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エターナルトラベラー

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第四十五話【INグリード・アイランド編】

六課内の一室に俺達と、六課の上層メンバー数人が搬入されたゲーム機、グリード・アイランドを囲んでいる。

「それじゃ、ゲーム機の管理、お願いしますね」

「了解や、そっちも被害者の発見、保護を最優先に動いてや?」

俺の頼みごとに了承したはやてさん。

「もちろんです。未だプレイ中なのは生きている証拠です。…余り動いていないと良いのですが」

「被害者は子供や。子供の体力で行ける所なんて限られてるやろ」

「…そうですね。最初の街まで辿りつけていない可能性もありますね。そうすると二日間何も口にしていないことに…これは急がないといけませんね」

「そやね。そのために食料を申請したんやろ?まずは被害者の体調の回復につとめてや、その後何とかして現実世界へと帰還。出来れば被害者だけを送り出すような事はしないで報告がてら誰か一人くらい同行してもらいたいんやけど」

「了解です」

コクリと頷いて、視線をはやてさんか外しソラ達に向ける。

「それじゃ、俺から行くよ。入ったら動かずに皆が来るのを待ってるから」

「うん、私たちも直ぐに行くわ」

ソラが三人を代表して答えた。

「それじゃ、行こうか」

俺は丁度胸の辺りの高さにある台座に設置されたゲーム機の前に立ち、両手で挟み込むように構える。

「練」

シュンっと言う音と共に俺は六課内から転送された。


転送された空間は、電脳を意識したのか、長時間いれば精神を病んでしまうような感じの装丁の外壁に囲まれた空間だった。

その外壁に一つ扉があり、ソレを潜ると短い距離だが通路が続き、又も扉が設置されている。

その扉を潜ると今度は円柱状の空間に出る。

その真ん中になにやら浮かぶ机のようなものに座って此方を出迎える女性の姿が伺える。

「グリード・アイランドへようこそ」

俺が彼女を視界に捕らえたのを確認して、目の前の女性は話し始めた。

「これよりゲームの説明を始めさせていただく前に、プレイヤー名の登録をお願いします」

彼女は俺に自分の名前を問うた。

俺の目の前の、俺が知っている容姿よりも幾らか成長しているように見える彼女は、俺の知っている彼女だろうか。

いや、俺を知っている彼女だろうか。

「アイオリア…アイオリア・ド・オラン」

今は使うことの無い俺の旧名。

「っ!」

その名前に一瞬反応したのが感じられた。

「その名前でよろしかったですか?」

戸惑いを隠してそう聞きかえす彼女。

ああ、そうか。

彼女は俺を知っているのか。

「アイオリアの名前を知っているんですね?イータさん?」

「…私の名前をご存知でしたか。…貴方は何者ですか?」

一気に警戒レベルを引き上げたイータさん。

「今は時間が惜しいので詳しく話す時間はないので簡単な説明しかできませんが」

「構いません。話してください」

その言葉を聞いて俺は俺に起こった事を簡潔に説明する。

簡潔にとは言ってもそれなりに時間を要したが…

だれが生まれ変わりなど信じるものだろうか。

説明を聞き終えた後、イータさんが問いかける。

「その話を裏付ける証拠は?」

証拠か…

俺がイータさんとの共通の思い出なんかは少ないし、それも誰かから聞いたと言われれば証明のしようも無い。

これからやって見せるのも証拠と言うには一歩劣るけれど…

「ソル、モードクラシック」

『スタンバイレディ・セットアプ』

宝石から展開されるのはいつもと同じ竜鎧。

しかし、いつもは日本刀だったソルの姿が昔の斧の形で展開されている。

「……それは…その念能力は確かにアオ達の物とそっくりね」

念能力は多種多様。大抵の場合同系統の能力は有ってもまるっきり同じものは無い。

「今はこれくらいしか証明できる物は有りません」

「一応、私たちもアイオリアとソラフィアが行き成り消えてしまった後、転生の宝玉については調べたわ。だから、こう言う事もありえるだろうと言う可能性は有った」

