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戦国異伝

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第二百十四話 家康の馳走その十一

「我等はな」
「はい、では」
「すぐにでも兵を起こし」
「この薩摩から攻め上がりましょうぞ」
「その軸はわしと御主達じゃ」
 まさにその四兄弟だというのだ。
「わしも出るぞ」
「では」
「我等も」
「先陣を務めましょう」
 弟達も言う、こうしてだった。
 島津家は出陣を決めた、ここでさらに言う義久だった。
「敵はわかるな」
「はい、龍造寺と大友」
「主な敵はです」
「この二家です」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だからな」
「北に進み」
「そして東の大友、西の龍造寺をですな」
「共に倒すのですな」
「そうする、まずは龍造寺か」 
 義久はこの家を第一の敵とした。
「あの家であろうか」
「何故龍造寺でありますか」
 家久がその家を最初の敵としたか問うた。
「それは」
「うむ、あの家は主の龍造寺隆信が近頃鍋島直茂の話を聞かぬという」
「だからですか」
「あの家は鍋島の話を聞いて動いておる」
「龍造寺隆信が、ですな」
「二人で一つの家じゃ」
 それが龍造寺家だというのだ。
「その両者がそうした状況ではな」
「付け入る隙があるのですな」
「だからまずはじゃ」
「龍造寺との戦ですか」
「大友はその間動かずともよい」 
 即ち攻めずともというのだ。
「龍造寺を倒してからでよい」
「大友は三人強いのがいますし」
 今度は歳久が言った。
「立花道雪、高橋紹運、立花宗茂と」
「そうじゃ、三人おるな」
「はい、九州でも指折りの猛者達が」
「あの三人は強い」
 義久も認めるまでにだ、それが言葉になって出ていた。
「迂闊に手は出せぬ、特にな」
「立花宗茂ですな」
 義弘はあえてこの名を己から出した。
「あの者ですな」
「そうじゃ、まだ若いがな」
「実父が高橋紹運、義父が立花道雪」
 その三人のうちの二人だった。
「二人の父の薫陶を受けており」
「その武は恐ろしいまでのものじゃ」
「三河の本多忠勝殿も天下無双と言われていますが」
「本多殿じゃな」
「徳川四天王の一人の」
「そうであろう、あの者に適う武は他に三人しかおらぬわ」
 義久も語るその口が真剣だ、これまで以上に。
「その本多殿とな」
「真田幸村殿、直江兼続殿ですが」
「槍や弓矢を使う武だけではない」
 立花宗茂の武はというのだ。
「采配も凄まじい」
「その二つを併せ持った武となると」
「この四人しかおらぬわ」
「そうなりますな」
「だからじゃ、まずは龍造寺じゃ」
 その三人がいる大友ではなく、というのだ。
「先にあの家を叩くぞ」
「さすれば」
「肥前まで手に入れられずとも南には進ませぬ」
「では、ですな」
「肥後は完全に手に入れる」
 この国はというのだ。 
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