FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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生命を消す者
第三者side
「なんて、寂しい空なんだろう・・・」
とある森の中で、男は寝そべりながらそう呟いた。
シリルたちが去ったエドラスでは・・・
「お~い!レンガもっと持ってきてくれ!」
「しっかしまぁ、大魔王とはよくいったもんだ」
「あっちこっち壊しやがって」
「まぁまぁ」
「とにかく。今は街を再建しないとな」
エドラス王都では、シリルたちが壊した建物の再建を、住民全員が一心に行っていた。
「さ、精だしていくぞ!!俺たちは魔力などなくても、やっていくんだ!!」
「「「「「「「「「「オオッ!!」」」」」」」」」」
「いい具合の活気ですね」
みんなが元気に街を直しているのを見て、エドガジルは安心していた。
一方、エドラス城では・・・
「連れて参りました」
城の中から街の様子を見ていたジェラールに王国軍の兵士が声をかける。
ジェラールが振り返ると、そこにいたのは元エドラス王ファウスト、そして魔戦部隊長だったエルザ、シュガーボーイ、ヒューズ、バイロ、ココたちであった。
「オイオイオイオイ!!ちょっと待てぇ!!」
エドラスの妖精の尻尾では、エドルーシィがレビィに対して大声をあげていた。
「何よ、クソルーシィ」
「確かに、ギルドを引っ越しさせる方法を考えろとは言ったけどなぁ・・・何だよこりゃあ!?」
ルーシィが指を指したところにあるのは、妖精の尻尾のギルド、その下には移動できるように車輪が取り付けられていた。
「人力で引っ張っていくんですか?」
「しょうがないでしょうが!魔力がなくなっちゃったんだから」
マカオの言葉にレビィがそう言う。その間に、ナツがこっそりその場から逃げ出そうとする。だが、
ガシッ
「逃げる気かよ?ああん」
「そ・・・そんな~」
ナツはルーシィに捕まってしまう。
「あ!そうだ!!」
するとナツは何かを思い付く。そして、ナツは魔導四輪に乗り込む。
「こいつで引っ張ればいいんだ!俺の魔導四輪の威力を見てな!!さすが俺、く~!!GO・・・FIRE!!」
魔導四輪でギルドをナツは引っ張ろうとしたが・・・
「ありゃ?」
魔導四輪はピクリとも動かなかった。
「なんですの、あれ」
「魔法が使えない魔導四輪って、荷車より使えないってことよ」
「さすがジュビアちゃん!!賢い!!」
「あんたも使えないってこと」
「ひどい・・・」
ジュビアは相変わらずグレイに厳しかった。
「すみません・・・」
「最初から期待してない!」
「ひどい!!」
ルーシィがナツに間接技を決めながらそういった。
「いいか!とにかくこいつを王都まで運ぶんだ!!配置につけ!!」
「「「「「「「「「「オオッ!!」」」」」」」」」」
「お~・・・」
ルーシィのかけ声にみんな気合いを入れる。ナツは力なく返事をしたが・・・
結局、どうやってギルドを運ぶかというと・・・
「おーエス!!おーエス!!」
人力で引っ張ることにした。しかし・・・引っ張っているのはなぜか男性陣だけ。
「て・・・あの・・・何してるの?」
「ああ!?あたしらか弱い乙女に、こんな重いもん運ばせる気か!!」
「「「「「「「「「「か、か弱いって~!?」」」」」」」」」」
男性陣は思わず声をあげた。しかし、女性陣は聞く耳をもたなかった。
すると、今度はグレイがあることに気づく。
「あれ?シリルは?」
ギルドに復帰したはずのシリルの姿がどこにも見当たらない。全員が周りを見回していると、
「シリルは王子に呼ばれて王都に向かったわよ?」
「「「「「「「「「「ええー!?」」」」」」」」」」
ウェンディにそういわれ、男性陣はがっかりする。少しでも人手が欲しいときに、貴重な人員がいなくなったことに対してのことだった。
「コラァ!無駄話してないできびきび働けー!!」
「「「「「「「「「「ひどすぎる~!!」」」」」」」」」」
妖精の尻尾の男性陣は、仕方なくギルドを引っ張ることにした。
エドラス王都にて・・・
ファウストたちは、中庭に集められていた。