「そうですか…」

まあ、目の前で消えたようだものね。

「だから、私は貴方の事を信じることにします」

どうやら完全にとは言わないまでも多少なりと信じてもらえたようだ。

「それで?貴方はここに何しに来たの?私たちに会いに来たとか?」

ここに来たのは必然と言う名の偶然なのだけれど。

「人を探しているんです。二日ほど前に6歳くらいの女の子が来ませんでしたか?」

その言葉にイータさんは少し考えたあと、直ぐに思い出したようだ。

「あの子ね。この世界にある言語には全てに精通していると思っていたのだけれど、彼女の言葉はどれでも無かったわ。話が通じずに結局指輪を渡して送り出したのだけれど…制約(ルール)である以上送り返す事も出来なかったからね」

事故だったにしろ正規のプレイヤーに対して強制退場は出来なかったのだろう。

「迎えに来たんですが何処にいるか分ります?」

「それはエレナの仕事だから、彼女に聞かないと分らないわ。でも、ルール上答えられないかも知れないわね。それに、知り合いだからと言って正規の入場した貴方をゲームマスター権限で送り返す事も出来ないわよ」

むう、自分で探すしかないのか。

「分りました。…それと、ゲーム内の物が欲しかった場合はやはり?」

「あら?欲しいものがあるの?当然だけれども、外の世界で使いたいのならばクリアしてもらう他ないわ」

「うわ、マジですか?まあ、頑張りますよ。昔、俺達が使っていた指輪(セーブデータ)は有ります?」

「貴方達が消えたときに身に着けていた物は何も残らなかったの」

うーむ。まあ、仕方ないのかな。

「だけど、もしも貴方達が戻ってくる事があればクリア報酬に色を付けてやれってジンから頼まれたいるわ」

「それが何か分りませんが、結局は一から全部集めろと言う事ですよね」

集めるのは勿論指定カード100種だ。

「そうなるわね」

うへえ、先は長そうだ。

「ルールについての説明は必要?」

「一応お願いします。忘れている事も有るかもしれませんから」

「了解」

その後、ゲームについてのルールを聞いてからフィールドへと転送される事になる。

「この後ソラフィアも来る予定ですので」

「そうなの?どんな姿になっているか楽しみにしているわ」

その言葉を最後に俺はフィールドへと降り立った。

大地にしっかりと立ち、俺はリンカーコアの魔力素の吸収率を量る。

辺りに魔力素は存在するものの、地球やミッドチルダに比べれば途方も無く薄い。

そのため魔力回復量が通常の20分の1まで落ちている。

小出しのシューターならばまだ良いが、バスタークラスは魔力消費がバカにならないため使用は控えた方がよさそうだ。

命の掛かった場面ではそんな事を言っている場合では無いだろうが…

変な所で予想が当たってしまったが、六課メンバーが出張ってくるよりも俺たちの方がまさしく適任だったといえる。



その後しばらくすると先ずソラが降りてくる。

「早かったね」

「うん。…イータさん、余り変わってなかったからどれくらいの時間が経ったのか分らなかったけれど、10年しか経っていないんだって」

そう言えば、その辺り俺は聞いていなかった。

しかし、だとすると、俺たちの転生は時間軸をズラしての移動だと言う事になる。

俺達がこの世界を去ってから30年。さらに俺達が居た時間軸からは10年経っているのだから。

さらにしばらく待つとようやくなのは、フェイトの順番で合流する。

そうそう、ハンター文字と言語については先立ってソラの念能力、アンリミテッドディクショナリーでインストール済みです。

ハンター文字が読めなければこのゲームをプレイするのは難しいからね。

「それでどうするの?そのリオちゃんを探しに行くんでしょ?どちらに行くの?」

そう、なのはが聞いてきた。

「あまり得策ではないけれど、二手に分かれて近辺を先ず捜索しよう。
子供の体力だし、この世界は魔力素が薄い。そう遠くへは行けないだろう。
俺とフェイト、ソラとなのはに別れて捜索、一時間後に又ここで落ち合おう…広域念話での呼びかけは入って直ぐに試したけれど、衰弱しているのか意識が無いのか応答が無かったから急ごうか」

