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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦六日目(1)×試合前の全席満員御礼と第三高校から宣戦布告

魔法競技は非魔法スポーツ競技程、性差の影響は大きくない。それでもバトル・ボードやクラウド・ボールのような身体能力が勝敗に影響する競技の存在を考慮して、新人戦も今年から男女別になった。裏を返せば、新人戦が男女別になったのは今年が最初という事なので、名無しである一真も普通なら男子の方に行っているが、技術スタッフでもあるのを考慮して決勝リーグまでは女子の方でやる事となったからだ。ま、学校によって男子選手が偏る事があった。

去年までは男女混合だったから、バトル・ボードやクラウド・ボールは男子と女子は身体能力の影響が小さいピラーズ・ブレイクやスピード・シューティングという棲み分けが出来ていたし、観客が同時開催される男女の競技に分かれるという事もなかった。男子競技と女子競技、どちらの人気が出ているかは観客によって決まる。本戦では例年、一般客は女子の競技に軍・警察・消防・大学などの関係者は男子競技に集まる傾向なのだが、今年の新人戦ではというと・・・・。

「凄い人ねぇ・・・・」

「男子の方は結構余裕があるみたいだがな」

混雑とは縁の無い大会参加者用の観覧席から、ぎっしり満員になった一般客席を同情の眼差しで見詰める少女二人。当然真由美と摩利である。

「何だか随分、大学の関係者が多い気がするけど」

今度は招待客席に目をやって、真由美がそう呟く。

「昨日のアレや名無しのアレを見せられれば、映像記録だけでは満足できないのも当然じゃないか?」

回答した形で、摩利が同意を示した。

「それもそうか。私達も改めて見に来てるんだしね」

コンディションの公平を期す為、試合の順番は昨日とひっくり返されている。大会六日目・新人戦三日目。ピラーズ・ブレイク三回戦第一試合、深雪の登場を待って時計を見ていた真由美だったが、その後の試合は名無しの試合でもある。少し時間を巻き戻しをしようか、俺と深雪に名無し=分身体の俺である三人はピラーズ・ブレイクの控え室に行こうとした所、その前に二人の第三高校生徒がいた。ちなみに俺はブルゾン姿で深雪は制服で、名無しだけは黒の戦闘服を着ている。

いずれも男子で、一人は俺と良く似た体格であり身長も肩幅も変わらない程に見える。最もルックスだけなら相手が上だろうが、今は擬態後なので擬態前だったらルックスはこちらの方が上だ。もう一人はやや小柄だ。戦闘実技を重視する校風故か、ひ弱な印象は無いに等しい。向こうも同時に気付いたのか、俺達に向かって歩いてきた。

「第三高校一年、一条将輝だ」

大柄な方が口火を切ったが、初対面の相手に対するものとしてはムカつく口調だが俺は真顔のまま不快感を覚えないようにしていた。同じ一年生でありながら自然とリーダーシップを取る、リーダーとして振る舞う事が自然体だと思わせる風格があった一条将輝。ま、十師族の者だから自然とリーダーみたいな風格を取るのだろう。そんでその眼は俺と分身体を交互に見ていた。

「同じく第三高校一年の吉祥寺真紅郎です。そちらの名無しさんとは一度会ってますよね?」

小柄な方は丁寧口調ではあるが、挑発的な眼差しで古風な名前を名乗ったと同時に一度会った事はあると言ったので、分身体は無言で頷いた。

「第一高校一年、織斑一真だ。そしてコイツも同じく第一高校の名無しで蒼い翼特別推薦枠を取った者。で?『クリムゾン・プリンス』と『カーディナル・ジョージ』が試合前俺達に何の用だ?」

害意や敵意は感じないし、友好的な態度でもなさそうだ。思う浮かぶ言葉なら、剥き出しの闘志である。俺は、一条と同じく初対面の人間相手に乱暴な言葉である普段通りな態度で応じた。上辺だけの礼儀を取る必要性を感じないし、コイツらの事を弱者だと思っているからだ。

「ほう・・・・俺の事だけでなく、ジョージの事まで知っているとは話が早いな」

「おりむら・かずま・・・・聞いた事が無い名です。ですがもう忘れる事はありません。恐らくはこの九校戦始まって以来の天才技術者。試合前に失礼かとも思いましたが、僕達は君の顔を見に来ました」