「王都は新たな時代に入った。皆の心は、未来に向かっている。だが、君たちの存在を忘れてしまったわけではない。しかるべき処分を下し、けじめをつけなければならない」
「わかっている」
ジェラールの言葉に、ファウストが答える。
ジェラールはファウストたちの方を振り返る。
「王としてここに宣言する」
魔戦部隊長たちは、皆息を飲む。
「ファウスト・・・あなたには王都よりの追放を命じる。二度と再び、王都に戻ることは許されない」
「うむ・・・」
「そんな・・・」
ファウストはうなずき、ココは残念そうに言う。
「エルザ・ナイトウォーカー」
ジェラールは次にエルザを見る。
「私の許可なくして、王都から出ることは許されない」
「処刑なら甘んじて受ける。好きにしろ」
「いや、民と共に、王都の再建に努めよ」
「!!」
ジェラールの言ったことに、エルザは驚く。
「バイロ、シュガーボーイ、ヒューズ。エルザ・ナイトウォーカーと同じ処分を下す。以上だ」
「「「「「えっ!?」」」」」
これには、ファウスト以外の全員が驚いた。
「どういうことだ!?」
「スゲェつうか、スッゲェ納得できねぇよ!!」
「ん~~、魔戦部隊は、お咎めなしってことかい?」
「一体、どういうおつもりでしゅか?」
魔戦部隊長たちは皆ジェラールに対してそう言う。
「罪を償うのだ」
ジェラールはそう言った。しかし、
「ならばいっそ処刑してくれ!!生き恥を晒すのはごめんだ!!」
「そういうこと、わかる?」
「元より、覚悟はできてるからね。ん~~」
「新しき王よ、これが我々の意志です。汲み取って頂けますかな?」
バイロたちはジェラールに直訴する。
「ならん」
「「「「「!?」」」」」
ジェラールはそれを許さない。
「だったら、私も一緒に罪を償うよう」
ココもエルザたちと共に罰を受けると言う。
「ならん。ココ、お前は己の良心に基づいて動いた。それは気高き行為だ。過去はどうあれ、その行為を無にするな」
「・・・でもぉ・・・」
ココはファウストを見上げたあと、目を潤ませる。
「魔力がなくとも、君たちには人としてのすばらしい潜在能力、そして、知識と経験がある。
それを王都の復興に役立ててほしい。もしもそれが辛いと言うのなら、私が与えうる究極の罰だ」
「それは陛下も・・・いや、ファウスト殿も同じだろう。なぜ一人だけ追放する?」
「そうだよぉ」
「もうよい」
エルザとココがジェラールに言うのを、ファウストが止める。
「しかし・・・」
「達者でな」
ファウストはそう言い、ジェラールの元へと歩み寄る。
「新たな王の、寛大なる処分に感謝する」
ファウストは軽い会釈をし、ジェラールに話しかける。
「別れ際に、あの若者に声をかけた」
「ええ、気づいていました」
ファウストは空を見上げながらその時のことを思い出す。
「結束力・・・」
「ん?」
ファウストの呟きに、ナツが反応する。
「勇気・・・信念・・・私は大切なことを忘れていたようだ」
ナツはファウストの言葉に、黙って耳を傾ける。
「ギルドは・・・楽しいか?」
「ああ!!」
ナツはこの上ない笑顔でファウストに答える。ナツはそのまま、アニマへと吸い込まれていく・・・
「ギルドは楽しいか?・・・そう聞かれたときの、あの若者の笑顔は生涯忘れん。なぜだかはわからんが・・・」
ファウストはそういってジェラールに向き直る。
「では、これにて」
ファウストは次に、ココの方へと向き直る。
「ココ!これからもよく走れよ!」
「!? はい!!」
ココは力一杯の返事をし、ボロボロと泣く。
ファウストはそんなココに背を向けて、その場をあとにする。
次第に小さくなるファウストの背中を見て、ジェラールはあるポーズをする。
それは・・・アースランドで妖精の尻尾の仲間たちに教えられた、【例え姿が見えなくても、例え離れていようとも、私はあなたを見守っている】というサインだった・・・
ジェラールはファウストの姿が見えなくなるまで、そのポーズをして、ファウストを送り出す。
ファウストが見えなくなり、ジェラールたちが城の中に入ろうとした時、
「ジェラール!」
ジェラールの名前を呼ぶ声がして、そちらを振り返る。そこには、シリルが腕を組んで立っていた。
