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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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第二十二話 研究所

「それでは、頼むぞ」

「まっかせてよ、クロノ!」

アースラ内の転移システムの前に五人の少年少女がいた。全達の事だ。

これから彼らは対象のある世界に転移される。その見送りにクロノがやってきた所である。

「ねぇ、全。手、大丈夫なの?」

「ん?ああ、問題はない。シンもきちんと持てるしな」

全は既にバリアジャケットを着込んでおり、臨戦態勢といった感じだ。

アリシアやフェイト、るいも同じくバリアジャケットを着ているのだが……その中でも一際意識が高いのは全だろう。

何分、今回は任務だ。前世では任務と聞けば気持ちを切り替えてやっていかなければいけなかったので、その時の事が抜けないのだろう。

「それじゃあな。任務の成功を祈ってるよ」

「いってきます、クロノ」

「行ってくるね!」

「いってきます」

「ああ」

四人はそれぞれクロノに返事をして、転移魔方陣の中に入り問題の研究所の前にやってきた。

「さてと……確か、研究所の調査だったよね」

「うん、良くない噂がたくさん立ってるみたい」

「その良くない噂って?」

「何でも、子供の悲鳴とかすすり泣く声が夜中によく聞こえるらしいよ」

「悲鳴、ね……」

研究所と聞いて全は少しだけ嫌な予感はしていた。

研究所ときて、子供の悲鳴。全の脳裏には、人体実験という単語しか思い浮かばなかった。

実際、そのような研究所を何個も見てきた全はこの面子で大丈夫なのかと不安なのである。

その中でも、特に不安なのが、フェイトとアリシアだと全は思っている。

(この二人は双子だが……ちょっと事情が違うしな)

そんな事を思いながら全は研究所の様子を見る。

「お前達、無駄な話はもうやめよう」

全はそう言って周囲を警戒しながら進む。

「何だよ、あいつ。無愛想でさ」

アリシアはそんな文句を言いながら全についていく。

「でも、橘の言うとおりだよ、姉さん。るいも、行こう?」

「ええ」

対照的にフェイトとるいは肯定的だ。

先行して全が。それに続くようにアリシア、フェイト、るいの順で研究所へと進んでいく。

そして、研究所の入り口に辿り着く。

しかし、周りは嫌なほどに静かだ。

「静かだね……」

「うん……」

「さすがにここまで静かだと、ちょっと不気味……」

周りの静けさにるい達は辺りを見渡す。

一方、全は研究所の入り口を見つめたままだ。

(おかしい……あんなに怪しさ満点の感じを出しておいて見張りが誰もいない……管理局が勘付く事もわかっていた筈だ。それなのに見張りも立てない……いや、立てる必要がない……?いや、それにしても……)

あれほど疑わしい声などを出させていたのだ。誰かが通報する可能性だって当然知っていた筈。

だというのに見張りも立てない……全はそこが引っかかっていた。

(どうする……突入するか?それとも、しばらく様子見……様子見の方が安全は確保できるか)

しばらく様子見しようと決める全。

「ねぇ、手っ取り早くさ。中に入っちゃおうよっ」

と、ここで空気を読まない発言をアリシアがした。

「ね、姉さん。危ないよ?」

「大丈夫大丈夫。いざとなれば、私がいるしねっ」

そんな発言をするのは自身に絶対の自信がある奴だけだぞ、と全は心の中でツッコむ。

「アリシア、今回はあくまで調査なんだからね。あまり危険な行為は」

「大丈夫だって!」

そう言ってアリシアは陽気な感じで入り口に近づく。アリシアが入り口の前に来ると、待っていたとばかりに自動的にドアが開く。

(ますます以って怪しいな……)

