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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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炎牙の時間(2016/05/16 一部修正)

 
前書き
今回は鷹岡回。しかも、またしてもイッキが出番を横取りします。今回の被害者は渚君。

というか、今回のイッキは相良左之助と鰐島咢、スピットファイアを足した様なキャラになってます。

鷹岡、この程度で済んでまだ良かったね。出番まだある証拠だよ。その次はないだろうけど(笑) 

 



【視点:烏間】



7月上旬某日。今日も今日とで俺指導の下、この暗殺教室特有の体育・模擬暗殺訓練が始まった。

この模擬暗殺体育のルールは非常に簡単だ。対暗殺対象(ターゲット)用ナイフを制限時間内に俺に当てられれば終了。体育の成績に加点が与えるといったものだ。

俺が体育教師という名の教官となり、今月で約4ヵ月目ということもあって、才能のある生徒は制限時間内にナイフを当てられることが多くなってきた。

特に南君の作ったA・Tを所有する所謂暴風族(ライダー)組は、それぞれのA・Tの特性を自分が発揮できる最大限で利用している様で、非所有組よりナイフを当ててくる率が高い。

とは言え、やはり俺が本気にならざるを得ない生徒は、今の所南君1人だけなのには変わりがないんだがな。

7月に入り、漸く完成した南君専用の暗器。徒手空拳用のグローブと5月に追加要望された対暗殺対象(ターゲット)仕様の竹光。更に彼だけが持つ玉璽(レガリア)なる特殊なA・T。

南君はそれらを駆使し、俺に一撃を入れるのではなく倒しにやってくるのだ。俺自身、本物なら致命傷となる一撃を何度か受けている。

この暗殺教室で最も優れた暗殺者は問答無用で南君と言える。そんな彼がいるからこそ、俺は一抹の不安を覚えずにはいられない。

南君は自分が気に入らない相手を見下し、場合によっては潰すことも厭わない性分でもある。故に今日、防衛相から新しい教官としてやって来る者が、彼とも上手くやっていけるのか、と不安になってしまうのだ。

………そして、新しくやって来た教官の姿を見た時、俺の不安が現実のものになると確信してしまった。



【視点:樹】



球技大会も終わり、7月に突入した椚ヶ丘学園は中高共に生徒は夏服へ変わる。といっても、E組内での夏服関連で発生したイベントは芸術家気質の菅谷がメヘンディアートを一時的に流行らせたってことくらいなんだが……。

で、その出来事から数日経った今日。烏間先生やその部下の人達とは別に、防衛相から教官を務める体育教師がやって来た。

体育教師の名前は鷹岡明。防衛相所属ということもあってガタイはいい。が、一挙手一投足全てが胡散臭い男だった。大量の飲食物を最初に無償で提供するとか、怪しんで下さいと言っている様なもんだ。

