FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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失われた魔法
「マスター・・・プレヒト・・・なぜあなたが・・・」
動揺するマカロフにハデスは魔方陣を展開し、そこから現れた鎖がマカロフの両肩に接続される。
ハデスはその鎖を引っ張り、天狼島の淵の部分にぶつかる。
「ぐあっ!!」
ハデスはもう一度鎖をコントロールすると、マカロフは森へと飛んでいき、木々を倒しながら飛ばされていく。
「うああああああ!!」
マカロフはそのダメージにより、元の大きさへと戻ってしまう。
だがすぐに体勢を立て直し、地面に手を置くと、そこから光が現れ次の瞬間にはマカロフは服を着ていた。
マカロフが視線を上げると、目の前にはいつのまにかハデスがやって来ていた。
「なぜあなたが・・・闇ギルドに」
「表と裏とはなんだろうな、マカロフ。この世は善と悪では計れぬものばかりぞ」
マカロフの問いにハデスは腕を組み答える。
「善でも悪でも、妖精の尻尾の精神は変わらぬはずであろう」
マカロフはハデスの言葉にそう返す。
「ふはは!言うようになったなぁ、あの小僧が」
「小僧はよせやい。もうあんたはギルドの一員じゃねぇ」
そう言ったマカロフは、拳を強く握りしめる。
「だが、あんたとはやりたくない。今すぐ出ていってくれんか?」
「私もね、わずかながら心が痛むよ。妖精の尻尾をこの手で潰さねばならん日が来るとはね」
ハデスと戦いたくないと言うマカロフとあくまで戦う姿勢を崩さない。
「ギルドはやらせんぞ!!」
「私に楯突くつもりか?小僧」
睨み合う二人の体から、それぞれ光と闇のオーラが放たれる。
しばしの膠着状態のあと、二人が同時に動き出す。
バッ、ババッ、バッ
マカロフは腕を振って魔方陣を書き、
バッバッ
ハデスも同様に魔方陣を書く。
「闇を払え!!光の雨よ!!」
「稚拙だな、マカロフ」
マカロフの魔方陣からハデスに向かって光の雨が降り注ぐ。しかし、ハデスはそれを魔方陣で全て防ぐ。
「光を飲み込め、常闇の影よ」
その魔方陣から、闇の波動をマカロフへと放つが、マカロフはそれをジャンプして避ける。
「ならば!!」
マカロフは再び素早く腕を振るって魔方陣を書く。
一方のハデスは、まるで撫でるかのように人差し指と中指を振るう。
そして二人の前にはそれぞれ魔方陣が現れるが、ハデスの魔方陣の方がマカロフの物よりも大きい。
「何!?天照二十八式魔方陣!?この一瞬で!?」
マカロフはハデスの魔方陣を書くスピードに驚く。
「私には勝てんよ」
ハデスがそう言うと、ハデスの魔方陣から黒い柱がたち、マカロフを襲う。だが、マカロフはそれをガードして事なきを得る。
そのマカロフに対し、ハデスは先程と同じような鎖を出して
「ぐほぉ!!」
マカロフを捉える。ハデスは鎖を横へと振り回し、マカロフは木々にぶつけられる。
「私は魔法と踊る。自由自在に」
「くっ・・・」
鎖から解放されたマカロフが顔を上げる。その周りをハデスの書いた魔方陣が囲んでいた。
「なんじゃこれは!?」
「フッ」
驚くマカロフを見て、ハデスは笑みを浮かべる。
「最大防御魔法陣!!三柱神!!」
マカロフは自分を囲むように三本の柱を作り、ハデスの攻撃を防ごうとする。
「天照百式」
しかし、ハデスの魔法は凄まじく、天狼島の1/5ほどを大爆発が襲った 。
シリルside
「「「「「うわあああ!!」」」」」
俺たちは大量の悪魔の心臓の敵と戦っていた。
「今の聞こえたか?ハッピー」
「あい!爆発みたいな音だったよ!!」
ナツさんとハッピーの言う通り、さっきどこかから何かが爆発する音が聞こえた。それも、かなり大きな爆発だった気がする。
「人んちの庭で好き放題やりやがって」
「こいつら許せないですね」
ナツさんと俺は周りの敵を見ながらそう言う。
「しょうがない!!この連中をとっとと倒しましょう!!」
「おう!!かかってこいや!!グーチョクパーの野郎共!!」
「悪魔の心臓だ」
ナツさん・・・敵の名前くらいは覚えておきましょうよ・・・それにしても、こいつらはゼレフを捕まえて一体何をしようとしてるんだ?意味がわからない・・・
第三者side
「おお!!すげぇなハデスの奴!!」
「お前は本当に自由だな、カミューニ」
悪魔の心臓の戦艦では、二人の男がハデスとマカロフの戦いを見ていた。
