美しき異形達
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最終話 ピクニックその三
「皆でお弁当たっぷり食べようね」
「山の頂辺でな」
「うん、そこでね」
「友達百人の歌みたいにな」
「そう、あの歌みたいにね」
「皆でお握り食おうな」
薊はここでもお握りを話に出した。
「あれな」
「お握り、いいですね」
桜はお握りと聞いてにこりと微笑んだ、今食べているのはハンバーガーであるが。
「やっぱりピクニックで食べるものはお握りですね」
「そうそう、皆でたっぷり食おうな」
「是非そうしましょう」
「伯爵は食べなくてもいいけれど食べることも出来るから」
菫は伯爵のそのことを話した。
「大丈夫ね」
「だよな、一緒に楽しめるよな」
「そうよね」
「じゃあ皆でラフな格好で山登って」
鈴蘭が言うことはというと。
「景色も楽しんでね」
「山のな」
「それでよね」
「楽しもうな、そっちも」
ピクニックの本来の楽しみの方もというのだ。
「皆で」
「ええ、ピクニックの全てを」
黒蘭も表情と声には出していないが楽しみな感じだった。
「楽しみましょう」
「皆でな」
「少し早い感じはするけれど」
それでもとだ、裕香も期待している顔だった。
「楽しみましょう」
「初秋のピクニックだな」
「そうなるわね」
「まあそれも一興だよ、大体春か秋のいい時にするけれどな」
大体そうした時期がピクニックの時期だろうか、夏や冬といった気候が極端な時にはしない。特に冬の季節の時は。
「九月半ばはまだいいか」
「そうね、まだね」
「じゃあ行こうな」
「そういえば先輩だけれど」
菖蒲が智和のことを話した。
「あの人受験生だけれど」
「ああ、あの人もう大学からスカウト来ているんだったな」
「八条大学医学部からね」
「凄いよな、大学の方からスカウトが来るって」
「入学試験は受けるけれど」
それは、というのだ。やはり受験生は入試試験とは無縁ではいられない。
「それでもね」
「スカウト来るってことは」
「もう合格するだけの成績はあるわ」
「充分にか」
「大学の方も合格確実、しかも入学してからもいい成績だと思うから」
菊も言う。
「それでスカウトしたのよね」
「そうなるよな、やっぱり」
「それって普通ないわよ」
入試を経て入学するからだ、殆どの場合は。
「芥川龍之介は試験受けずに高校入学したけれど」
「ああ、あの作家の」
「あの人はまた抜群の秀才だったから」
それで評判だった、それで一高後の東京大学に入学したのだ。そこから東京帝国大学にも入学して海軍で英語も教えていた。
「あの人と同じね」
「芥川レベルか、あの人」
「あの大学の医学部は凄いのよね」
向日葵は八条大学医学部の話をした。
「あそこは」
「ああ、あの大学医学部と法学部の偏差値凄いんだったな」
「この二つの学部はね」
「他の学部の偏差値は大体五十七から六十三位だろ」
「そう、けれどこの二つの学部はね」
「七十超えててな」
「別格なのよ」
同じ大学でも学部によって偏差値が違う、八条大学ではこの二つの学部の偏差値が際立って高いのである。
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