「シリル・・・」
「お前らしい処分を下したようだな」
シリルはジェラールのそばまで歩み寄ってくる。
「ところで、話とはなんだ?」
「アースランドのシリルと、最後に何か話していただろ?何を話していたのか、気になってな」
「別に・・・なんてことのない世間話だよ。そんなことなら、俺はもう帰るぞ?」
「待て!」
シリルが背を向けて帰ろうとしたが、ジェラールがそれを引き止める。
シリルは再び、ジェラールに向き直る。
「・・・お前には、さんざん迷惑をかけたようだったな・・・すまなかった」
「そんなことか。気にするな。俺も・・・何気に楽しかったしなぁ」
暗い顔のジェラールと正反対に、シリルは笑顔を見せる。ジェラールはそんなシリルを見て、本題へと入る。
「もし・・・できるのであれば、お前にも俺と一緒に、国の再建を手伝ってほしい」
「いやだ」
「!!」
ジェラールはシリルのまさかの答えに、驚いてしまう。
「冗談だ。もちろん手伝ってやる。だがな・・・俺はアースランドの俺と約束したんだ」
「約束?」
「あぁ。【ウェンディを大切にな】という約束をな。だから、俺はウェンディを悲しませることはしない。ウェンディのそばにずっといてやるのだよ。
それゆえに俺は、国の再建を最優先にはできん。わかってくれるか?」
シリルの真剣な目を見て、ジェラールはうなずく。
「わかった」
「ふっ。では、俺はウェンディの元に帰らせてもらおう」
シリルは踵を返して、
「おっと、忘れてた」
帰ろうとはせずに、またジェラールを向いて、ジェラールを指さす。
「アースランドの俺が、がっかりするような王にはなるなよ!」
「!!・・・ああ。もちろん」
ジェラールのその答えを聞いたシリルは笑顔でその場から立ち去った。
エドラス王都にて・・・
「てなわけで・・・引っ越し終了!!」
「「「「「「「「「「おつかれっした~・・・」」」」」」」」」」
エドラスの妖精の尻尾の男性陣は、ギルドを王都まで引っ張ったことにより、疲れて伸びていた。
「なんだありゃ?」
「建物が移動してきたぞ」
「おい、あのマークひょっとして・・・」
ギルドが移動してきたことに驚いた住民たちは、みんなして妖精の尻尾の方を見る。
「王都の皆さ~ん」
「「私たちは妖精の尻尾」」
「よろずトラブル解決しますわ~」
「金額は応相談」
「今なら新装オープン記念で格安!」
「よろしくー!!」
女性陣は営業スマイルで王都の人たちに呼び掛ける。
「おお、そりゃあ助かる!」
「大魔王に屋根壊されちゃってさぁ、直してくれる?」
「レンガ数が足りねぇんだ。レンガを焼くの手伝ってくれる?」
「「「「「「「「「「喜んで~!!」」」」」」」」」」
次々と殺到する依頼に、女性陣は笑顔で答える。だが、それを聞いた男性陣は・・・
「屋根直せとか言ってんぞ・・・」
「レンガを焼けってのもあんぞ・・・」
「鬼だ・・・」
青ざめていた。
「さぁ!!稼げ!!」
「「「「「「「「「「惨すぎる~!!」」」」」」」」」」
男性陣はあまりの人使いの荒さに、涙を流していた。
「よし!!じゃあやるぞ!!」
「「「「「「「「「「て!!お前はいつのまに来たーー!?」」」」」」」」」」
一人だけ遅れて現れたシリルに、思わず突っ込む妖精の尻尾。結局、男性陣は動けなくなるまで働かされた・・・哀れ・・・
一方、アースランドのマグノリアでは・・・シリルside
「ま・・・マジかよ・・・」
「おめぇ・・・生きてたんか?」
皆さん、リサーナさんを見て騒然とする。そりゃそうだよね。俺たちも驚いたんだから。
「うん」
リサーナさんがうなずくと、
「「「「「「「「「「リサーナ!!」」」」」」」」」」
「汚ねぇ手で触んな!!」
それを見たギルドの皆さんがリサーナさんに抱きつこうとし、エルフマンさんに殴り飛ばされる。まぁ、普通そうなりますよね~。
「よかった~。ギルドがちゃんと元のままで」
「なるほど。アニマのことも全く知らねぇようだしな」
「とにかく、無事で何よりだ」
「イカれてるぜ」
「これが魔導士ギルド・・・」
ルーシィさんたちは、ギルドが何ともなってなくてひと安心のようだ。
リリーはギルドの人たちを見てなんか驚いてるなぁ。ギルドは初めてだからかな?
