美しき異形達
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第五十五話 最後の戦いその六
「衝撃だけでな」
「私の敗北が決まるわね」
「それでどうして勝つ」
怪人は笑ったまま言った。
「この俺に」
「それを今考えているところよ」
「その答えが出るまでに負けるな」
「それはどうかしら」
菫の目も負けていない、それでだった。
菫は薙刀を持ったまま闘っていた、怪人のその突進をかわしつつ。
桜は接近戦を闘っていた、ゴロザウルスの怪人と。
怪人は巨大な顎の牙で桜の頭をそのまま咥え首を噛み千切らんとしている、しかしその攻撃を紙一重でだった。
かわしていた、尾や足での攻撃も。
かわしていた、その巧みな身体の動きで。
そうしている彼女にだ、怪人は言った。
「素早いな」
「経験が出ているかと」
「これまでの闘いのか」
「何十回と闘ってきました」
それも生死を賭けたそれをだ。
「ですから」
「それだけの素早さも備えたか」
「そうなりますね」
「成程な、しかしな」
「その私をですね」
「倒させてもらう、命は貰う」
こう言って攻撃を続ける怪人だった、少女達と怪人達は死闘を繰り広げていた。その闘いを見てだった。
教授は微笑みだ、伯爵に言った。
「決まるね」
「戦いの結果、そしてだね」
「そう、どちらの人造人間が優秀なのか」
そのこともというのだ。
「決まるね」
「私には興味のないことだよ」
「人造人間の優劣は」
「そう、ないよ」
全く、とだ。伯爵は教授に落ち着いて答えた。
「私が興味があるのはこの娘達の人生だよ」
「人間のそれというのかな」
「そうだよ、それを求めているんだよ」
「娘だからこそ」
「残念だけれど私は子供を作れない」
伯爵はこのことをだ、表情も口調も変えないがこれ以上はないまでの無念さで語った。
「そのことを知ったからこそ」
「錬金術師にもなったね」
「そうしてね」
そのうえで、というのだ。
「不老不死になって」
「そしてだね」
「子供達を生み出していったんだ」
「そうだよ、卿が言うホムンクルス達をね」
「だから優劣には興味がないと」
「最初からね」
最初の人造人間を生み出したその時からだというのだ。
「卿との優劣には興味がないから」
「見解の相違かな、しかし」
「この闘いはというのだね」
「私に軍配があがるね」
嵐の如き花吹雪の中で戦う少女と怪人達を見つつの言葉だ。
「今回は、そして人造人間での最後の戦いは」
「どうかな、それは」
「それは?」
「そう、人間は成長するものだよ」
薊達を見てそのうえでの返答だった。
「果てしなくね」
「この娘達を人間だと思うからこその言葉だね」
「そう、人間だから」
成長するというのだ、それも果てしなく。
「卿の考えの様にはいかないよ」
「そう言うのだね」
「そう、それは闘いの中であっても」
成長するというのだ。
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