「おめぇだって自由じゃねぇかよ!!ブルーノート」
「俺はある程度は指示に従っている。戦艦からはまだ出るなと言われたからな」
「ふ~ん」
カミューニはブルーノートの言葉など関係なしにハデスの戦いを見始める。
「そんなにハデスを殺したいのか?」
「あぁ。あたりめぇだ。俺は・・・そのために生きている」
そう言ったカミューニの目には、迷いなど微塵も感じられなかった。
そのマカロフとハデスの戦いは、お互いに譲らぬ展開になっていた。
「さすがは、私が見込んだ男。48年もギルドを支えてきただけのことはある」
ハデスは天照百式を防いだマカロフに対してそう言う。しかし、マカロフの体は震えていた。
「うぐ・・・あ・・・」
すると、マカロフが突然左胸を抑えて苦しみ出す。
「ん?どこか悪いのか?マカロフ」
ハデスはマカロフに歩みより、問いかける。
「互いに老いたな」
「うぐ・・・」
マカロフはハデスの顔を見上げる。
「違う道を歩いてきた者が交わる接点。今日は世界の連続体が完成する日なのか?」
そう言ったハデスに、マカロフは荒い呼吸で返す。
「あ・・・あなたは、立派なマスターだった・・・ワシらに和を説き、正しき道へと導いた・・・一体・・・何があったというのじゃ?」
「・・・・・」
ハデスはその問いに答えない。代わりに、右手をマカロフに向けると、マカロフは地面へと叩きつけられる。
「ぐあっ!!」
「かつて魔法は闇の中で生まれた。その虐げられ、恐れられてきた」
そう言うとハデスはマカロフに背を向け歩き出す。
「やがて魔法は日常化し、人々の文化とも言える時代になった。
だが、魔法の根元をたどり、ゼレフに行き着いたとき、私は見た。“魔導の真髄”というものを」
マカロフは地面に突っ伏したまま、起き上がらない。
「眠れ、妖精の尻尾の歴史は終わる」
ハデスはその場を立ち去ろうとしたが、その時、マカロフは目を覚まし、ハデスへと突っ込んだ。
「ぬああああああ!!」
しかし、ハデスはそれに気づいていた。
グサッ
「ぬおおおおおお!!」
ハデスの右手からレーザーが放たれ、マカロフの体を貫いた。
それにより、マカロフは崩れ落ちていく。
(まだ・・・終われぬ・・・)
ドサッ
(届け・・・ワシの跡を継ぐものよ・・・)
マカロフの意識はそう願いながら遠退いていった・・・
ある砂漠地帯で、フードを目深く被って歩いていた男が、立ち止まり後ろを振り返る。
「なんだ?この胸騒ぎは」
男の名はラクサス。元妖精の尻尾のS級魔導士にして、マカロフの孫である。
シリルside
「オラァ!!」
「やぁ!!」
俺とナツさんは鉄拳で敵を殴り倒していく。
「こっちこっち~」
「遅いよ遅いよ~」
「待てー!!」
「ちぃ!!」
「この猫ちょこまかとー!!」
ハッピーとセシリーは敵を引き付けながら空を飛び、
「うわ!!追い付かれた!!」
「「「「「それー!!」」」」」
「なんてウッソー!!」
「「「「「うわー!!」」」」」
ハッピーたちを追いかけていた連中は誤って崖の下へと落ちていった。追いかける時は周りを見ないとダメなんだな。俺も注意しとこう。
「うお!!」
リリーも体当たりで敵を倒していく。けど、すぐに元の小さい姿に戻ってしまう。
「リリー!!」
「ちょっとあんた!無理しちゃダメよ!!」
ウェンディとシャルルがそんなリリーを心配する。
「くそ・・・戦闘フォームを維持するだけの魔力がない・・・」
「仕方ないわよ。ウェンディは失った魔力までは回復できないの」
「自然回復を待つしかないのか。この非常時に・・・」
悔しそうなリリーにシャルルが説明する。あくまでウェンディの能力は“治癒”だからな。キズを治すのが役割だ。
「メストさんがいなくなってる」
「あんな奴、ほっとけばいいのよ」
ウェンディは辺りを見回してメストさんを探しているみたいだ。確かにメストさんの姿がどこにもないな。どこいったんだ?
「嬢ちゃん、自分のキズは回復できねぇのか?」
「当たり前でしょ。あとでシリルに治してもらうしかないわ」
「そういうものなのか・・・」
治癒の力はあくまでも他人を回復させる力だ。自分のキズを回復させるのは俺たちにはできないんだよな・・・
「みんなは隠れておいて!!」
「で・・・でも・・・」
「大丈夫~!今は僕たちがなんとかするから~!!」
ハッピーとセシリーがウェンディたちにそう言う。リリーが戦えると戦況はかなり楽だけど、さっきのドレッドヘアの奴にかなりやられたみたいだからな。俺たちがなんとかするしかない!!
