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ハイスクールV×D ライド32
「貴方があの剣を作った者ですって!?」
ブラスティッドと名乗った男の言葉にリアスが驚愕の声を上げる。……三大勢力の戦争に於いて強大な力を持って悪魔に打撃を与えた剣を作りあげた者が目の前に居る。だが、それ以上に目の前の相手ならば、
「お前……木場が選ばれなかったってどう言うことだよ!? 剣が意思を持っているとか言うのかよ!?」
「当たり前だ」
その場には似合わない朗らかな笑みを浮かべ、ブラスティッドは一誠の言葉に答える。
「私の拵えた超兵器は特別だからね。それに、剣が意思を持っていると言うのは、エクスカリバーこそいい例だと思うがね」
「エクスカリバーが、だと?」
ブラスティッドの言葉にバルパーが反応する。聖剣を愛するバルパーにとって聖剣を超えた剣を作りあげた者が目の前にいる。それは怒りや憎悪の感情を向けるべき相手に等しい。
「その通り。エクスカリバーはかつて騎士道に反する行いをした主を戒めるために自ら折れたカリバーンと言う聖剣を打ち直したと言う説があるそうだ。力を持った聖剣は相応の“意思”と言える物を持っている。そう考えるべきではないのかな?」
そう言った後ブラスティッドは愉快そうに笑みを浮かべ、
「それならば聖書の神への抗議の為、自ら再び砕けたのかな?」
「貴様……」
明らかに聖書の神を馬鹿にする口調で告げるブラスティッドの言葉に怒りを覚えるゼノヴィアだが、それを意に解する事無く一誠へと言葉を告げる。
「不完全ながら使いこなしていると言えるのは彼だけだよ、四季君」
「使い……こなしている、オレが?」
「ああ。彼と同じ様に光の守護竜の加護を受けている君ならば……“本当の勇気”に気付けば必ずね」
「本当の……勇気?」
「本来ならば彼の意思を告ぐべき君と私は敵同士になる定めだが……私の拵えた超兵装の為の最初で最後の忠告だよ」
微笑みながら告げられる言葉。
「君は受容れるべきだ。君自身の力を、全てね。己の力と正しい勇気、それが君自身の力の鍵となる」
「オレ自身の力と……正しい勇気?」
ブラスティッドの言葉を反芻する様に呟く。ブラスティッドの言っている言葉の意味は分からない。だが、四季の中の何かがそれは正しいと次げているのが分かる。
「っ!? 貴方があの武器を作ったと言うなら、貴方なら祐斗を元に戻せるはずよ! あの子を元に戻しなさい!」
そんな彼等の会話が終った頃を見計らった様にリアスがそんな叫び声を挙げる。
「残念ながら、それは無理だね。元に戻れるとすれば……アーメスとユーノス、彼等のように自力で元に戻るしかないね」
「っ!? ……なら、貴方を拘束させてもらうわ! あんな物を作りあげた者……放っておくわけにはいかないわ!」
「……君は状況が分かっているのかな?」
『まったくだ』
呆れた様なブラスティッドの言葉が響くと同時にコカビエルの声が響く。
「それに」
ゆっくりとブラスティッドの姿が漆黒の鎧を纏った姿へと代わり、消えていく。
「今回は顔を見に来た。それだけと言う事だよ」
「待ちなさい!」
そんなブラスティッドへと滅びの魔力を放つリアスだが、彼女のはなった滅びの魔力はブラスティッドを素通りして消えて行った。
「忘れるな、光の守護竜の加護を受けし少年と、その側に経つ“刻の加護を受けし少女”よ。奈落竜の胎より生まれ出し我の名……。そは『ザ・ダーク・ディクテイター』」
最後にそういい残して彼の姿は完全にその場から消え去ったのだった。
『なんなんだ、あれは?』
「ドライグ?」
『あの剣は異常だ。……しかも、神の手では無く人の手で作り出されたと言うのか』
「どう言うことだよ?」
ブラスティッドの言葉に呆然と呟くドライグに一誠が聞き返す。
『神器は所有者の思いを糧に進化をしながら強くなっていく。だがそれとは別の領域がある。想いや願いがこの世界に漂う『流れ』に逆らうほどの劇的な転じ方をした時、神器は至る。それこそが……禁手だ』
