美しき異形達
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第五十五話 最後の戦いその七
「今こうしている間にもね」
「ではこの戦いでも」
「この娘達は勝つよ」
自分の娘達を見ている言葉だった、明らかに。
「間違いなくね」
「そして私は」
「これ以上はね」
「この娘達に手出しは出来ない」
「この娘達の子孫にも、そして」
「人造人間を卿が言う粗末な扱いですることも」
「出来ないよ」
そうしたこともというのだ。
「組織の決定だよ。人造人間は人間だよ」
「そう決まったんだね」
「そうだよ」
「やれやれ、決まったんだね」
「卿が組織の会合に出ていない間にね」
そのことも決まったというのだ。
「卿にとっては残念かも知れないけれど」
「見解の相違だね。人は人のお腹から産まれるものだよ」
この観点からなのだ、教授が人造人間を人間だと考えていない根拠は。こうした見方も確かにあることにはある。
それでだ、こう言うのだ。
「人造人間は造り出されるものだね」
「人間の手で」
「そう、魂はお腹の中に宿る」
この観点も語った。
「だから人間になる」
「そして動物にも魂はない」
「神の教えだね」
キリスト教のそれだ、確かにこの考えはキリスト教に存在していて犬や猫に魂があるかどうかの論争が長い間存在してもいた。
だからだ、教授はこう言うのだ。
「魂があるのは人間だけだよ」
「人のお腹の中から産まれた」
「そうだと思っていたけれどね、私は」
「あらゆる学問で変化はあるよ」
それはというのだ。
「神学においても」
「錬金術も神学とは無縁でないからね」
「そうだよ、だからね」
「組織の人間の見解も変わった」
「どの様な出生、姿形であっても」
例えそれが人造人間であってもというのだ。
「魂は入りね」
「心もだね」
「そしてその心が人間のものであれば」
「人間だというのだね」
「だからこの娘達もだよ」
花吹雪の中で戦う少女達、伯爵自身が生み出した彼女達もというのだ。
「人間なのだからね」
「錬金術師は人間に危害を加えてはならない」
「組織の戒律の第一だね」
「それ故に破ると」
「処罰を受けるね」
「異次元の牢獄に千年か仮死状態に置かれるか」
「どちらにしても極刑は免れない」
組織の中においてとだ、教授も言った。
「そうなるのだね」
「それは卿も避けたいね」
「錬金術師であることは私の誇りであり私は組織が好きだよ」
「では従うね」
「そうさせてもらうよ、是非ね」
「ならいいよ、これで最後だ」
伯爵は教授に強い声で告げた、決定を守ることを教授に確認させるものだった。
「この娘達の戦いは」
「そして後は人として生きる」
「普通の、幸せなね」
戦いからも力からも解放されてというのだ、そのうえで。
伯爵は今は薊達の戦いを見守るのだった、その戦いは。
少女達は怪人達の攻撃をかわすだけで精一杯だった、それは当然ながら鈴蘭と黒蘭もだ。だが鈴蘭は自分と闘っている怪人の攻撃をかわしつつ黒蘭に言った。
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