戦国異伝
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第二百十五話 母子の和その六
「ではこれを」
「うむ、梵天とな」
「そしてお母上にも」
「義姫、東の方とも言う」
信長はその母の名も言った。
「梵天の弟の名は政道、幼名を小次郎という」
「それがお名前ですね」
「それぞれのな」
「左様ですか」
「この東の方が猛女じゃ」
信長も顔を顰めさせて言う程にだ。
「伊達と最上の戦を止めたこともある」
「何でも戦の間に輿で来て」
「双方の間に入ってな」
「戦を止めたまでの方ですね」
「知っておるか」
「伝え聞いております」
遠い奥羽の話も知っているのが帰蝶なのだ、そうした耳のよさも知っているからこそ信長の妻でいられるのだ。
「その様に」
「流石じゃ、しかしな」
「そのことを見ましても」
「あの母君は強い」
「まさに戦国の」
「おなごじゃ」
こうも言った信長だった。
「強いわ」
「そして政宗殿も」
「やはり強い、伊達に一度は天下を望んだ訳ではない」
「お二人の和となりますと」
「どうしても難しい、しかしわしに策がある」
信長はその南蛮菓子も食べつつ述べた。
「色々とな」
「この南蛮菓子も使われ」
「そして親子兄弟に家臣もな」
「あらゆるものを使われて」
「そのうえで収めるつもりじゃ」
こう帰蝶に言うのだった。
「この天下をな」
「ではお励み下さい」
「そうしたこともな」
帰蝶とも話してそうしてだった、信長は米沢に戻っていた政宗と東の方、それに政道と政宗の主な家臣達にだった。
義光も呼んだ、片倉と成実は安土に向かう途中の道で馬上で話していた。
「さて、安土まで行き」
「そしてじゃな」
「上様は我等に何を言われるか」
「それがな」
「わかりませぬな」
「うむ」
成実は首を傾げさせつつ片倉に応えた。
「どうもな」
「お母上も呼ばれていますし」
「東の方様もな」
「さて、殿と東の方様は」
片倉もこのことについては難しい顔で言う。
「長きに渡って」
「剣呑な間柄であるからのう」
「小次郎様のこともありますし」
「それじゃ」
まさにと言う成実だった。
「その小次郎様まで呼ばれておるぞ」
「上様は」
「どうもな」
「わかりませぬな」
「和を望まれているにはな」
「それはわかりますが」
しかしだった、それでもなのだ。
「どうして和が成るのか」
「殿と東の方様の間でな」
「しかも小次郎様のこともありますし」
「無理であろう」
「はい、どうしても」
こう二人で話していた。
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