「了解」「うん」「分った」

俺達は確認を終えると、東西に別れて走り出した。


side リオ

ここは一体何処なんだろう…

右を見ても左を見ても草ばっかり…

ううっ…パパっ…ママっ

行き成り知らない所に移動して…知らないお姉さんが知らない言葉を話していて…

あたし…一生懸命お話したけど…ぜんぜん分ってくれなかったみたいだし…

何となく身振り手振りで名前を聞いているような気がしたから…ちゃんと答えたんだけど…

うぇっ…

そう言えば前にママが『迷子になったら、無闇に動かずその場でじっとしていなさい』って言っていたけれど…

最初のお姉さんがいた部屋も、放り出された先の目印になりそうな小さな小屋もどこにあるか分らなくなっちゃったよぉ

だって怖かったんだもん…怖くて、寂しくて、気が付いたらパパ、ママって叫びながら走っていたし…

途中、大人の人に会ったけれど、分らない言葉で話しかけられた後、あたしを何処かに連れ去ろうとしたと手を引かれたと思ったら凄く怖くて、体から魔力が暴走してしまった…

制御できなかったあたしの魔力は電気変換されてその人を襲った。

その攻撃に驚いた人たちは皆驚愕の表情を浮かべてあたしを見ていた。

あたしは直ぐに謝ろうと思ったけれど、直ぐに魔法で飛んで行ってしまった…

その後あたしは誰とも会っていない。

そのまま夜になり、凄く怖かったけれど、あたしは大きめの石を見つけたから、その石を背もたれにしてうずくまった。

怖い…怖いよぅ…パパ…ママ…

怖くて体をギュっと縮こまらせると、なんか視線が低くなったような気がする…

何が起こったのか分らなくて、あたしは恐る恐る左右を確認すると、そこに見えたのは猫の尻尾のようなものがゆらゆら揺れている。

何だろう?と思って勇気を出して手を出してみようと持ち上げ現れたその手にあたしは絶叫した。

きゃーーーーーっ

叫んだつもりがあたしの耳には「うなーーーーーん!?」と聞こえた事にもショックを受ける。

一体何?と確かめるとあたしの両手が猫のようになっていた。

いや、おそるおそる確かめるとそれは両腕だけではなく…

いやっいやーーーっ

パニックを起こしたあたしが、はっと気が付くと元の人間の手に戻っていた。

夢かな?