「あれがそうなんじゃないのか? オレの時みたいに鎧になってるし」
『違う。あれは思いを糧に進化する所か、思いを媒介に想いさえも捻じ曲げて武器が戦うために所有者を利用している』
捻じ曲がった重いと武器の意思が一つとなった時、いかに高潔な騎士であっても、暴力に支配された影の神殿に潜む暴力の集団へと変わる。
「ハハハ! 何息荒くしてんの!? 訳分からない茶番見せられてウザいったらありゃしない! もう限界! てめえを切り刻んで気分落ち着かせて貰いますよ! この四本統合させた無敵の聖剣ちゃんで!」
「ソコニ有ルンダナ……聖剣ガ」
赤黒く染まった瞳でフリードを……エクスカリバーを見据え、木場は切りかかる。
「チッ!」
―奴ハ形状変化ノ能力ヲ使ウゾ―
「伸びろォォォォォォォォォォォォオ!!!」
超兵装ブラスター・ダークからのアドバイスとなる一言を受けて木場が飛ぶと同時にフリードが刃を伸ばす。擬態の聖剣の能力だ。
「こいつも有るぜぇ!!!」
フリードの振るう剣の速度が増す。天閃の聖剣の能力だろう。だが、
―確カニ早イナ。ダガ……読ミヤスイ―
超兵装ブラスター・ダークがフリードの動きを先読みする事で、木場は正確にそれを回避していく。
「なんでさ! なんであたらねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!! 無敵の聖剣様なんだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
―無敵? 一度我等二敗レタ鈍ラ如キガ―
超兵装ブラスター・ダークの嘲笑うような声が響く。木場は残された意識の中で考えていた。『やはり、この剣があれば聖剣は超えられる』と。
「ならこいつも追加でいってみようかねぇ!!!」
刀身が消える。透明の聖剣の能力だ。
―刀身ヲ消ス以前ニ殺気ヲ消セ―
超兵装ブラスター・ダークの声に従いフリードの剣戟を全て回避していく木場。
「だったら全乗せだぜぇ!!!」
最後の聖剣である夢幻の聖剣の能力で無数の幻覚……フリードを作り出す。同時に天閃の力によって人間には対応できない速度で、透過した刀身が擬態の力で変化しながら不規則に襲い掛かる。
―無駄ダ―
その攻撃の全てを避け、ある物は撃ち落す木場。どれだけ幻覚の中に隠れても、透過した刀身を変化させたとしても……
「何であたらねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」
―貴様ノ攻撃ハ分カリ易イ―
「所詮ハ折レタがらくた、コノ超兵装ブラスター・ダークノ敵デハ無イ」
最後の一太刀によってフリードの持っていたエクスカリバーの刀身が完全に砕け散る。
「マジかよ! 伝説のエクスカリバーちゃんが! 酷い! これは酷すぎる! かぁーっ! 折れたものを再利用しようなんて思うのがいけなかったんでしょうか!?」
-「弱さは罪……弱者は悪……」-
エクスカリバーが砕けた事に絶叫しているフリードに対して木場は凶悪な笑みを浮かべて近付いていく。
―「兵装展開。……強き者には栄光を……弱き者には、絶望を!」―
超兵装ブラスター・ダークから現れるのは巨大なレイピア状のエネルギーの刃。騎士の速度を最大限に活かした突きがフリードを切り裂く。
「木場……?」
望んでいた復讐を遂げた筈なのに彼の浮べている表情は『物足りない』と言う物。そんな彼の姿に……彼の行なった惨状に呆然とするグレモリー眷属とゼノヴィア。……アーシアだけはあまりの光景にへたり込んでいる。
そんな木場はゆっくりと四季へと視線を向ける。
「……三流剣士……其処まで堕ちたかよ。詩乃……下がってろ、三流剣士の相手はオレがする」
「無茶はやめて! ああなった相手は……」
詩乃は其処まで言った後言葉を飲み込む。……最悪の場合……戻れないと思った場合は今の木場の様になる前に、守るべきものを傷付ける前に、と頼んでいた事。
「……ああ、それはオレが一番、分かってる」
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