スレンダーマン?がダンジョンに潜るのは間違っているだろうか
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第一話
「それじゃあ早速だが【ステイタス】を刻ませてもらうとするよ。上に着てるのを全部脱いでベッドに寝そべってくれ。」
「は、はい」
言われた通りに一張羅の青木スーツを脱ぎ、ベッドに寝そべる。刻むといってもどうやってするのだろうかと考えていると、ヒルコ様が背に跨ってきた。背中に当たる柔い感触にどぎまぎしているうちに背中に一滴、生暖かい雫が垂らされる。僅かに首をひねり背中を見てみると、垂らされたのはどうやら血のようだ。その一滴は波紋を広げ体に染み込み、それと同時に理解できない文字が浮かび上がっていった。
「じっとしていてくれないか?ここからは手元が狂うと大変だ。」
ヒルコ様にそう言われ、私は急いで首を元の位置に戻す。その直後ヒルコ様は私の背中をゆっくりとなぞり始めた。これがきっと刻むということなのだろう。すべすべの手が背中をすべる感触がなんともこそばゆい。
しばらくしてヒルコ様が背中からすっと降り、なにやら文字が書かれた独特な風合いの紙を渡してくる。それにはこう書かれていた。
ヤス
Lv.1
力:I60 耐久:I10 器用:I40 敏捷:I60 魔力:I0
《魔法》【】
《スキル》【瞬間移動】
この紙に書かれていることが『神の恩恵』である【ステイタス】の概要なのだろう。
数値の横のアルファベットのような文字がランクを表し、私の能力値は最底辺の部類に入るようだ。
「・・・まぁ冒険者に成り立てならこんなものさ。【ステイタス】は戦っているうちにあがるものだからね。さて、今日はもう遅いしもう寝たほうがいい。明日には冒険者登録をしてきてもらうとしよう。
部屋はここをそのまま使ってくれていいよ。私は別の部屋に居るから何かあったら私の部屋に来なさい。」
そう言いヒルコ様は部屋から出て行く。ドアが閉められたのを確認し、私はベッドに再び寝転がる。
まさかこんな素晴らしい体験をすることになるとは思いもしなかった。迷宮とはどんなものなのだろうか、どんな冒険が待っているのだろうか、そう考えているうちに私は眠りへと落ちていった・・・
○
【ヒルコ・ファミリア】のホームは北西のメインストリートからちょっと外れたとこにある平屋の建物だ。
そこまでボロボロではないもののそれなりの年季を感じる。その平屋の中の一室でヤスは目覚めた。
殺風景な部屋の中で朝日を浴びて覚醒する。刻印を受けたあとそのままの格好で寝てしまったせいかやや肌寒い。しかし、昨日の疲れはもうほぼ無くなりなかなか快調である。少しだけ背中が重い気もするが。そういえば今日は冒険者登録をしに行くという話しだった筈だ。顔でも洗ってさっぱりしてからヒルコ様に一声かけに行こう。
洗面所で顔を洗いヒルコ様の部屋へと向かう。鏡が無く顔の汚れが落ちたかわからないが、しっかりと洗ったのでたぶん大丈夫だろう。ヒルコ様の部屋は私の部屋と洗面所を挟んだ反対側だ。ドアの前に立ちノックをすると「どうぞ」とヒルコ様のきれいな声が聞こえる。その言葉をしっかりと聞き取ってから、私はドアを開ける。
「おはようございます!ヒルコ様。早速ですがこれからギルドへ行こうと思うのですけど・・・」
部屋に入るなりヒルコ様が驚いたようにこっちを見ているのが判る。何かと思っているとすぐ原因がわかった。上着を着てくるのをすっかりと忘れてしまっていたようだ。
「失礼しました。服を着るのを忘れてました」
「ちょ、ちょっと待った。」
ヒルコ様に呼び止められる。この貧相な肉体を晒しつづけるのはさすがに気まずい。
「君の背中のそれは何だい?後そんな顔だったっけ?鏡は・・・そうか、私が持っているのしか無かったな。」
と、私のほうに鏡を差し出してくる。そこには──
──変わり果てた私の姿が映っていた。具体的には首から上の肌が真っ白になり、顔があった部分には鼻のような膨らみのみが残っている。さらに背中のほうには二対計四本の真っ黒な触手が生えているのが確認できた。
「きみってひょっとして亜人だったのかい?人間だと思っていたのだけど・・・」
「・・・な」
「な?」
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
朝の閑静な住宅街にヤスの叫び声が響き渡った・・・
後書き
人物紹介──
ヤス Lv1 【ヒルコ・ファミリア】
年齢 25歳
身長 2m31cm
体重 95kg
力:I60 耐久:I10 器用:I40 敏捷:I60 魔力:I0
《魔法》【】
《スキル》【瞬間移動】
ちょっと瞬間移動のできる長身痩躯のサラリーマン。スーツを愛用している。
無気力な顔だったが、のっぺらぼうへとクラスチェンジした。
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