夢であって欲しい。

あたしが猫になっていたなんて…


それからのあたしは戦々恐々。

寝たら起きたときにまた猫になっていたらどうしようと目を閉じるのも怖かった。

怖いし、寒いし、お腹すいたし…眠れない、気が付いたら朝だった。

一睡もできなかった。

日が昇ったけれど、あたしはぜんぜん動く気になれなかった。

一日ずっと岩陰で座っていたけれど、誰も助けに来てくれない。

パパも…ママも…

寂しい…怖い…お家に帰りたい…

あたしは空腹も忘れるくらい頭がぐるぐるして、両手をぎゅっとにぎり、目をつむった。

目を開けたらお家に戻っていると思いたかった。

気が付いたらまたお日様が昇っている。

どうやらまた一日過ぎたらしい。

このままあたしは死んじゃうんだ…死ぬのは怖いけど…でも死んじゃうんだ…

だんだん意識も朦朧としてきた。

死ぬのは嫌…まだ生きたい…パパに…ママに会いたい…

うぇ、やだよぅ…

散々泣いて、もう出ないと思っていた瞳からまだ涙が流れてくる。

その涙はあたしの手のひらよりも暖かく感じた。

その時。

「君がリオ・ウェズリーで合ってる?」

あたしの知っている言葉で話しかけられたあたしはその言葉の発生源を捜して力を振り絞って顔を上げた。

side out


ソラ達と別れて捜索し始めた俺達は直ぐに魔法によるサーチを行使する。

『円』を使うよりも生物の特定は不得意だが、範囲は広い上に今の念能力者が多く居るであろう現状では察知されにくい分有用だろう。

魔力の回復が少ない事に不安はあるが、使用魔力もバスターほど食うわけでもない。

とは言え、感知された所へとサーチャーを飛ばすなどして確認する等、結構の消費は有ったが、無駄な争いを避けられたのは大きい。

最初にサーチに触れたのが大人の男性だった事には、一応役目は果たしているだろう。

余計な接触は回避出来た訳だしね。

しばらく走りながらサーチを繰り返していると、未だ草原を抜けない所に生命反応を感知。

すぐさまサーチャーを飛ばしてみるとどうやらビンゴのようだ。

黒髪にリボンの幼女。

事前に貰っていた顔写真と一致する。

「ここから2キロ位だね。幸いこの草原は未だモンスターは出現しない。幸運だったな。…フェイト、飛ばすよ」

「あ、うん」

俺たちは念で四肢を強化して走る速度を加速させる。

2キロなんてものの数十秒だけど、それでも一秒でも早く保護して上げないとな。

全速力で走ると、フェイトを少し引き離してしまったようだが辺りには他に生体反応は無かったから大丈夫だろう。

視界に少女を捕らえて俺は減速する。

急激な減速で負荷が掛かるけれど、念で強化されているから問題はない。

目の前の少女は泣いていた。

無理も無い、今まで外で一人で夜を過ごした事なんて無いだろう。

俺は確認するべく声を掛ける。

「君がリオ・ウェズリーで合ってる?」

少女は俺の言葉に勢い良く顔を上げると、声の発生源を探して見上げた。

「えっ!?あのっ…」

一瞬言葉に詰まってしまったようだ。

「リオちゃんで合ってる?君の名前」

自分の知っている言葉で声を掛けられて戸惑っているようだ。

「…っはい…」

下細い声で泣く様に返事をしたリオ。

「迎えに来たよ」

出来るだけ安心させるように言ったつもりだったのだけれど。

「…っうぁ…うぅ…うああああぁぁあぁぁっぁぁぁあぁぁ」

何処にそんな体力を残していたのかと言う勢いで立ち上がると、俺にしがみ付く様に抱きついて泣き出した。

「っアオ!ちょっと速過ぎるよ、って、え?何?この状況?だっ大丈夫なの?」

遅れてフェイトが到着する。

「うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ」

泣き止まないリオ。

その腕はさらに力強さをまして俺に抱きついた。

俺は彼女が泣き止むまで好きに泣かせてその頭を撫でた。



ようやく落ち着きを取り戻したリオに持ってきていた食料をで軽く食事を取らせる。

その時に秘術のドーピング、神酒を希釈したドリンクも忘れない。

体力回復にはもってこいだ。

…原液で飲んだら死んじゃうかもだけど。

その間にソラ達に念話を繋げ、発見した事を告げる。

大まかに位置を告げると、ソラ達の方から此方に出向いてもらう事にした。

と言うのも安心したのかリオが意識を手放したからだ。

まあ、最初からこんな幼子を連れての長距離移動は難しかったんだけどね。

いま彼女は俺の膝を枕に眠っている。

神酒も飲ませたし、外傷も無い。

体調に関しては問題ないだろう。

後は精神か。

こんな幼い時分で孤独に耐える時間が彼女に与えたストレスはどれ程のものか。

そればかりは俺には治せない。

優しい言葉を掛けてあげるのが精一杯と言った所だ。


合流したソラ達には周囲の警戒をしてもらっている。

まずはリオが覚醒するまで待つつもりだ。


日が中天を過ぎ、傾き始めた頃、ようやくリオが目を覚ます。

「うっ…うみゅ」

「おはよう」

眠気まなこに目を擦りながら起き上がる。

「えっ、あのっ!…おはようございます…」

一瞬ほうけたが、起き上がり、直ぐに現状を確認し、膝枕をされていた事を思い出したのか顔が真っ赤に染まった。

「うん、まあ、もう昼も過ぎているんだけどね。
それより、今自分がどういう状況なのか、俺達が何者か、説明してもいいかな?」

「あ、はい。お願いします」

確りした受け答え。

…、なんだろう。

子供なのにやけに精神年齢が高いね。

最近の子供はコレがデフォルトなのか?