「弱冠十三歳にして『基本コード(カーディナル・コード)』の一つを発見した天才少年に『天才』と評価されるとは恐縮だが・・・・確かに非常識だな」

自分勝手な言い草に対して、侮辱を言いに来た事ではないのであえてそういう返答をした。コイツらも織斑家の事を知らない愚か者だそうだな、二人だが。互いが逆上している訳ではないので、敵は意志を持って敵を見据える構えでもあった。

「深雪に名無し、先に準備してこい」

何か知らんが、もう少し相手をしなければいけないような気がしたので目線を動かさずに、深雪と分身体にそう指示したのだった。

「分かりました」

「了解。俺も先に行って準備してるわ」

分身体の声は俺ではなくCB内にいるボイスを基本とした声に設定している。なので俺が名無しだとバレないようにしているので、二人は俺が名無しだとは気付いていなさそうだった。深雪は一礼して名無しと共に、一条達がそこに存在しないかの如く一瞥もせずに控え室へ入った。目を逸らすという素振りもなかったので、自然的な無視であったが、一条の眼は深雪の姿を追いかけながらだったので声をかけた。

「・・・・『プリンス』そっちもそろそろ試合じゃないのか?それと精々決勝で名無しに一本でも氷柱を倒してみせろ」

見間違えの無い動揺と未練を見て取った俺は、気が抜けたかのように呆れていた。その事で一条は、返事が詰まってしまった。

「・・・・僕達は明日のモノリス・コードに出場します」

代わりに応えたのは吉祥寺だった。吉祥寺は新人男子スピード・シューティングで準優勝をした奴で、名無しと戦ったが実力不足で呆気なく負けてしまった。一条も新人男子ピラーズ・ブレイクの優勝候補筆頭ではあるが、各校のエース級を投入してくるモノリス・コードにエントリーしてくるのは、言われるまでも無く予想内だった。ちなみに名無しは三種目も出ているので、これ以上は出れないような形となっているが、未来予知としては俺も出る可能性が出てくる訳だ。

「君と名無しさんはどうなんですか?」

「そっちは担当しないし、名無しは三種目出るのだから出場しないだろう」

問い返してやりたいが、生憎時間もないので丁寧かつ同じ様な抽象的な答えを返した。

「そうですか・・・・残念です。いずれ、君の選手と戦ってみたいですね。名無しさんも出ないという事は、勝つのは僕達となりますが」

一瞬だが喧嘩売ってるのか?と思ったが、この二人は喧嘩を売ってきたのだと思い直した。

「時間を取らせたな。次の機会を楽しみにしている・・・・それとピラーズ・ブレイクは俺が勝つと伝えておいてほしいね」

俺が応えを返す前に、一条がそう告げてから吉祥寺と共に横を通り過ぎようとしていた。なので俺もこう言っといた。

「次の機会なんて言うのは、戦場で言うならお前は死んでいるぞ?」

そう言ってやったので、一条ら二人は振り返ったが既に俺の姿はどこにもなかった。空間切断でセリフを言った直後、深雪がいる控え室に来たのだからな。深雪は更衣室で着替えていたし、名無し=分身体の俺は今回使うのも滅だなと思ったら着替え終わった深雪が来た。

「結局の所、彼らは何しに来たのですか?」

「威力偵察か宣戦布告でも言いに来たんじゃないか?ま、意味はないけどね」

着替え終わった深雪に、既に準備を済ませた分身体がデバイスを深雪に渡した。そんで深雪は感触を確かめていたが、俺に言った。

「まあ確かにお兄様は選手兼エンジニアですから、こちらにいらっしゃる名無し様もお兄様ですから」

「確かに。それにあの二人は魔法科高校の枠を超えて、魔法師の世界に評価を確立させた二人だからな。俺を敵視するのも分からなくはないが、使っている魔法も現代や古式とも違う」

あちらは佐渡侵攻事件に際し、当時弱冠十三歳で義勇兵として戦列に加わり、父の一条剛毅と共に数多くの敵を屠った経験を持つ一条将輝。弱冠十三歳で仮説上の存在だった『基本コード』の一つである『加重系統プラスコード』を発見した天才である。が、二人の人生はたったの十何年程度でこちらは見た目高校生で中身は神様で数千年から数万年生きてきた。人生の先輩はこちらだが、それを知られるのはまだ早いので俺の歳を知っているのは限定されている。 
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