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魔法少女リリカルなのは!?「Gの帝王」

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四匹目《動き出す運命》

 
前書き
ども〜

ではよろしくお願いします。 

 
「隆文君? 肩に何かついてるよ? 取って……あれ?……こ、これってご、ギキゴキキキ…………」

「ごめんすずかちゃんこの子はここが定位置なんだ。だから放っておいてあげて? ん? どうしたの? 」

「隆文君ってその……どうしてじ、Gと触れ合えるの? わ、私はちょっと……無理かなぁ〜って」

【何よ!? どういう意味!? 私が汚いって言うの!? ううっ……酷い……毎日菌が少しでも減るように身体洗ってるのに…………】
「え!? どうやって!? 僕初耳だよそんなの!? 」

「え……私Gが平気なんて言った……っけ? 」
「隆文君ど、どうしたの? 急に……。と言うかすずかちゃん、多分隆文君独り言だよ。隆文君って定期的に独り言がデカイよね? なんか怖いの…………」

隆文はGと話をする事が出来る。しかしそれは他の人に聞こえる訳じゃないのだ。だから隆文がGと話す時、それは周りから見れば独り言を言っているようにしか見えない。よって隆文にあまり人が寄らないのはこの所為もあるのだ。だがそんな事を気にしてGと話すのをやめる隆文ではない。例え自分が嫌われてもG達との絆を優先するのだ。

【え〜とねぇ〜お台所の食器が漬けてある洗剤入りの水にダイブする? かな? なんか取れそうじゃない? 】
「花ちゃんダメだよ!? それ一歩間違えたら死ぬから!? 花ちゃん達洗剤弱いんだから、もう絶対やっちゃダメだよ? いい? 」

【う、うん……ごめんなさい。でも……隆文お兄ちゃんの肩に乗せて貰うなら綺麗な方が良いだろうなと思って…………】

「良いんだよ花ちゃん。僕は気にしないからさ。それより花ちゃんがいなくなる方が僕は寂しいよ? っ!? ……み、みんな? 」

「た、隆文君……花ちゃんって……誰? どこにいるの? 」
「隆文? 悪い事言わないから病院に行った方が良いわよ? 」

「ホラーだよ!? 隆文君にしか見えない誰かがいるの!? 」

隆文の顔はしまったと言わんばかりの顔をしている。今隆文の前では3人の友達がそれぞれ頭を悩ませている。すずかは首を傾げ、花ちゃんと言う単語を頼りのその子を探す。アリサは隆文が幻覚でも見ているかのように思い、心配して病院を勧め、なのはは幽霊やホラーの類と思い自分を抱えて震えだした。他のクラスメイトにしても完全に顔を引きつらせ引いている。
流石の隆文も全員にそんな顔で見られては泣きたくなるようであった。そして放課後、帰り道で隆文はゴキ兄に呼ばれ、ある場所へ案内される。どうやらゴキ兄は隆文を探していたようでえらく急いでいる様子だった。しかし実際着いたのはコンビニ。隆文は首を傾げる。意味が分からないのだ。ひたすらここで待てを言われ、隆文はコンビニの入り口付近で待つ。いくら隆文がゴキ兄に事情を聞いても答えようとはせず楽しそうに笑っていたのだ。だがその5分後隆文はゴキ兄がこの場所に案内した理由とえらく楽しそうにしていた理由を思い知る。何故なら隆文が外で何も知らずに待っていた時、実は中ではフェイトが買い物をしていたのだ。そして買い物を終えたフェイトがコンビニを出た時、2人の目が丁度あった。隆文もフェイトも互いを認識した瞬間見つめ合いながら固まる。

【ゴキ兄どういう事!? なんであの女がここいるの!? と言うよりどうして隆文お兄ちゃんをあの女の所に案内したの!? むぅぅ、むぅぅ、むぅぅ!! キーッ! 何見つめ合ってるの!? むぅぅ、むぅぅ、むぅぅ】

【まぁ〜落ち着いて聞きや花? 隆文にも春が来たんやで? 背中押してやらな? 】

【それによって私の春が過ぎるよ!? 】
【じゃかしー! どっちにしたってお前と隆文はくっつきようがないやろうが!? いい加減諦めろや! 】

【うわぁぁぁぁん、ゴキ兄のばがぁぁぁ】

「隆文……だよね? また……会えた」

「う、うん……テスタロッサ、さん」

2人はしばらく見つめ合っていたがフェイトが話を切り出した事で2人の時間は動き出す。相変わらず花は【むぅぅむぅぅ】と唸っているが、2人には関係のない事。何故ならもう2人の空間は独自の空間が出来上がっており、そこへは誰も介入できない。分かりやすく言えば甘ったるい雰囲気であろうか。今まさに恋が始まりそうな、そんな空気だ。
しかしいつまでもここにはいられない。2人は近くの公園へと移動した。勿論、花とゴキ兄も後をつけて同行する。だがフェイトはそれには気づいていない。

