ロンパウ
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第一章
ロンパウ
百歩蛇と聞いてだ、高雄の高校で生物の先生をしている楊上龍先生は顔を顰めさせてその蛇について尋ねた生徒達に言った。
「注意しないといけないよ」
「毒蛇だからですよね」
「猛毒あるって聞いてますけれど」
「噛まれたら百歩歩かないうちに死ぬ」
「そこまで毒が強いんですね」
「そうだよ、実際は毒はあまり強くないけれど」
それでもというのだ。
「毒の量が多くてね」
「噛まれたら危ないんですね、実際に」
「本当に百歩歩くうちに死ぬんですか?」
「流石にそこまで怖くはないよ、日本の漫画じゃあるまいし」
楊先生はこうも言った。
「秘孔を突かれたら三秒で死ぬとかね」
「古い漫画ですね」
「あの漫画先生も読んでたんですね」
「うん、あの漫画みたいなことはね」
流石にというのだ。
「ないよ、けれど毒蛇なのは事実だから」
「注意しないといけないですか」
「そのことは変わらないんですね」
「百歩歩いて死ななくても」
「それでもですね」
「毒蛇は毒蛇だよ」
このことは変わらないことだというのだ。
「見付けたら近寄らないことだよ」
「触らぬ蛇に祟りなし、ですね」
「そいいうことですね」
「要するに」
「百歩蛇にも」
「うん、百歩蛇の模様も独特だしね」
楊先生は生徒達にこのことも話した。
「わかりやすいから
「確かあれですよね」
「鎖みたいな形ですよね」
「頭は三角で」
「そんな形ですよね」
「そうだよ、蝮に似てるよ」
この毒蛇にというのだ。
「同じクサリヘビ科だしね」
「ですか、じゃあ蝮も百歩蛇もですね」
「会ったら、ですね」
「近寄らない」
「それが大事なんですね」
「そう、食蛇にはまず近寄らない」
このことが第一だというのだ。
「いいね、百歩蛇でもね」
「わかりました」
「じゃあ百歩蛇には近寄らないです」
「ここは毒蛇が多いんだよ」
楊先生はこのことについては困った顔で述べた。
「熱いからね」
「蛇が過ごしやすい国ってことですね」
「そうした島なんですね」
「この台湾は」
「そうなんですね」
「美麗島といって確かに奇麗で実りも多い島だけれど」
それでもというのだ。
「ここは疫病や虫が多いし」
「毒蛇もですね」
「多いんですね」
「世の中いいものばかりとはいかなくてね」
「この台湾も」
「そういうことなんですね」
「悪いこともあるから」
この世のの摂理はだ、台湾にも当てはまってというのだ。
「毒蛇も多いんだよ」
「それで百歩蛇もですね」
「いて、ですね」
「気をつけないといけないんですね」
「そうしたことにも」
「だから昔は人が少なかったんだよ」
かつての台湾は、というのだ。
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