめてもの情けだ。

さらに放ったソルの刀身を引き戻し、左手の拳で追い討ちを掛ける。

吹き飛ばされていくサブ。その体は丁度ゲンスルーとバラが居る所まで吹っ飛んで行き、二人を巻き込んで地面を転がる。

「ブック!」

俺が一箇所にまとまった奴らに追撃しようと迫る中、バラの声が響き、バインダーがバラの前に現れた。

カード!?

移動系スペルか!

同行(アカンパニー)の使用半径は20メートル。

その内側に居れば転移に巻き込まれる事が可能だ。

俺は勢い良く距離を詰めるべく掛ける。

しかし、瀕死の重傷を負いながらもゲンスルーはあたりに転がっていた掌よりも大き目の岩を片手で持ち上げている。

ドゴンッ

ザザーーーッ

爆風と立ち込めた砂煙で瞬間的に視界がさえぎられる。

手に持っていた岩が爆発した?

いや、それよりも、至近距離での高威力の爆発は自身へとダメージもでかかった筈だ。

そこまでして俺の視界を遮ったという事は…

直ぐに『円』を広げて視界に頼らずに敵の気配を探る。

直進よりも右斜め前方に25メートルほどの所に気配が3つ有る。

自爆覚悟で俺の視界を遮り、距離を稼いだと言う事は…

「アカンパニー・オン、アイアイ」

砂煙が晴れない中そんな声が聞こえた。

「ソル!」

『ワイドエリアプロテクション』

展開されたプロテクションは俺を中心に半径50メートルの距離で展開された。

本来ならばここまで大きくは展開しないし、余り意味は無い。しかし、今回は別だ。

外敵から守るためのバリアじゃなくて、敵を逃がさないための檻だ。

ゲンスルー達がアカンパニーで飛んでいくよりも速く展開された防御魔法。

突然現れた壁に彼らはなす術も無く凄い勢いでぶつかり、落下した。

「ガハっ…」
「ぐぅ…」
「ぐあっ」

彼らが幸運だったのはアカンパニーが継続しなかった事だろうか。

継続していたら何度もぶつかるか、それともミンチになるまで押しつぶされたか。

彼らが俺が張ったバリアにぶつかったのが高さおよそ35メートル地点。

重症のゲンスルーとサブは果たしてその落下に耐えられるだろうか?

空中でバラがゲンスルーとサブを両脇に抱えるのが見える。

「おおおおおおおおっ!」

そのまま彼は雄たけびを上げ、オーラを両腕と下半身に振り分けて地面に着地した。

さらにバラは新しいカードを手にしている。

俺はカードを使わせまいと地面を駆ける。

「ゲイン」

現れたのは荘厳なる天使。

大天使の息吹を使ったか。

「わらわに何を望む?」

大天使がバラに質問している。

「ゲンスルーの…」

しかし、その望みが叶う事は無かった。

なぜなら俺が大天使を右手に持ったソルで真っ二つに切り裂いたからだ。

切り裂かれその存在を消失させた大天使。

今日始めて抜いたソルの刀身。

ソルの刀身を翻してバラに向き直る。

「ま、待てっ!俺達の負けだ、だからっ!」

「殺さないでくれ、か?」

「あ、ああ。俺たちを見逃してくれたら持っているカードを全部くれてやってもいい」

俺ではなく、俺たちなんだ。

「そう言った人たちをお前らは見逃してきたのか?」

「っ……」

見逃しているはずがないよなぁ?

俺は振り上げた拳を思い切り鳩尾へと振りぬいた。

「ガハッ」

倒れ落ちるバラ。

瀕死だが三人とも死んではいないようだ。

俺がバリアジャケットを解除すると、ソラ達が空中から降りてきた。

「終わったの?」

ソラが俺の側まで寄ってきて問いかけた。

「ああ」

「殺しちゃったの?」

フェイトが少し青ざめた表情で聞いた。

「いや、殺してないよ」

「…なんで?」

「……何でだろうな?」

互いを庇い合っている姿を見てしまったからだろうか?

自分よりも弱者はあんなに簡単に虐げているのに、自分の仲間は最後まで売ろうとはしなかった。

「どうするの?この人たち」

なのはもそう言って会話に混ざった。

「うーん…どうしようか?」

「あのゴリラの人に引き取ってもらうってのは?彼らの予定ではゴン達が何とかするみたいだったんだし、その後の事も考えてたんじゃない?このまま放置していてもいい事は無いだろうし」

ソラがそう提案した。

「ゴリラって…確か彼の名前はゴレイヌだったと思うんだけど」

まあ、ゴリラでもいいか。

ゲンスルー達をバインドで拘束してから交信(コンタクト)のスペルカードを取り出してゴレイヌさんにつなげると、磁力(マグネットフォース)ですぐに飛んできた。

「うおっ!お前たち本当にゲンスルー組とやりあったのかよ」

気絶して転がっているゲンスルー達を確認して声を上げたゴレイヌ。

「まあね」

「ゲンスルー達はボロボロなのにお前らは無傷なのな」

外傷らしい外傷を負っていない俺たちを見て驚愕したようだ。

「あはは…」

「まあいい。それよりこいつらだ」

そう言ってゴレイヌはゲンスルーに向き直る。

「どうするんですか?」

「まあ、さっさとリーブで強制的にゲーム外へと出してしまった方がいいだろ。外で待ってるツェズゲラに連絡を取れば一応一つ星のハンターだ、その後の事は任せてもいいはずだ」

