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ロンパウ

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第六章

「これがロンパウだよ」
「そう、じゃあ早速着るわ」
「それで着たらだね」
「まずお母さんに見せてお兄ちゃんに見せてね」
「そしてだね」
「お父さんに見せるから」
 こう言ってだ、娘はその袋を受け取ってだった。
 先生を部屋から追い出した、先生は仕事を終えるとだった。
 家のリビングに入った、するとそこで料理を作っていた中年の、先程の娘が少し老けて太った感じの女の人に言われた。
「帰って来たのね」
「うん、今ね」
「お風呂入る?」
「そうするよ、まずは」
「上虎は大学のお友達と飲みに行ってるから」
「帰るのが遅いんだね」
「虞花はいるわよ」
 娘はというのだ。
「もう挨拶した?」
「さっきね、じゃあお風呂行くから」
「それじゃあね」
 こうして先生は風呂に入り山に登った汗と汚れを落とした、そして風呂から上がるとだった。
 ワンピースの黒い丈の長い服で下はズボン、上着の上にコトットンベルベットを羽織っている。ベルベットにも上着にもズボンにも金色と赤、白に青でステンドガラスを思わせる模様が刺繍されている。頭の飾りには羽根があり赤や青、白に黄色の固いバンダナの様なものであり銀色の小さな飾りが大量に付いている。
 タスキまであるがそこには子安貝や夜光貝が縫い込まれている。
 娘がその服を着てだ、彼の妻に見せていた。
「どう?」
「いい感じじゃない」
 妻は娘に笑顔で言っていた。
「とてもね」
「ええ、私自身鏡で見て気に入ってるわ」
「それは何よりね」
「ええ、それがパイワン族の服ね」
「そうなのよ」
「ロンパウっていうんだよ」
 ここで先生は娘に言った、シャツにトランクスだけの風呂上りの格好で。
「その服は」
「そう言ってたわね」
「そう、そしてそのタスキはね」
「これは何ていうの?」
「パラバクっていうんだ」
 タスクの名前も言うのだった。
「いい名前だよね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「何でロンパウっていうの?」
 娘は怪訝な顔で父にその名前を尋ねた、服のそれを。
「どうしてなの?」
「それ皇帝の服に似てるからだよ」
「皇帝って中国の」
「そう、清のね」
「そういえば台湾って清だったわね」
「それで皇帝の服に似てるから」
「皇帝の服ってそういえば」
 ここで娘も思いだした。
「龍の服で」
「ロンパウっていったね」
「その服に似てるからなのね」
「その名前なんだよ」
「成程ね、わかったわ」
 娘はそのロンパウを着たまま頷いた。
「じゃあ私は皇帝になったのね」
「女帝だけれどね」
「そうなのね、あとね」
「あと?」
「この模様何?蛇だけれど」
 娘はそのロンパウの模様にも注目した、服を飾っているそれを。
「何の蛇なの、それ」
「百歩蛇だよ」
 先生はこのことについては少し嫌そうに答えた。 
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