異世界系暗殺者
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義体の時間(2016/03/30 一部加筆修正)
前書き
今話は無駄にイッキのラッキースケベシーンがあったり、話が駆け足だったりします。
その点をご了承ください。(笑)
【視点:樹】
ポチ&堀部の再襲来から2日経った7月中旬某日。不破との話し合いで製作を開始していたモノが遂に完成し、俺は朝っぱらからテンションMAXだった。
いや、朝っぱらからというのは変か?時計の短針は既に11時を回っている。徹夜で製作作業に没頭していて、気が付いたらこの時間帯だった。完全に遅刻だ。
家を出る前に携帯の着信履歴を見たら有希子から5回ほど電話があったみたいだ。他にも渚や悠馬からも連絡があった。
だからこそ、俺は完成したモノを背中に担ぎ、元に戻した炎の玉璽を使って全速力でE組校舎へと向かった。この寝不足による考え無しの行動が、自分に災いを呼ぶとも知らずに。
E組校舎に辿り着いた俺は、1秒でも早く完成したモノを皆に知って貰おうと、教室へと急ぐ。
「あれ?イッキ君?遅刻なんて珍しい、って!!?」
「!!?おい、イッキ!早まるな!!」
教室に向かう過程で渚と陽斗に声を掛けられたが、俺はそんなことよりも皆――特に不破と律に完成したモノを知って貰いたくて、教室の前に辿り着くとその扉に手を掛け、勢いよく扉を開き、教室に入った。
「皆!俺、律が皆と今まで以上に仲良くなれる凄いのを作った……」
教室に入った俺の目に入ってきた光景が、俺のテンションを急激に下げ、それと連動する様に俺の声も小さくなっていく。俺の目に入った光景、それは着替え中の女子の下着姿だったんだ。
「………………」
「「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」
そういえば、この時間帯は体育でE組教室は女子の更衣室になるんだった。最近のJCは色々と大人びていると聞くけど、うちのクラスの女子はそうでもないみたいだな。
皆、白やピンク、レモンイエロー、ミントグリーンといった清楚系で、赤とか黒、紫といったビッチ先生が身に着けそうな下着の女子がいなくて、俺は安心したよ。有希子の下着姿も……。うん、可愛いぞ。
そんな訳で(←どんな訳だ!?)、俺は担いでいたモノを扉付近の壁に立て掛け、女子に背を向け、教室から出て行こうとした。
「……し、失礼しました」
「「「「「「「「「「………って、ちょっと待てーーーー!!!!」」」」」」」」」」
が、出て行こうとした俺は女子の攻撃により阻まれた。何やら後頭部に鈍器っぽい物が当たった気がする。
「女子の着替え、堂々と覗いといてタダで帰れると思ってんの!」
「安心しろ!俺は有希子にしか興味が無い!!」
「何よ、それ!?っていうか、それはそれで神崎さんの身が危ういわ!!」
「あっ!神崎さんが頭から煙り出しながら倒れた!!」
「まさかイッキ君達って、もう男女の一線超えちゃったの?」
「アホか!俺と有希子の交際を至極健全なもんだ!!」
「んなことどうでもいいのよ。それより覗きなんてして、ただで済むと思わないことね!」
「だから態とじゃないって――ギャー!渚、陽斗!廊下にいるんだろ!?助けてくれ!!」
「渚!前原!入ってきたら、あんた達もタダじゃ済まないわよ!!」
この後、俺は気絶するまで下着姿の女子一同にフルボッコにされた。一部の変態男子からすれば天国なのかもしれないが、まともな人間にとっては地獄でしかない。そして―――
「本当にすみませんでした」
着替えを終えた女子一同と教室に入って来た男子一同の前で土下座している現在に至る。
「女子全員の下着姿を堂々と覗くとは……。羨まs――実にけしからん!」
「岡島は黙ってろよ。っていうか、イッキがこんなミス犯すなんて珍しいな。遅刻したのも初めてだし、本当に何があったんだ?」
岡島とは違って真面目代表の悠馬がそう尋ねてきた。で、俺はその疑問に対して嘘偽りなく真実のみを語った。
「―――成程ね。徹夜で思考回路が麻痺していた上、前から作っていたものが完成したこともあって、変なテンションになっていたと」
「ああ。何て言うか………、本当に申し訳ない」
「で、何を作ったんだ?」
「教室入口前の壁に立て掛けてる」
「ん?この布に巻かれたのか?大きさは大体女子の平均身長くらいだな」
「A・T技術を駆使して作り上げた律の義体だ」
「「「「「「「「「「………は?」」」」」」」」」」