まあ、しばらくは動く事も適わないほど痛めつけてあるから大丈夫って言えば大丈夫だろうけど…

念能力の封印までは俺には出来ないから逃げられても知らないよ。

一度ゴレイヌはゴン達の所まで飛ぶと消えては困る必要アイテムを預け、もう一度戻ってきた。

その後リーブで瀕死の3人をゲーム外に飛ばし、時間をおかずに自分もゲーム外へとリーブのカードで飛んだ。

ボワンっ

ゲンスルー組はゲームから出ると取得していた『闇の翡翠』がカード化する。

「お兄ちゃん」

「もしかしてこれで」

なのはとフェイトが俺の手に収まった闇の翡翠のカードを見て声を上げる。

「99枚目だね!」

「ソラ」

ソラに『闇の翡翠』を手渡すと、こくりと頷いてソラは自分のバインダーにカードを納める。

すると、ゲーム参加者全員に一斉にアナウンスが流れる。

【プレイヤーの方々にお知らせです】

流れたアナウンスの内容は、10分後に全プレイヤーを対象にクイズを出し、正解率がトップの人にナンバー000『支配者の祝福』が贈呈されるとの事。

99枚、苦労して集めても必ずしも『支配者の祝福』は貰えない。

…とは言え、クイズの内容は指定カードに関する問題なので、自力獲得していないと答えるのは難しいのだけれど。

100問目が終わり、正解数トップ者が発表される。

【最高得点は、100点満点中95点。プレイヤー名アイオリアさんです】

よし!

上空から一匹のフクロウが現れ、カードを一枚投げ渡して去っていった。

カード名『支配者からの招待』

ゲインで実体化させると実体化した手紙の中から地図とバッジが一組出てくる。

このバッジを身につけているもののみリーメイロにある城へと入場することが出来る。

「じゃ、行こうか」

「うん。アカンパニー・オン、リーメイロ」

俺が声を掛けるとソラがバインダーからアカンパニーのカードを使用して俺たちは一路、城下町リーメイロへ。

城へと入る前に面倒だが、ソラから99種類の指定カードを俺のバインダーへと移し変えた。

城下町でソラ達と別れ、俺は一人グリード・アイランド城へと足を踏み入れる。

城門を開け、中に入ると、少々小柄の青年に出迎えられた。

「ようこそ、グリード・アイランド城へ。それと、お久しぶりですね、アイオリアさん」

出迎えたのはリストだ。しかし、俺の記憶では少年だった彼が小柄とは言え俺よりも年上の青年となっているのを見るのはかなり変な感じだ。

「ああ、久しぶり」

「ドゥーンさんが待ってますよ、此方へ」

案内されて城の中を歩き、ドゥーンさんが待つ部屋へと通された。

「おう、イータから話しは聞いている。久しぶりだなアイオリア」

ゴミ屋敷もかくやといったゴミの中からボサボサの髪を揺らしてこちらを振り返ったドゥーンさん。

ちょ!マジきたねぇ!掃除くらいしてくださいよ!

「ドゥーンさん。お久しぶりです」

そんな内心をおくびにも出さず挨拶を返す。

「おう、ゆっくりして行けや」

こんな所でゆっくりはしたくないです。

一刻も早く『支配者の祝福』を貰ってここからは出たいです。

しばらく談笑した後、『支配者の祝福』を渡された。

それをバインダーにはめると100種類コンプリート。

コンプリートした事でゲームクリア報酬を受け取る条件を満たす。

「ほれ、それはお前たち専用のクリア報酬だ。本来なら持ち出せるのは3枚までなんだが、お前達は報酬も貰わずに居なくなっちまうからなぁ。今回のクリア分も含めて丁度1ページ分、九枚だ」

「あ、ありがとうございます」

「まあ、ジンが言い置いて言ったんだがな。いつかお前たちが戻ってきたときに渡してくれと」

なるほど、ジンは信じていたのか。必ず俺たちがもう一度ここを訪れると。

「さて、後はエンディングだ。俺たちも出るからその時にはソラフィアも連れてこい」

そう言ってドゥーンさんは俺を送り出した。

さて、エンディングである。

リーメイロの街が人ごみで埋まる。

その中をオープンカーでパレードし、はしゃぎ、踊る。

久しぶりに俺たちは羽目を外して楽しんだ。

一夜明け、俺たちはクリア報酬に何を持っていくかを話し合っている。

後は外へ持ち出すカードを選べばやっと俺たちは帰れる。

帰れるんだ!海鳴へ!母さんの所へ! 
 

 
後書き
書き
今回はオリ主が無双する話です。
たまには主人公無双もないと…オリ主としては、見せ場が欲しい所…あまり活躍する場面がないからなぁ、アオって。
ゲンスルー組には申し訳ないことをしてしまった…
長くなりましたが、そろそろグリード・アイランド編も終了、stsに戻ります。 
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