「あ、あの……テスタロッサ、さん? 」
「いいよフェイトで。私はもう隆文って呼んでるし……ダメ……かな? 」

「そ、そそそそんな事……ない……よ? その……フェイト、ちゃん? 」

「ふふふ、まだぎこちないよ? 」
「う、うん。そうだね、あはは」

【甘い……甘過ぎるでぇ〜? くぅ〜羨ましいで隆文? 俺も恋したい……よし! 花? 俺となんてどうや? 】
【寝言は寝て言え、中年ゴキブリ!? ゴキ兄の所為でぇぇ。隆文お兄ちゃんが、隆文お兄ちゃんがぁぁぁ】

【中年……ゴキブリ……フ、フフフ……俺はどうせ誰にも愛されない中年のGさ。泣かない…泣かないぞ? 俺は孤独な一匹虫さぁぁ……うわぁぁぁぁあああああああああああ!! 】

【ケッ! いい歳して泣くなや】

この世の中、G達にもモテるモテないという概念が存在する。その中でもゴキ兄はもう人間の歳にして30後半。だからこそゴキ兄はモテない。理由は簡単だ。ここまで生きてるGは中々いない。つまりゴキ兄はいきおくれなのだ。周りは若い子ばかり。花にしたって、身体は普通のGと同じだが歳は隆文よりも下。花が隆文をお兄ちゃんと呼んでいるのはこの為だ。ゴキ兄にとって恋とは夢、彼女とは遠き理想。だからゴキ兄に中年という言葉はタブーであり著しく心を傷つける。現に花にそう言われてゴキ兄は泣いてどこかへと走り去ってしまった。

「ね、ねぇ隆文? ちょっと聞きたいんだけど……これ知らないかな? 」

「それ……何? 宝石? 」

「うん、そんなような物。見たことない? 」

「う〜ん……ごめん……ない…………」
「あ!? いいの、気にしないで!? ごめんね変な事聞いて(魔力の反応もないし、念話も届いてない。という事は隆文には魔法の資質はないんだ…………)」

フェイトが隆文に見せたのはひし形の青い宝石のような物だ。フェイトはこれを探している。ただ、隆文にはあるないに関わらず念の為に聞いただけだったのだが、隆文が思いの外落ち込んでしまいフェイトは焦った。フェイト自身もどうしてこんなに焦っているのか分かってはいない。だが隆文に嫌われたり、少しでも悪く思われるのはフェイト自身、嫌だと感じているのだ。

「隆文? よ、良かったら……うちに来ない? 」

「え? フェイトちゃんのお家? で、でもいいの? 迷惑じゃ……」

「迷惑なんてそんな……是非とも、来て欲しい……かな? 」
「……い、行きたい! お邪魔します! 」

【な、なななななぁぁあああああああああああ!? 隆文お兄ちゃんが!? 隆文お兄ちゃんが寝取られる!? 私の隆文お兄ちゃんが!? ぬぐぐぅぅ……あの女ぁぁ……許すまじぃぃ、許すまじぃぃ】

一匹嫉妬に狂う黒光りするG、もとい花なのだが。その身体からはドス黒いオーラが滲み出ている。フェイトの方をジッと見つめ、殺気でも飛ばすかのように唸っている。花は隆文がフェイトの家に誘われたのが気に入らない。花は感じ取っているのだ、フェイトが隆文に惹かれているという事に。だが花にはどうする事もできない。それを阻止したくても相手は自分よりも何倍も大きい人間。よって阻止もできないし、そんな事をすれば隆文にも嫌われかねない。だから花は嫉妬をたぎらせながら隆文達の後をつける。

「あ! おかえりフェイト……げ!? しまっ!? 」

「い、犬が……犬がしゃべ、喋って……て…………」
「お、落ち着いて隆文!? 平気、平気だから!? この子は私の使い魔で」

「フェイト、それも言ったらマズイんじゃないのかい? 」

「あ! ち、違うんだよ隆文!? 私は魔導師なんかじゃ」
「フェイト、落ち着きなって? どんどん墓穴掘ってる」

「あうぅぅ……あれ? 隆文? 隆文? え!? ちょっ!? 隆文!? 」
【隆文お兄ちゃん!? 】

隆文は色々受け止めきれずに倒れてしまった。こう見るとなんてメンタルの弱い男なのだろうか。しかし突然犬が喋り出し、目の前の女の子が突然電波的な事を言い始めれば倒れても当然なのかもしれない。他から見ればGと喋れるくせに何を言っているんだと言われかねないが、それは小さい頃から当然の事だった為、今更おかしい事だとは隆文は思わないのだ。
そして数時間がたった後、隆文は目を覚ました。だが隆文は起きて見える筈の天井を見れ無かったのだ。何故なら隆文が起きて最初に見たもの、それはフェイトの顔だった。隆文は今、フェイトに膝枕をされている。隆文は焦った、と言うより固まってしまったのだ。自分が可愛いと思っている女の子が自分のすぐ目の前で自分の顔を覗き込んでいる。となれば驚きと緊張で固まらない筈はない。