「それってもしかして、汎用玉璽内蔵型多駆動A・T義体・ファントム!?完成したの!!?」
「おう。開発開始から約1ヵ月半、玉璽作るより時間が掛かっちまった」
「あー、御二人さん。話が盛り上がりそうになってる所悪いけど、俺達にも分かる様に説明してくんない」
俺が完成させたものを理解した不破と話が盛り上がろうとした瞬間、陽斗が割って入って来た。
「取り敢えず、その多駆動A・T何たらってのについて説明してくれ」
「えっと、分かり易く言うとA・Tの技術を流用して作った義肢をベースに開発した遠隔操作型のロボットって言えばいいのかな?」
「いや、もうA・T技術を元に作られたロボットって言えばいいんじゃね?」
今の俺は正座したままの状態ということもあって、立った状態から質問されている姿は周りから見てもかなりシュールだと思う。
「ロボット?あの布の中身がか?」
「おう!律が皆と同じ様に行動できる様、義体――ロボを律の為に作ってたんだよ。基本的にはモバイル律の応用による遠隔操作型なんだが、ハッキング対策として義体内の電子頭脳にA.I.をインストール可能とした優れものでもある。
ってか、そろそろ正座から解放して貰ってもいいか?律の新しい身体のお披露目もしたいし」
「……仕方ないわね。けど、お披露目が終わったら、また正座ね」
「げぇ!………いえ、何でもありません」
取り敢えず、女子クラス委員の片岡のお許しを得たので、俺は立ち上がると教室入口の壁に立て掛けている律の義体を教卓の前まで移動させた。そして―――
「俺の持てるA・T開発技術の集大成、見て驚け!!」
「「「「「「「「「「………おおーーーー!!!」」」」」」」」」」」
布を取り外すと教室から歓声が沸き起こった。
「これが私の新しい身体ですか?」
「おうよ。人工皮膚の張り付けが顔しかしてないから、首から下が素体のままだけど、それでも体型的には女性らしさが出てると思うんだ。どうだ?」
「………ねぇ、イッキ君。この胸の部分の塊は何?」
「ん?シリコンだけど、それがどうかしたか?茅野」
「何でこんなに大きいの?」
「はぁ?いや、この大きさは一般的な中3女子の平均値らしいぞ。インターネットで調べてみろ、普通に出るから。それに律も女の子だから、断崖絶壁にするのは可哀想過ぎるだろ?」
「こ、これが平均値……」
俺の発言で茅野があからさまに項垂れ始めた。ってか、よくよく見ると岡野も項垂れている。一体どうした、2人とも!!………まぁ、いいか。
「ちなみに首から下の人工皮膚を張り付けていないのは、男の俺がするのはセクハラの様な気がして、律本人と女子一同に頼もうと思ってたからだ」
「確かに、全身に人工皮膚を張り付けたら真っ裸同然だもんね」
「普通に考えたらセクハラだよね」
「だろ?律の服とかは殺センセー先生に頼んだらマッハで用意してくれるだろうし、いざとなったら家庭科が得意な女子が服を作ってくれると信じていたりする」
「「「「「「「「「「何、その無駄に要求値の高い信頼!!?」」」」」」」」」」
「まぁ、取り敢えず。これで律も皆と同じ様に動き回れるって訳だ。んな訳でこれからも宜しくな、律」
「はい。こちらこそ宜しくお願いしますね、イッキさん!」
この後、律本人と女子一同による律義体への人工皮膚の張り付けが終了するまで、俺を含む男子一同は教室から追い出された。
教室を追い出されていた時間はおよそ1時間。つまり、本来やるべき授業が1コマ中止になった訳だ。で、女子一同が律義体に一時的にクラスの誰かの体操服を着せ終えた所で、俺達男子一同は教室への入室が許された。
そして、俺が義体の遠隔操作を可能とする作業を終えたことで、この日から律は人間と何ら変わりのない生活を送れる様になった。
本来、ここでこの日の話はめでたしめでたしとなるんだが、実はこの日の話には続きがある。女子の着替えを覗いてしまった俺は、放課後に女子一同から算盤責めを含む拷問染みた折檻をされたんだ。
いや、覗いた俺が悪いってのは理解してるけど、それでも拷問染みた折檻をされたのはやっぱ解せないと思ってしまう。
後書き
本文に書き忘れていますが、義体を手に入れた律はイッキの家に住み込むことになってます。
詳しくは次話以降に語ることもあると思いますが、主な理由はイッキの家の部屋数が一番多く、居候しやすいからだったりします。
正直、あんまり色気のない理由ですね。(笑)
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