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美しき異形達

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第五十五話 最後の戦いその十三

「苦手なんだよな」
「そういえば薊ちゃんお料理は」
「今までしたことないわよね」
「そちらは」
「ああ、あんまりな」
 そうだとだ、薊は仲間達に苦笑いで応えた。
「作ったことないんだよ」
「お握りとかも」
「それもなの」
「作ったことがなかったのね」
「そうだったのね」
「握る位はしたことあるけれどな」 
 それでもだというのだ。
「作ったことは殆どないんだよ」
「料理か、私もね」
 伯爵が言うには。
「食べないからね」
「あっ、そうなのかよ」
「そうだよ、私は食べる必要がないのだよ」
「それはまた凄いな」
「不老不死だからね」
 それ故にというのだ。
「食べる必要がないからこそ」
「それは残念だな」
「残念かな」
「だって食って味わうことがないんだろ」
「不老不死になってからはそうだよ」
「食うことって楽しいのにそれが出来ないからな」
 薊は伯爵に顔を向けてだ、言うのだった。
「それじゃあな」
「残念か」
「食うことは出来るんだよな」
「出来ることは出来るよ」
 食べる必要はなくともというのだ。
「それも美味しくね」
「じゃあ食うかい?」
「そうしようかな」
 こう言ってだ、そのうえで。
 少女達は屋敷を出た、そのうえで。
 その日常に戻った、何もかもがあるその世界に。


第五十五話   完


                          2015・3・29 
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