「リサーナ!」
すると、リサーナさんにマスターが近づいてくる。
「あ!マスター!!」
「信じておったぁ」
「え?」
マスターの言葉に、リサーナさんは困惑する。
「ギルドで育った者は、皆ギルドの子じゃ」
「っ!!」
「子を心配しない親がどこにいる?そして子を信じない親がどこにいる?事情は後で、ゆっくり話してくれればよい。ナツたちもな」
「ああ、じっちゃん!!」
「とにかく、よう帰ってきた」
マスター・・・いいこと言いますね。
「マスター・・・帰ってきたんだよね・・・私・・・帰ってきたんだよね?」
「そうじゃよ。ここはいつでも、お前の家じゃ。
おかえり、リサーナ」
「「「「「「「「「「おかえりー!!リサーナ!!」」」」」」」」」」
みんなにそう言われ、リサーナさんは泣いてしまう。
「ただいま!!」
「ごぱっ!!」
リサーナさんは嬉しさのあまり、マスターに飛び付く。マスターはその勢いで、柱にぶつかってしまった。
「ひー!!マスターが!!」
「リサーナさん!!落ち着いて!!」
ルーシィさんとウェンディがあまりのことに驚愕している。けど・・・リサーナさんは全然気づいてないな。
リサーナさんは号泣しながらマスターに頬擦りしている。
「す・・・好きなだけ泣け。宴の前にな・・・」
リサーナさんはしばらくそのまま、マスターの胸の中で泣いていました。
「「「「「「「「「「かんぱ~い!!」」」」」」」」」」
「おかわりの方はいますキナ?」
「キナナちゃ~ん!!」
「こっちも頼むわ~!!」
「一緒に騒ごうよ~!!」
リサーナさんが泣き止んだあと、ギルドでは大宴会が始まった。
「なんかギルドも変わってるし、ミラ姉も雰囲気変わってるけど」
「そう?」
ミラさんは昔、“魔人ミラジェーン”って言われてたらしいですからね。昔のミラさんを逆に見てみたいなぁ・・・エドラスだとこっちと変わんなかったからなぁ。
「やっぱり妖精の尻尾は妖精の尻尾だね」
「リサーナ」
リサーナさんを呼ぶ声が聞こえ、リサーナさんはそちらを向く。
「めでてぇ日だぜベイビー」
「本当に無事でよかった」
「おかえり、リサーナ」
リサーナさんのことを呼んだのは、フリードさん、ビッグスローさん、エバーグリーンさんだった。
「雷神衆!!ギルドにいるなんて珍しいね」
「あ~ら、そんなことないわよ。だって私こそが妖精ですもの!」
「何か髪型変わってる!?」
ルーシィさんの突っ込むとこそこ?自分で妖精とか言ってるとこには突っ込まないの!?
「じと~・・・」
「わ!こっちも!?」
「雨?」
今度はジュビアさんが現れた。確かに髪型変わってますね。でも、なんか暗いけど・・・どうしたのかな?
「じと~・・・」
「ジュビア、どうしたのかしら?」
「元気ないみたいですね」
「なんででしょうね?」
ジュビアさんは柱の影から何かを覗いている。その先にいるのは、グレイさんとカナさん。
「おめぇ、向こうじゃ・・・ブッ!ダメだ!思い出すだけで」
「はっきり言ってよ~!酒がまずくなるじゃない」
「ジュビア、エドラスに行きたい・・・」
「そういうことか・・・」
「なるほど・・・」
そういえばエドラスのジュビアさんは髪の毛を巻いてましたね。それにあやかってみたんでしょうか。
というか、その脇でピスカさんとアルザックさんも「エドラス行きたい」的なこと言わないでくださいよ。どっちかが頑張ってコクればいいだけなのに・・・
「やっぱギルドは最高だぜー!!」
「あいさー!!」
ナツさんとハッピーはいつも通りの暴れっぷりですね。
「ああ!やかましい!!」
「暴れんじゃねぇよナツ!!」
「向こうのナツもこんな感じなのかな?」
「ご愁傷さまなことキナ」
ナツさんを見てギルドのみんながそう言う。でも、実は違うんだよな~(笑)
「あははっ。それがね・・・「ぼ、僕・・・ルーシィさんにいじめられて・・・」みたいな?」
「何それうける!!」
「見てぇ!!そのナツ超見てぇ!!」
「腹筋が・・・いたい・・・くくっ」
「笑えるキナ」
「俺は見せもんじゃねぇ!!」
ギルドのみんなはそれを聞いて大爆笑。おまけに乗り物に乗ると性格変わるしね。もう、色々違いすぎ!!