なのはやフェイトも9歳にしてはかなり確りしてるし。

まあ、今はそれはいいか。

先ずはお互いに自己紹介。

俺の後にソラ、なのは、フェイトと続いた。

俺は現状を簡単に説明する。

「ここはゲームの中で、皆さんはあたしを探しに来た管理局の人なんですね」

まあ、管理局員ではないけれど、ね。

「さて、現状確認もしたし、そろそろ移動しないと。日が暮れる前に街に行こう」

「そうだね。夜になる前に宿を取らないと。お金は途中で倒したモンスターのカードを換金すれば一泊くらいなら多分大丈夫」

ソラが同意する。

と言うか、合流するのが少し遅れたように感じたけど、モンスター狩ってたのね。

まあ、お金が無かったからソラに感謝だけれど。

「街ってどっちの方向にあるんですか?」

リオが俺に尋ねてきた。

「あっちだね。ついでにリオが歩いてきた方向と真反対。こっちの方向には街は無いはず…多分」

俺の記憶が確かならね。

「ええ!?あたし、結構歩いてきたと思ったんですけど…今からじゃかなり時間が掛かるんじゃないですか?」

「大丈夫。走れば直ぐだよ」

「走ればって…」

車も無いのに大丈夫なのかとでも言いたげだった。



風を切って走る。

「わあっ!すごい!すごいっ!」

「あんまりしゃべんない方が良いよ。舌噛むかもしれないからね。一応魔法で風圧は軽減させているから風圧で窒息とかは無いけど、衝撃までは全て緩和できないから」

「はーい」

俺の背中から返事が聞こえる。

長距離を移動するに当たって、当然リオには移動する体力も技術も無かったため、俺がおんぶをして走っている。

その速さは公道を走る乗用車並みだ。

「うぅぅっ。いーな、いぃーなぁ」

「なのは、ちゃんと前見て走らないと危ないよ?…うらやましいのは分るけれどね」

「だよねだよね?」

「わたしもお兄ちゃんにおんぶして貰いたい」

なのははもう9歳だし、そろそろそんな物をねだる年頃では無いのでは?とは思ったけれど…

「その内な」

「ほんとっ?約束!ちゃんと覚えておくからね」

「あ、ずるいっ!あのっ…私も…その」

フェイトが控えめにおねだりしてきた。

「はいはい。分ったから、今はちゃんと前見て走りなさい」

「「はーい」」


走ること数十分。

ようやくこのゲームに入ってから初めての街、『懸賞都市アントキバ』に到着した。

直ぐにショップでカードを換金し、俺たちは宿を取った。


部屋はツインで一部屋のみ。

これは襲撃が有るかもしれないから固まっていた方が有用だと言う事と、…単純にお金が無いと言うことだ。

俺は備え付けのイスに座る。

皆思い思いの場所で一息ついている。

リオに視線を向けると久しぶりの軟らかいベッドのスプリングを使ってポンポン跳ねている。

「わー、ふかふか。しあわせー」

その内ごろんとベッドで横になった。

まあ、リオはこれからの打ち合わせに直接的には参加しなくても良いから寝ててもいいけど…

「さて、これからの事を打ち合わせしないとね」

「うん」

「そうだね」

俺の言葉に耳を傾け視線を此方に向けるソラ、なのは、フェイトの三人。

「まず、迅速にリオを送り返さなければならないね」

「うん、そうだね。きっとご両親も心配しているだろうし」

と、なのは。

俺も頷く。

そりゃね。

今も気が気じゃないだろうさ。

「だから、先ずは帰還アイテムのゲットを優先的に行う」

「うん。でもそのアイテムって?何処にあるかアオは知っているの?」