そして、鷹岡が赴任してきた翌日。鷹岡が体育の時間中に配った新しい時間割表によって、鷹岡が俺の考えていた通りの男であることが判明した。

夜9時まで組まれた時間割表。その大半は訓練で埋め尽くされていたんだ。明らかに脳筋が考えそうな、馬鹿丸出しの時間割表だ。

当然のことながら、こんな出鱈目な時間割を受け入れる奴は、いくら普通とは縁遠い暗殺教室の生徒でもいない。前原がE組を代表する様に抗議をした。

が、鷹岡は前原の抗議を暴力という名の教育で黙らせた。具体的にいうとボディに膝蹴りを入れた。ってか、もうこの時点で鷹岡は教師失格だ。

しかも、父親を押し付け、父親の命令には絶対服従とか言ってくる始末。父親云々以前に、絶対既婚者じゃないだろ。偉そうに父親語ってんじゃねぇよ。

鷹岡の調子に乗った行動は、それだけでは止まらない。俺らE組を従わせるパフォーマンスなのか、速水と矢田の肩に腕を回し、家族を強調する始末だ。

鷹岡の恐怖支配にクラスの大半が既に飲まれつつある。特に肩に腕を回されてる速水と矢田は顔が青褪めている。ここは俺が如何にかしてやらないとな。


「ファック!脳筋っていうか、こんな馬鹿丸出しな時間割しか組めない奴が中学教師をやろうと思ってんじゃねぇ。しかも、暴力による恐怖支配とか、獣かよ。せめて原人に進化してから出直して来い」
「あ゛ぁ゛?お前、今なんて言った?」
「原人にも劣る知性しかない獣風情が人間様を支配しようとしてんじゃねぇって言ってんだよ。あと、既婚者でもない素人童貞臭全開の奴が父親語んな。全国のお父さんに土下座しろ。カスデブ野郎」
「……ガキ風情があまり調子くれてんなよ!―――ッ!?」


俺が言いたいことを言い終え、カスデブ野郎の腕の中にいる速水と矢田を最速で救出し、カスデブの後方20mの所まで移動すると、鷹岡は既に俺のいない場所に向かって何か言っていた。

超滑稽な光景で正直笑える。あっ!言い忘れてたけど、今日俺が履いてるのは自作初の試験型混成玉璽(テストタイプ・ハイブリッド・レガリア)だ。形状は咢verの牙の玉璽(レガリア)だけど。

後輪は牙の試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)のままで、前輪に炎の試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)(コア)を組み込んだ、牙と炎の混成玉璽(ハイブリッド・レガリア)。ちなみに前後輪の回転数が異なる為、ラウンド・トラクション・ヒル仕様の混成玉璽(ハイブリッド・レガリア)でもある。

嵐の玉璽(レガリア)を開発する為の試験型混成玉璽(テストタイプ・ハイブリッド・レガリア)なんで、ある程度データ収集ができたら元の炎の試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)と牙の試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)に戻すんだけどな。

取り敢えず、俺が作った玉璽(レガリア)の中でもホイールの回転速度が1、2を争う炎と牙の試験型混成玉璽(テストタイプ・ハイブリッド・レガリア)ということもあって、移動速度も半端無い為、速水と矢田をあっさりと助け出せたって訳だ。


「どこ向いて話してんだよ、カスデブ野郎」
「テメェ、いつの間に……」
「お前がトロ過ぎんだよ、カスデブ野郎。トロ過ぎて欠伸が出るぜ」


俺が挑発する様にそう言うと、カスデブ野郎は顔に青筋を浮かべ豹変した。


「て、テメェ!父親の俺を馬鹿にして只で済むと思うなよ!?」
「素人童貞が父親なんて、こっちから願い下げなんだよ。あと、俺は自分より弱い奴から何かを教わるつもりは毛頭無ぇ。今からタイマンで戦ってやるから、それでお前が負けたらここから即行で出て行け。カスデブ野郎」
「……いいだろう。だが、俺が勝った時はお前を含めたE組全員が俺の奴隷だ。どんな苦しい訓練でも泣き言は許さねぇ!」
「上等だ、カスデブ野郎。返り討ちにして、格の違いってもんを教えてやる」


こうして俺は豹変した鷹岡とタイマン勝負をすることになった。周りにいたクラスの皆には少し離れて貰い、職員室から駆け付けた烏間先生とも話をつけ、烏間先生の合図で勝負を開始することとなった。


「……本当にいいんだな、南君?」
「始めて下さい、烏間先生。このカスデブ野郎にはさっさとこの場から去って欲しいんで」
「……分かった。では、このコインが地面に着くと同時に試合開始だ」


烏間先生はそう告げると、手に持っていたコインを親指で弾いた。そして、コインが地面に着くと同時に全速力で突っ込んで来るカスデブ野郎に対して、俺は微動だにせずに突っ立っている。

別にビビってるとか、そんなんじゃない。格の違いってのをその体と心に刻む為、敢えて動かずにいるんだ。と、そんな説明をしている間にカスデブ野郎がその拳が届く間合に入った。