「さ・・・騒がしいギルドだな・・・」
「第一印象はみんな同じなのね」
「楽しいとこだよ」
「すっごい賑やかでしょ~!!」
少し離れたところでリリーたちがそんな話をしている。まぁ、楽しいとこではあるよね。
「ここにいる者全員が、体内に魔力を持っているというのか・・・ゴクリ」
リリーは額に汗を浮かべて言う。エドラスじゃあ、みんな体内には魔力を持ってないからね。そりゃあビックリするかな?
「そうだ。それがアースランドの魔導士」
「エルザ!!」
エルザさんはリリーの隣に立つ。
「そーいえば、あんたエドラスじゃエルザと同僚だったのよね?」
「シリルもそうなんでしょ~?」
「また一緒だね」
シャルル、セシリー、ハッピーが言う。エドラスの俺は、洗脳された仲間だったからなぁ・・・リリー的にはどうなのかな?
「しかし、大切なのは魔法そのものではない。魔法を持つ者の心・・・そうだろ?リリー」
「別人とはいえ・・・一人でも知ってる顔がいると、落ち着くもんだな」
「二人でしょ?俺もいるんだから」
「お前はほとんど別人だ!!」
「向こうのシリルは男だったもんね」
「俺も男だから!!」
リリーの緊張をほぐそうと思って近づいたら、結構気にしてること言われたよ・・・でも、エドナツさんが言ってたもんな。きっとかっこよくなるって!!それまで我慢我慢。
「コラァ!!火竜!!ガキ!!小娘!!俺のリリーと青猫、白猫、茶猫勝負させろやぁ!!」
「あ?」
ガジルさんが暴れながらこっちに来ましたね。
「あんたらもエライ奴に目ぇつけられたわね」
「あう・・・」
「勘弁してよ・・・」
俺とウェンディはなんとも言えない顔になる。セシリーたちは戦うための猫じゃないですからね?
「望むところだぁ!!」
「ギヒ」
「望まないでよ」
「言っておくが、俺のリリーは最強と書いて最強だぜ!!」
「ハッピーは猫と書いて猫だぞこのやろう!!」
二人はメンチをきりながらそんな話をしている。でもそれ・・・普通だから・・・責めて最強と書いて最強ぐらい言ってくださいよ・・・
「あのさ・・・オイラ一瞬で負けちゃうよ?」
「だらしないわね・・・やる前から諦めてどうすんの?」
「今ならリリーもミニマムサイズだから勝てるかもしれないよ~?」
「オイラ、期待されてる!!」
ハッピーはシャルルとセシリーに言われて嬉しそうな顔をしている。でもさぁ・・・やめた方がいいと思うよ?
「よせ・・・こう見えて、向かうでは師団長を任されていた。無駄なケンカは、ケガするだけだ」
「そういえば・・・」
リリーに言われてハッピーは青ざめる。リリーがまともな奴で助かったな、ハッピー。
「意外と大人なんだな」
「奴等が幼稚なだけでは?」
リリーの言う通りだね。
「仲良くやろうぜ。ハッピー、シャルル、セシリー」
「リリー!!」
「よろしくね~!!」
「フン!」
「ほっ」
リリーたちが仲良く挨拶しているのを見て、ウェンディはほっとしていた。正直なことを言うと、俺もほっとしてるけどね。
「・・・で、なんで本人たちがケンカしてんのよ」
「グレイとエルフマンまで混ざってる」
「やれやれ~!!」
いつのまにかナツさんたちは殴り合いのケンカをしていた。ジュビアさんも服を脱いで参加しようとしたけど、ルーシィさんに止められてたりする。
なぜかフリードさんやビッグスローさん、おまけにナブさんまで参加しちゃって・・・俺も行こうかな?冗談だけど。
「ああ・・・皆さん落ち着いて」
「やっぱりこうなるのよね・・・」
「妖精の尻尾はこうでなくっちゃ!」
「見てる分には楽しいですしね!!」
ウェンディとルーシィさん、リサーナさんと俺たちはそんな会話をしながらケンカの様子を見ている。
「ところでナツ」
「ん?」
マスターはケンカをしているナツさんを呼んだ。
「エドラスのワシは、どんなんじゃった?」
「エドラスのじっちゃん?」
「反対の感じじゃろ?気になるの~」
あれ?エドラスのマスターなんか出てきたかな?全然記憶にないぞ?
「う~ん・・・そういやぁ・・・」
ナツさんも頭を抱えてるなぁ・・・
「あ!待てよ・・・」
するとナツさんは何かを思い出したような顔をする。え?誰だ?