フェイトの質問。

「ああ。何種類の帰還方法があるのか、正確には俺は覚えていないんだけど…ソラは幾つ覚えてる?」

俺の問いに少し考えてから返すソラ。

「二つだけ。
リーブ(離脱)と挫折の弓」

「俺も同じだ。パッと出てくるのではその二つしか覚えていない」

「どうやって手に入れるの?」

なのはが問いかける。

「リーブはスペルカードだから、魔法都市マサドラで買える」

「買えるの?だったら」

「ただし、スペルカードの購入はトレカみたいなものだ。中に何が封入されているかは開けるまで分らない」

「……でも、買い続けていればいつかは出るんでしょう?」

「…残念だけど、そうとは限らない。カード化限度枚数を超えたカードは封入されない」

「と言う事は、すでに限度を超えていて入手できない可能性も?」

「多いにある」

「でも、限度枚数はカードによって違うから、そのリーブ?って言うカードはいっぱいあるかも知れないよ?」

「…ソラ。リーブってどの位だったっけ?」

「…一度も使ったことないから良く覚えていないけど。…40は行かなかった気がする」

「俺もその位だったと記憶している。…もう少し少なかった気もするけどね」

「じゃあ、明日はそのマサドラに行ってカードを買いに行くの?」

フェイトが俺に問いかけた。

「そうなるね。
だけど、行くのは俺一人だ」

「え?」
「皆で行けば良いんじゃない?」

しかし俺はその言葉にNOを突きつける。

「ショップで会ったプレイヤーに聞いたよ。ここ最近PKの数が多くなっているらしい」

ほんと、プレイヤーを見つけるのには苦労した。

いや、視線を感じるからどこかから監視しているのだろうが、接触してくるプレイヤーは皆無だ。

少し強引だったが、気配の隠し方が下手だった一人を脅迫紛いに捕まえて教えてもらったんだけど。

…と言うか、この辺り(最初の街)を拠点にしているだけあって修練の練度が低い…と言うか、良く生き残っているなあと思わずにはいられないほどだったが、そう言ったもの同士のコミュも存在するらしく、それなりに情報には敏感らしい。

「ぴーけー?」

あ、フェイトはそう言った言語はまだ知らないか。

「ゲームでの造語だよ。プレイヤーキル、又はキラー。だからPK」

「まさかっ!人を殺して回っている人がいるの!?」

「そうらしい。だから俺たちはここまでプレイヤーに接触しなかっただろう?PKを恐れて今この近辺のプレイヤーは皆隠れているらしいよ」

それも以前から居たPKとは別種のグループの手口らしいと言う情報もあった。

「だけどここ二、三日はここアントキバ周辺では被害は出ていない。これは単純にそのPKがアントキバを離れたからだろう。そんな中、リオの安全を考えれば全員で行くよりも、護衛と収集に別れるべきだ。
今回は先ず一番重要なリーブ(離脱)の入手が先決だからね。少し無理をする。
だけど、無理をするのは俺だけでいい」

これに対してなのはとフェイトから自分も行きたいと文句が出たが、リオを送り返すまでは護衛優先と言う事で何とか納得してもらった。

まあ、それが終われば本格的にカードを集めなければならないからもっと積極的に動かなくてはならない事も多くなるだろうし、リスクを承知で危険な事に手をださなければなら無くなるかもしれない、そう感じた。 
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