「いざ!」

そう言って自身のデバイス、バルディオンをぎゅっと握り締めると中に入っていく。

「あ、姉さん待って!」

それに慌ててフェイトも続いていき

「あぁ、もう!二人とも、待ちなさい!」

あろう事か、るいまで入っていった。

「……はぁ、行くしか……ないよな……」

全は少しだけため息をついてから中に入っていった三人の後を追いかけた。







アリシア達と合流した全は研究所内を注意深く歩く。

どこに何があるのか何もわからないからだ。

せめて、内部の通路やどこに何があるのかさえわかればと思ったのだがしかし、ここに来てしまったからには仕方ない。

何かあるであろう部屋を見つけて証拠を持って帰らなければならない。

そんな事を思いながら、少しだけ開いているドアを見つけた。中からは神秘的な緑色の光が漏れている。

何だ……?と不思議に思い、全は部屋の中を見る。

「何かの保管室……?」

全は注意深くドアを開けて、中に入る。アリシア達もそれに続く。

「へぇ……何だか神秘的……」

中にあったのはいくつものカプセルだった。カプセルの中に入っている液体のような物が緑色に光っている事から先ほどの光はこの液体だったのだろう。

「何かを保管してるのかな……え……」

フェイトはカプセルの一つに近づくと口元を抑える。

「どうしたの、フェイ……ト…………」

フェイトに続いてカプセルの中を見たアリシアも同じように口元を抑える。

そんな様子を不思議に思い、全もカプセルの中を見る。

「っ!こ、これは……!」

カプセルの中に入っているのは人間……それも、子供だった。

「っ、まさかここにあるカプセル全部に!?」

全は一つずつ確かめる。そしていくつもあるカプセルの中には例外はなく、すべてに子供が収納されていた。

「こ、これ、何なの……?」

「ひどい……」

「こんなのって……」

るい達も何とか立ち直ったのかそれぞれカプセルを見ていく。

そして、全はいくつかのカプセルに共通する記号を見つけた。

(まただ、こっちとこっちはH……こっちとこっちのはS……全部に番号が書かれている。そして、その中に入っている子供の顔は……殆ど、一緒だ……!)

そこまで考えて全は一つの結論に達した。

(そうか、ここは……!)

と、その時




















「ようこそ、管理局の諸君」


















そんな声が部屋に響く。

「「「っ!?」」」

アリシア達は驚きながらその場に一緒になって固まる。

全はというと……シンを持って低く構え、どこから聞こえてきたかを全感覚を使って調べている。

「いやぁ、まさかここまで早いとはね……行動力の速さに感心するよ。それに()()()も一緒に来てくれているしね。君達も……僕の研究の為の礎になってもらうよ!」

声がそう言うと、何かをずるずると引きずるような音が聞こえてきた。

光に照らされたそれを全達は見る。

そこにいたのは異形。その一言に尽きた。

まるで色々な生物の集合体のような姿をしているのだ。しかも、頭部の部分はきちんと人型を保っている。

それが意味する所は……この異形は、元々人間だったという事だ。

「あまりにも僕に対して失礼な態度を取っていたからね。ちょっとしたお仕置きだよ」

「お仕置きって……こんなの、お仕置きじゃなくて殺しじゃない!?」

「おやおや。改造を殺しというのかい?僕には理解できないね。彼は研究の礎になれたんだ。本望だろうさ」

「狂ってる……!」

フェイトがそんな怒りに満ちた顔をしている。

「あれぇ?君達の母親だって十分狂ってると思うけどね?プロジェクトFなんていう代物を考え付くんだからさ」

「「っ!?」」

プロジェクトF。その単語を聞いた瞬間、フェイトとアリシアの目が見開かれる。

「な……」

「なんで……」

「知りたかったら、生き延びな♪」

「ヴォォォォォォォォォ!!!!」

人間だった物はそんな声を上げながら迫ってくる。

「おい、しっかりしろ!フェイト、アリシア!くそ!るい、二人を頼む!」

「わかったわ、気をつけて!!」

るいに二人を預けた後、全は人間だった物に向き直る。

「許せよ……」

全は一度、目を閉じると……思いっきり開く。

それが、戦いの合図だった。 
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