インフィニット・ストラトスGM〜天空を駆ける銀狼〜
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やっと夏休み
「もう〜、また切り傷作って……。女の子なんだから、もっと気をつけないと」
「痛っ……、すみません」
学園に戻った私たちはまず更識さんを保健室へ連れて行くことを優先した。保健室に連れて行くと丁度先生が居り、私の顔を見て明らかな呆れの顔をする。しかし、私が背を負っている水色の髪の少女を見ると顔を固まらせる。そして、今は更識さんをベットに寝かせて、私の怪我の世話をしてくれている。私の付き添いのシャルはなんか顔を顰めているが。
「これで良しっと!もう…貴女が一番よ。一年で保健室を利用する回数が多いの」
「……そうですか?」
「そうですか?じゃないわよ。もう〜」
「……ごめんなさい。今度からは気をつけます」
そして先生はニヤリと笑うと耳元で囁く。
「貴女の彼氏も心配してるわよ?」
「彼氏!?」
「優里……?大丈夫?顔を真っ赤にしてるけど……もしかして熱がでたんじゃあ……」
「ちっ、違いますよっ。シャル、なんでもないですっ。大丈夫だから、落ち着いてください」
「………そう?」
シャルが心配な顔をするので笑顔で誤魔化すと先生を睨むが先生は顔を逸らしている。
♦︎
「はぁ……。変な目会いました……たく……」
私は隣を歩くシャルを見る。視線を下に下げると自分の手とシャルの細い手が重なっている。私は嫌と言ったのだが、シャルがどうしてもと言う事でこんなことになってしまった。繋がっている手をジィと凝視する。
(シャルの手って……指が長いですね。スゥ〜と細長い。私はお父さんに似て指が短いので…)
手の甲から伝わってくる暖かさが遠い日のある人物に重なって、意識してはいけないと思うほど意識してしまい私は顔を朱色に染める。
「優里?」
「なっ、なんですか?」
「いや。ぼぅ〜としてるようだったから、大丈夫かなって。ほら、もう少しで食堂だから」
「あっ、本当ですね」
「………???」
シャルは私を見て、小首を傾げるがすぐに前を向くと食堂に歩いていく。
♦︎
(いかん。ヤバイぞ!くそぉ……先生が変なことをいうから……)
食事中も意識してしまい、ろくに食べられなかった。何故かシャルの手元や顔ばかりに視線が行ってしまい、味も分からなかったし失態も犯した。
転校当初は上手く使えなかった箸を今では完全に物にしており、頼んだ生姜焼き定食をパクパクと食べる。ちなみに私はチキン南蛮定食である。
綺麗に食べ進めるシャルを凝視して、あそこはお母さんに似てるとかそこは似てないとか思いながら、心ここに在らずで無意識に食べているとシャルが居心地悪そうに私を見る。
「えっと……。優里……?」
「……なんですか?」
「そんなに見られると食べにくいだけど……」
「はっ!?すいません、無意識でした……」
「優里って無意識で人を凝視するの?」
「はい」
「………そうなんだ……」
シャルの顔が引きつるのを見て、やってしまった……と思う私であった。
♦︎
それから数日が過ぎ、夏休みに入る。
「もう〜。優里〜、起きて。朝ごはん食べに行くよ?」
「………シャルだけ、食べに行ってください。私はもう少し……」
「もう〜」
シャルはため息をつきながら、立ち上がるとドアへと歩いていく。静寂の中、私は浅い眠りから深い眠りへと落ちて行った。
♦︎
「はい。優里」
「………あーん。……もぐもぐ」
「ちゃんと起きて食べないと変なところ入るよ」
「………はーい、分かってます〜」
「………本当に分かってるのかな?」
僕は目をつむったまま、もぐもぐと口を動かしている優里を見て呆れ顔を作る。
この同居者が朝に弱いと分かったのはここ最近で、今まで学校がある日はちゃんと起きていた彼は何故かその日いくら揺すっても起きなく、強引に布団を剥がして制服を着てもらうとこくこくと船を漕いでいる彼の手を引いて教室へと向かった。教室に着くまでは終始周りにジロジロと見られて、僕は羞恥心で顔を真っ赤にしてその視線から逃れるように逃げ込むように教室に入ると今度はクラスメートから見られる始末。僕は早足で優里を席に連れて行こうとすると前方から呆れ声が聞こえる。顔を上げるとそこにはーー
『シャルル、優里の世話か?ご苦労だな』
『箒…』
『シャルル……私が連れて行こう。ほら、優里。教室に着いたぞ!起きないと織斑先生にまた出席某アタックを頭に食らうぞ!』
『ううん?箒?……シャルはどうしたんですか〜?でも、これは夢なので問いかけても……』
『まだ寝ぼけているのか?仕方ない奴だな』
箒は僕の手から優里の手を受け取ると優里を席へと連れて行く。僕は呆然と立ち尽くしたまま、二人を見ていた。箒はだらしない妹を優しく叱りつける姉のようで、目をこすっている優里は本当の妹ようで僕は思ってしまうのだ。
(あぁ……ズルイなぁ……)と
僕も幼馴染でもう少し早く優里に出会えていたら、あんな風に親しくなれるのにと。
「ごほんごほん」
「ほら、ちゃんと目を開けないからだよ。はい、水」
優里がむせる声で回想から現実へと戻ってくる。ペットボトルの水を蓋を外して、優里に渡すとゴクゴクと飲む。そして、胸をトントンと叩くと落ちたらしく。まだ目をつむったまま、口を開ける。
「ゴクゴク。………シャル、ご飯下さい〜」
「だから、目を開けてて」
もう……と口癖になった言葉を呆れ顔で言うと僕は優里におむすびを渡す。
後書き
ということで。
来ましたね!!やっと優里もシャルの事を意識し始めました。
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