「あ、起きた……大丈夫? 」

「う、うん……だ、大丈夫」

「顔赤いよ? 熱でもあるんじゃ」
「っ!? 」

フェイトは隆文の顔が赤い事が気になり、熱でもあるのではないかと考えた。そして、隆文のおデコに自分のおデコをくっつける。隆文の状態はと言えば軽く放心状態で茹で蛸だ。フェイトもフェイトで天然な為全く隆文の心中が分からない。おデコを離し、「やっぱりあついよ? 」と言い始めているのだ。しかしその近くでは花が嫉妬に狂っていた。ブツブツと何かを言っている。だが隆文以外には聞こえない為、誰もその言葉を聞く事はない。例えそれがどんなに危ない言葉だったとしても。

「ごめんね隆文……驚かせちゃったよね」

「あ、大丈夫!? 僕なら全然平気だから!? 」

「本当? 」

「う、うん……勿論、だよ」

【あの金髪殺してやるあの金髪殺してやるあの金髪殺してやるあの金髪殺してやるあの金髪殺してやるあの金髪殺してやるあの金髪殺してやるあの金髪殺してやるあの金髪殺してやるあの金髪殺してやるあの金髪殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺して………】

花はもうすっかり病んでしまった。しかし隆文はフェイトに夢中で気づいてない。そして当の本人であるフェイトも勿論知る術は持たない。フェイトがGの言葉を理解できる事はなからだ。だが知るも知らないも、花が危害を加える事もないのだ。ただのGである花には何もできないからだ。もし向かっていけば確実に殺される。しかしそんな事は花も分かっている為手は出さないのだ。でももし花が人間であったならフェイトの命は危うい物になるかもしれない。

「ね、ねぇ隆文? あ、あの……っ!? 」

「フェイトちゃん? どうしたの? 」

「ううん、なんでもないよ。ごめん隆文。用事が出来ちゃった。これから出掛けるから……その……ごめん、ね? 」
「なんで謝るの? まぁ〜いいや。それじゃ僕は帰るよ。色々ありがとう、楽しかった。また……来てもいい? 」

「……う、うん。私も……また来て欲しい」

隆文の言葉、「また来てもいい? 」。その言葉を聞き、フェイトは今まで感じた事のないほど胸が暖かくなった。だからフェイトも自然に笑顔が溢れる。フェイトにとって、家族以外の人間とここまでふれあい、話をするのは初めての事だ。故にフェイトはこの感情を知らない。今隆文に抱き、感じている感情を知らないのだ。
そしてここにも自分の感情の理由が分からない人が……いや、Gが一匹存在する。それは花だ。彼女は戸惑っていた。隆文以外の人間は嫌いである花。だがここまで人間に殺意という物を抱いた事はない。自分がフェイトに抱いているこの感情が隆文への恋心による嫉妬からくる物だと花自身は分からないのだ。ただただ、目の前のフェイトが邪魔なのである。彼女がいれば、確実に隆文は自分への興味を失う。下手をすれば忘れ去られてしまうのではないか。花は今不安にかられていた。勿論、隆文に限ってそんな事は絶対にない。だが花はその不安を抑えられない。自分の感情を知らないからだ。
そしてフェイトの家からの帰り道。花は隆文とは帰らず一人で道を歩いていた。

【隆文お兄ちゃん……私の事嫌いなの? 私なんてどうでもいいの? 私が虫だから? ゴキブリだから? 汚いから? おかしいな……今まで隆文お兄ちゃんは私に沢山構ってくれたのに……あの女がいると全然構ってくれない。私を見てくれない。それはどうして? 私が人間じゃないから? それじゃ……どうすればいいの? 私は人間にはなれない。一生虫。一生ゴキブリ。生まれがそうだから何も変わらない。どうすればどうすれば……あはは。そっか……私じゃダメなんだ。私は隆文お兄ちゃんの側にいられないんだ。人間じゃないから……人間って何? 神様……私……人間になりたかった…………】

花は夜空を見上げそう言った。まるで神様にお願いするかのように。しかし花は気づかなかった。今花の後ろに青く光るひし形の宝石が浮いているという事を…………
 
 

 
後書き
次回もよろしくお願いします。 
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