「はぁ!!」
「そりゃ!!」
ナツさんと俺で敵を凪ぎ払うけど、数が多すぎるなぁ・・・一体何人いるんだ?
「どうした!!次来いよ次!!こっちは大事なマフラー真っ黒にされてただでさえ気立ってんだっつうの!!もっと殴らせろよ!!」
「ナツさん・・・それはただの八つ当たりです・・・」
ナツさんはゼレフに真っ黒にされたマフラーを敵に見せながらそう言う。確かに怒ってるのはわかるけど・・・
「なんだよソレ!!」
「八つ当たりかよ・・・」
「えげつない・・・」
悪魔の心臓の奴等もナツさんにそう言った。でもまぁ、攻めてきてるそっちが悪いわけだし、別に問題ないよね?
「それなら黒焦げ通り越して燃えカスにしてくれるわ!!」
「あ?」
俺とナツさんの後ろに回り込んでいた敵がそう言った。
「ファイアバレット!!」
その手から炎がナツさんに向かって打ち出される。けど、炎じゃ意味ないぞ?
「待ってました!!」
ナツさんはその炎を一瞬で食らう。
「な・・・なんだこいつ!!」
「火を食ってる!?」
「ありえねぇ!!」
敵はナツさんが炎を食うのを見て慌てている。
「もしかして・・・こいつが噂に聞く!!」
一人がナツさんの正体に気づいたけど、もう遅い!!
「食ったら力が湧いてきた!」
「滅竜魔導士・・・火竜のナツ・・・」
ナツさんは腕に炎を纏って突っ走る。
「火竜の・・・翼撃!!」
「「「「「ぐわああああああああ!!」」」」」
ナツさんの攻撃で敵は一掃されていく。やっぱりナツさんすげぇな!!
「なんて奴だ!!」
「ど・・・どうする!?」
「俺らの魔力じゃあ、こんな化け物に通用しねぇ!!」
「誰が化けもんだと?」
ナツさんが睨むと敵は後ずさっていく。
「もういいよ!!」
「「「「「!!」」」」」
俺たちが戦っていた敵の後ろから、男の声が聞こえてくる。
「ハッ!!もういいってよ!!ウハハハハハハハハハ!!」
その声の主は、大きな岩の上に堂々と立っていた、
「ザンクロウ様!!」
ザンクロウと呼ばれた男を見た敵の大群は、歓声を上げる。なんだ?
「おめぇらの敵う相手じゃねぇってことよ!ウヒヒヒヒヒ!!おめぇらはゼレフを探しに行きなって!こいつらは俺っち一人で十分だってよぉ!!」
「ゼレフ?」
「なんだあいつ・・・」
ザンクロウはさっきまでの魔導士たちとは違う・・・なんか、別の感じの魔力を感じる・・・
「それじゃあ、ザンクロウ様」
「助かりました」
「あいつ、物凄く強くて・・・」
「噂に聞く火竜ですよ」
悪魔の心臓の兵隊たちはそういってゾロゾロと歩き出す。だが、
「待てよゴラァ!!」
「「「「「ひいいっ!!」」」」」
ザンクロウに呼び止められて足を止める。なんか怒ってるみたいだけど・・・
「今・・・強ぇって言ったのか?ああ!?」
「あ・・・いや・・・」
「つい・・・口が滑って・・・」
「す・・・すみません・・・」
ザンクロウの質問に兵隊たちはびくつきながら答える。
「この世に悪魔の心臓より強ぇギルドなんてねぇんだって」
ザンクロウはそう言うと、体の周りに黒い炎を纏い出す。
「炎?」
「しかも・・・黒いですよ?」
黒い炎なんて・・・あんなの見たことないぞ!?
「俺たちが最強のギルドなんだってよぉ!!悪魔の心臓に弱者はいらねぇ!!」
「「「「「うわあああああああ!!」」」」」
さっきまで俺たちと戦っていた悪魔の心臓の兵隊が黒い炎に包まれていく。なんだ!?仲間割れ!?
「な・・・なんだこいつは・・・」
「ど・・・どういうこと~?」
「ウハハハハハハハハハ!!」
燃えていく仲間を見て、ザンクロウは高らかに笑ってみせる。
そして、黒い炎が消えると、その場に人影のような物は何一つ残っていなかった。
「この!!お前自分の仲間を!!」
「仲間?弱小ギルドが、知ったようなことほざいてんじゃねえってよ!!」
ザンクロウはナツさんに向かって黒い炎を放つ。
「ざけんな!!俺に炎は効かねぇぞ!!」
ナツさんは正面からそれを受けようとしているけど・・・それはまずいような気がするぞ!!