カスデブ野郎は俺の胸部――丁度心臓のある所を狙って大振りで拳を放つ。が、その拳が俺の胸部に届くことは無かった。

何故なら俺が腰を落とし、カスデブ野郎の拳を態と額で受けたからだ。周囲で俺達の勝負を見ていた皆も、俺の行動に驚きを隠せず悲鳴を上げる。

拳が当たった瞬間、カスデブ野郎はドヤ顔を見せたがそれも僅か一瞬で、その顔は大した間もなく歪み、カスデブ野郎は大人気ない叫び声を上げ出した。


「うぎゃああああぁぁぁあああぁぁ!」


そういえば、さっきカスデブ野郎の拳を額で受けたと言ったが訂正しよう。受けたんじゃなくて頭突きで応戦したんだ。奴の拳と接触した瞬間、メキッって音も聞こえたから指の骨に罅でも入ったんだろうな。

俺の額からも多少血が出てるけど、流石に頭蓋骨に罅は入ってないだろう。実際、頭もそこまで痛くないし。まぁ、取り敢えず―――


「お前の全力はこの程度かよ、カスデブ野郎。受け止めるのに指1本使う必要がなかったな」
「ッ!!?」


俺はそう告げながらカスデブ野郎にデコピンを放った。すると、カスデブ野郎は俺以上に額から派手に血を吹き出しながら10m程吹っ飛び、俺はカスデブ野郎の吹っ飛ぶ先に先回りする。


「腕力だけが取り柄のこんなカスデブ野郎が俺達の教官を務める?冗談だとしても笑えねぇ、よ!」


俺はそう告げると同時に、カスデブ野郎が地面に着地するより早くその巨体を上空へと蹴り飛ばす。縮地を可能とする脚力と玉璽(レガリア)の相乗効果によるものか、カスデブ野郎は地上から7~8m上空に飛んだ。

そして、空中で身動きの取れないカスデブ野郎に対して、血痕の道(ブラッディ・ロード)炎の道(フレイム・ロード)(トリック)を放つ。


「Ride fall Bloody roll.soul 1800°×時よ!!」
「ぐぎゃっ!」


空中のカスデブ野郎に近付いた俺は、試験型混成玉璽(テストタイプ・ハイブリッド・レガリア)のノコギリ状のホイールでカスデブ野郎の身体を切り刻むと同時に全身に高速蹴りによる打撃を10数発叩き込んだ。そして―――


炎牙(フレイムファング)無限の煉牢獄(インフィニティ・インフェルノ・ジェイル)


炎の道(フレイム・ロード)血痕の道(ブラッディ・ロード)無限の空(インフィニティ・アトモスフィア)の複合(トリック)、炎牙の檻でカスデブ野郎を囲み、俺は一足早く地面へと着地した。

ちなみにカスデブ野郎が中々落ちて来ないのは、炎牙の檻の炎で発生している上昇気流のせいだ。このまま放って置いたらカスデブ野郎は酸欠で気絶するんだろうけど、どうせなら徹底的にやっておこう。


「……閉じろ、炎牙」
「げふぁああああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁ!!!」


俺が告げると同時に炎牙の檻はカスデブ野郎に向かって収束していき、カスデブ野郎の身体は炎の牙で焼き刻まれ、無様な叫び声を上げた後、地面へと落下した。

本当ならGrand Fang Fire Birdを放ちたかった所だけど、そこまでするとこのカスデブ野郎が死ぬ可能性があったから自重することにした。


「………これが格の違いって奴だ。腕力しか取り柄のない獣は身の程を弁えろ」
「しょ、勝負あり!」


打撃と炎、牙による攻撃で全身がズタボロになり、煙を上げているカスデブ野郎に俺がそう告げると同時に、烏間先生から勝負の終了が宣告された。

この後、気絶したカスデブ野郎は烏間先生の部下に回収され、カスデブ野郎を送り込んだ防衛相には今まで通り、烏間先生が教官役を務められる様、烏間先生自身が交渉を行った。

あと勝負終了後、カスデブ野郎の初撃を額で受けたことに対して、有希子だけでなく速水と矢田の2人からも説教されてしまった。

いや、これに関しては俺が全面的に悪いんだけどね。反省はしている。だが、後悔はしていない!!


 
 

 
後書き
今回の話を一言でまとめると―――

「上手にできました!」

 
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