「お!そっか!!」
「ん?なんじゃ?」
「もしかしたら、王様やってっかもな」
王様・・・って!もしかしてファウスト!?言われてみれば、声が似てたような・・・
「じゃあ俺はどうよ。向こうの俺はどんなだった?)
続いてギルダーツさんが聞くけど・・・ギルダーツさんもいなかったような・・・
「いやぁ・・・ギルダーツは、名前も出なかったな・・・ひょっとしたら、カエルとか魚だったかもしれねぇ」
「ひでぇ!!」
さすがにそれはないんじゃ・・・いや・・・もしかしたら・・・いや、やっぱりないな。と、思いたい。
その後、ナツさんは再びケンカに参加して、みんなで大暴れしていた。
その日は騒ぎに騒ぎまくってしまい、俺たちはギルドで眠ってしまった。
次の日、ルーシィさんの頬が腫れてたけど・・・どうしたのかな?
その頃・・・第三者side
「けしからん!!なんじゃこの始末書の量は!!」
「これが全て一つのギルドが起こした問題だというのか!?」
「妖精の尻尾・・・先代からの頭痛の種だよ」
評議院では、現在、妖精の尻尾のあまりの行いの悪さに、会議が行われていた。
「それほど角を立てることでもなかろう。バラム同盟の六魔将軍を壊滅させた労はある」
一人の議員が妖精の尻尾を弁護するが・・・
「評議院が作戦を許可したという記録はないぞよ」
「地方ギルド連盟の独断で行われてますな」
「厳密に言えば、たとえ闇ギルドといえど、ギルド間抗争禁止条約に反しておるわい!」
「さらに、この件により、バラム同盟の正規ギルドへの報復もありえるぞ」
「いや・・・それはないな。奴等は同盟といっても単なる不可侵条約にすぎん」
オーグ老師の意見は、他の議員によって真っ向から否定されてしまう。
「それよりも、奴等はジェラールを“仲間”と言ったなどという報告まで入っておる」
「危険な思想を持っておるな」
「我々評議院は新しくなった!!何が新しいのか、国民に示さねばならん!!」
一人の議員が机を叩くと、評議院議長、グラン・ドマが立ち上がる。
「失われた信頼を取り戻すために、問題のあるギルドは厳しく取り締まるのじゃ。
妖精の尻尾に次はない!次はギルドを解散させる!!」
その言葉を聞いて、評議院たちは盛大な拍手をする。
「ラハールとドランバルトを呼べ!!全ては、魔法界の聖なる秩序のために!!」
「「「「「「「「聖なる秩序のために!!」」」」」」」」
その会議を、部屋の外で盗み聞きしていた男がいる。
「はっ!やっぱり・・・こいつらは甘ぇなぁ。だからダメなんだよ」
男は評議院の服を着ていない。つまり、侵入者である。
その男が部屋の前に立っていると、二人の男がこちらに歩いてくる。
「あれが、ラハールとドランバルト・・・ね」
男はその場から距離を取り、二人にバレないように隠れながら様子を伺う。
「どっちかが、ギルドに潜入するんだろうなぁ。はっ!おもしろいじゃナァイ!!精々内輪揉めでもしてろ。その間に・・・俺はあいつから魔法を手に入れる」
男はそういって、評議院をあとにし、己の所属しているギルド・・・悪魔の心臓へと帰っていった。
とある森にて・・・
満月の夜、森で寝そべっていた男は、近くの小川で喉の渇きを潤していた。
「!」
「グルルルル」
その男は、いつのまにか周りを狼の大群に囲まれていた。
「僕に近づいてはいけない」
男は、少しずつ距離を詰めてくる狼たちにそう言う。狼たちは、そんなことなどお構いなしに近づいてくる。
「よすんだ・・・僕は君たちの敵じゃない」
男は手を前に出して、狼たちを説得する。だが、狼たちは、一斉に男に飛びかかり・・・
ドサッドサッドサッ
地面へと倒れ込んだ。
「ダメなんだ・・・僕に近づいては・・・ごめんね」
男は死んでしまった狼たちに謝罪する。
「僕は誰の命も奪いたくないのに・・・世界が僕を拒んでいるんだ」
男の周りでは、木々が枯れ、鳥たちが力をなくして落ちてきた。
「ナツ・・・早く合いたいよ・・・」
男は寂しそうに、そう呟いた。
後書き
いかがだったでしょうか。
次回からは、それぞれの思惑が交錯する天狼島編開始です。
次回もよろしくお願いします。
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