戦国異伝
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第二百十二話 死装束その十二
「この度の宴は当家だけでなくどの家も集める」
「といいますと毛利家に武田家、上杉家、北条家もですか」
「そして伊達家も」
「この度降した家の方々もですか」
「全て」
「うむ、呼ぶ」
信玄や謙信達もというのだ。
「皆な」
「ではこの度の宴は」
「数も大きなものですか」
「それも相当に」
「これまでにない宴ですな」
「朝廷の方々もお呼びするのじゃ」
公卿達もというのだ。
「それだけにな」
「これまでにない宴になり」
「そして、ですか」
「その宴を行い」
「徳川殿もですか」
「そうじゃ、面白い馳走を用意してくれるからな」
そのことも言うのだった、そしてだった。
信長は家臣達にだ、笑って言ったのだった。
「楽しみにしておれ」
「さすれば」
「我等も」
その宴を楽しみにしているとだ、信長に応えた。すぐに各家から主な者達が安土に集められるのだった。
朝廷にも声がかけられる、近衛はその文を見て唸って言った。
「うむ、右大臣殿からな」
「文が来たでおじゃるな」
山科がその近衛に応える。
「近衛殿のところにも」
「来たでおじゃる」
その通りだとだ、近衛は山科に応えた。
「それではでおじゃる」
「左様でおじゃるな」
「我等も安土に参上し」
「織田殿の宴をでおじゃる」
「楽しませてもらうでおじゃる」
こう言って宴を楽しみにするのだった、これは他の朝廷にいる公卿達も同じだった。どの公卿達も安土での宴を楽しみにしていた。
だがここでだ、一人だけはだった。
暗い顔をしてだ、こう言うのだった。
「麿は病なので」
「何と、安土にでおじゃるか」
「行かれぬでおじゃるか」
「折角の織田殿のお招きだというのに」
「そうされるでおじゃるか」
「そうでおじゃる」
その通りだとだ、その公卿は答えた。その朝廷の様子をだ、たまたま都に来ていた氏真が見ていた。そしてだった。
共にいた徳川の旗本達にだ、こう話した。
「公卿で高田殿という方がおられるでおじゃるな」
「あの素性の知れぬ」
「昔から家があれど」
「それでもでしたな」
「正体がわからぬ家の方ですな」
「あの方だけが織田殿の宴に加わらぬでおじゃる」
そうだと話すのだった。
「公卿の方では」
「それは奇妙ですな」
「帝も来られるというのに」
「皇族の方々も」
「それでもですか」
「あの方だけは」
「何でも病とのことでおじゃるが」
しかし、というのだ。
「それでもでおじゃる」
「あの方だけは」
「どうしてもですか」
「あの方だけは」
「思えば奇妙な方でおじゃる」
氏真もこう言うのだった。
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