「ナツさん!!ダメ!!」
「その炎は嫌な感じがします!!」
ウェンディと俺がそう言ったが・・・遅かった。
「うわあああああ!!」
黒い炎がナツさんを飲み込んだ。
「が・・・く・・・食えねぇ!!なんだ!?この炎は・・・」
「頭が高ぇってよ!!竜狩りごときが!!」
ザンクロウは炎のボールを作り、炎に飲み込まれているナツさんに投げつける。
ドゴォン
投げられた黒い炎が、大地を揺らすほどの爆発を起こし、俺たちは爆風に押される。
「ナツーー!!」
「炎の滅竜魔導士が食べられない炎!?」
「何なのそれ~!!」
ハッピーたちが風に飛ばされそうになりながらそう言う。なんなんだ?あいつの魔法は。
「が・・・ゴホッ・・・ゴホッ・・・」
煙が晴れると、ナツさんは無事に姿を現した。よかった、ナツさんは平気そうだな。
ザンクロウはナツさんの前に飛び降りる。
「竜の炎の上をいく神の炎を喰うつもりかい?罰当たりだって」
神の炎?どういうことだ?
「ウハッ!!てめぇの魔法とは格が違うんだって!こっちは神殺し・・・滅神魔導士だぜ」
「「「「「「「!?」」」」」」」
俺たちはザンクロウの言葉に驚いた。
「滅神魔導士・・・」
「神を滅する魔法・・・」
ウェンディと俺は、そう呟いた。
その頃、他のところでも・・・第三者side
グレイ、ロキ、カナ、ルーシィたち四人は悪魔の心臓の兵隊たちをおおよそ倒して終えていた。だが・・・
パァン
誰かの手を叩く音と同時に、周りに残っていた兵隊たちが姿を消した。
「敵が消えた!?」
「降ってきたり消えてみたり、忙しいねぇ」
グレイとカナはそう言う。
「気を付けて!!」
そんな中ロキは、一人だけ三人とは違うところを見上げる。
「奴等では貴様らは倒せん。時間の無駄。貴様らの相手は私がしよう」
そう言ったのは、煉獄の七眷属の一人、カプリコ。
「ヤギ!?」
「ヤギ・・・だよね?」
ルーシィとカナはカプリコの姿を見てそう突っ込んだが、ロキは一人だけカプリコを見て、何かを考えていた。
「なんとか凌ぎましたね」
「先を急ぐぞ」
「はい!!」
エルザとジュビアは早々に敵を全滅させ、ウェンディを探すために走っていた。しかし、エルザぬ何かに気づいて立ち止まる。
「何者だ!!」
「?」
エルザとジュビアが気配を感じた方を向く。
「作戦中に敵と遭遇。ただちにこれを排除。これより、殲滅を最優先事項の変更。戦闘を開始する」
二人の前に現れたのは、煉獄の七眷属の一人、メルディ。
「子供?」
「侮るな。妙な魔力を感じる」
エルザとジュビアは、メルディに向かい合った。
「寂寞の森で悪魔と妖精は出会ってしまった」
「はぁ?」
「呪文か?」
エルフマンとエバーグリーンは、相手の意味不明な言葉に唖然とする。
「そう、これが俺たちの戦争開拓地」
「なんだこいつは・・・」
「見りゃわかるでしょ。『バカ』よ」
二人は煉獄の七眷属の一人、ラスティローズの登場に、あきれ返るしかなかった。
「やれやれ。猫と子供の次は女かね」
そういってミラとリサーナの前に現れたのは、先程ウェンディたちを倒した煉獄の七眷属の一人、アズマ。
「リサーナ下がってて、こいつは危険よ」
「私も戦えるってば」
二人は現れたアズマ対し、戦闘体勢に入った。
「それぞれの対戦カードが決まったなぁ。それじゃ、俺も動き出すか」
悪魔の心臓の戦艦から、カミューニは天狼島へと降り立った。
ハデスは一人、悪魔の心臓の戦艦の前にある浜辺の前に立っていた。
「マカロフのガキどもが七眷属に勝てるはすがない。 私が何年もかけて育てた大魔道たちだ。奴らは皆、魔道の根源に最も近い魔法、失われた魔法の使い手たち。禁断の魔法の前になすすべはなかろうて」
マスターハデスは、悪魔の心臓の圧勝を確信し、そう言った。
後書き
いかがだったでしょうか。
華院=ヒカルとウルティアは妖精の尻尾の誰とも出会ってなかったので省略しました。
次回もよろしくお願いします。
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