第七感
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第三章
「何時かは終わるわ」
「そうよね、終わったらね」
「どうするの?」
「いや、寂しくなるわね」
こうしみじみとして言い出した、今度は。
「そうなったらね」
「まあね。けれどね」
「何時かは終わるのね」
「アニメの方もね」
「そうなのね、生きがいがなくなるわね」
「他にも面白い漫画があるわよ」
私は慶子を慰める様にして言った、落ち込む彼女を見たくなかったので。
「だからね」
「あの漫画が終わっても」
「生きがいはあるわよ」
「それで終わりじゃないのね」
「そうよ、だから終わってもね」
あの漫画がだ。
「落ち込まないの、いいわね」
「うん、じゃあ終わってもね」
「その時は他の生きがい見付けるのよ」
「そうするわね」
こうした話をだ、私達は高校時代にクラスで話した。この時はそれで終わったのだけれど。
まさかだ、子供にこんなことを言われるとは思わなかった。息子の栄太郎、主人にそっくりのこの子が私にこう言ってきたのだった。
「お母さん、聖闘士星矢って面白いね」
「えっ、星矢!?」
私は思わず息子に聞き返した。
「今星矢って言ったわね」
「うん、チャンピオンでやってるから。チャンピオンレッドでも」
「終わったのに」
「面白いよ、どっちも」
「どっちもって」
私は息子が言っていることが最初わからなかった。
「どういうこと?」
「だからチャンピオンでもチャンピオンレッドでもね」
主人が毎週毎月買っている雑誌の話だ、主人はチャンピオン派なのだ。
「面白いよ」
「ううん、あの漫画お母さんが若い時の漫画よ」
「若い時って?」
「栄ちゃんがまだ生まれる前のね」
それこそ主人と知り合う前だ。
「高校生の時に連載してたのよ」
「そんなに古い漫画なんだ」
「原作も終わってアニメも終わったのに」
それで完全に終わったと思っていた、私は。
「それでもまだ連載してたのね」
「とにかく面白いよ」
「そうなのね」
「小宇宙って何?」
息子にこのことも聞かれた。
「あれ何なの?」
「ええと、それはね」
「セブンセンシズって何?」
「第七感よね」
「うん、そういうのって何なの?」
「ええとね」
私は息子にこのことを細かく話した、とりあえず覚えていることを。そしてあらためてチャンピオンやチャンピオンレッドを読んで。
今も付き合いのある慶子と一緒に買い物に行ってその帰りに寄った喫茶店でだ、紅茶を飲みながらこのことを話した。
「あの漫画まだやってたのね」
「チャンピオンの?」
「そう、チャンピオンレッドでもね」
「ああ、私どっちも全巻持ってるけれど」
「どっちの連載も?」
「どっちも原作者の人が絵を描いてないわよ」
こう私に言って来た、私と同じ紅茶を飲みながら。
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