FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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飛べ!友のもとに!
「オイラたちは・・・妖精の尻尾の魔導士だー!!」
ハッピーが叫ぶと、廊下に並んで立っていた、いかつい猫たちがそちらを見る。
「メェン・・・」
「ニチヤさん・・・これは・・・」
二人は想定外のことに、顔を見合わせる。
ハッピーはその一瞬の隙を見逃さず、シャルルとセシリーの手をつかんで、今来た道を戻っていく。
「行こう!シャルル!セシリー!」
「え・・・?」
「どこに~?」
ハッピーに手をとられたシャルルとセシリーは驚いてしまう。
「メェン・・・」
「およよよよ」
シャルルたちだけでなく、ニチヤとナディも驚きの声をあげる。
「オイラたちで、みんなを助けるんだ!絶対助けるんだ!!」
ハッピーは大声でそう言い、ニチヤたちから遠ざかっていく。
「ニチヤさん・・・」
「落ちた天使・・・それは・・・堕天!!」
「アースランドの汚れに毒されてしまったエクシードは、堕天となる!!」
「オオー!!メェーン!!」
遠ざかっていく三人の背中を見て、ナディとニチヤはそう言う。
「堕天が三人逃走!」
「近衛師団、出撃!!」
ニチヤは自らの近衛師団を率いて、三人を追いかけ始めた。
エクスタリアの街の中にて・・・
「どいてどいて~!!」
ハッピーはシャルルとセシリーの手を掴み、エクスタリアの中を全速力で逃げている。
するとその後ろから、たくさんの近衛師団が三人のあとを追ってくる。
「あいつらたしか・・・」
「あんときのヒーローだ!」
「でも・・・近衛師団?」
街のエクシードたちは、英雄であるはずの三人が近衛師団に追いかけられているのを、驚きながら眺めていた。
その様子を見ているエクシードの中で、一人のエクシードは、追われている三人を見て驚いた。
「・・・シャゴット?・・・と・・・私!?」
自分の友人の子供の頃に似ているシャルルと自分の子供の頃に似ているセシリーを見て、心配になったその茶色のエクシードは、気づかれないように三人の後を追いかけた。
「「うわぁ!!」」
近衛師団のエクシードから三人は斬られそうになり、その剣を懸命に避ける。
「待て待て!メェーン!!」
三人はなおも追いかけてくる近衛師団から逃げる。
三人は途中にある角を曲がって逃げようとすると、そこには先ほど、シャルルとセシリーを見つめていたエクシードがいて、
ガシッ
三人を捕まえる。
「ちょっと!!」
「離してよ~!!」
「大丈夫~、ここに隠れてて」
「「え?」」
そのエクシードは、三人を藁の入った木の荷車に入れると、元の位置に戻る。
すると、そのあとから近衛師団が走ってきて、辺りをキョロキョロしながらそのエクシードに話しかける。
「おい、セリーヌ!」
「何~?」
ニチヤに話しかけられたセリーヌというエクシードは、ニチヤの顔を見る。
「この辺りで堕天を見かけなかったか!?」
「堕天・・・?あぁ、それなら・・・あっちに行くのを見たよ~」
セリーヌはそういって、ハッピーたちが隠れているところとはまったく違う方向を指さす。
「そうか。恩に着る!メェーン!!」
「頑張ってね~」
セリーヌはニチヤたち近衛師団が走っていくのを手を振って見送る。
ハッピーとセシリーはそれを見たあと、藁の中から顔を出す。
「ありがとう」
「助かったよ~」
「ううん。それより、早く降りた方が――――」
セリーヌが三人の方を見ると、
ガタッ
「「「あ!」」」
三人を乗せた荷車が、坂に向かって転がっていく。
「「うわああああああ!!」」
「きゃああああああ!!」
「ああ・・・行っちゃった・・・」
セリーヌは坂を下っていく荷車を見つめてそう言う。
「まぁ、いいか~。ひとまずは助けたし・・・でも・・・」
セリーヌはセシリーのことを思い出している。
「セシリーか・・・いい名前をもらったね」
そう呟くと、セリーヌはその場から離れていった・・・
「「うわああああああ!!」」
「きゃああああああ!!」
三人を乗せた荷車は坂を猛スピードで下っていく。
すると、あまりのスピードにシャルルが荷車から投げ出されてしまう。
「「シャルル!!」」
「セシリー!!ハッピー!!」
荷車から投げ出されたシャルルにセシリーが手を伸ばすが・・・セシリーの手はシャルルに届かない。だが、
ガシッ
そのシャルルの手を、ハッピーが懸命に手を伸ばして掴む。
「しっかり捕まってて!」
「うん・・・」
「ヒュー」
シャルルの手をしっかりと握るハッピーと顔を少し赤くするシャルルを見て、セシリーは軽く口笛を吹く。
三人はその先の崖から投げ出され、そのまま下の畑へと突っ込んでいった・・・
「しゃ・・・シャルル・・・セシリー・・・大丈夫?」
「な・・・なんとかね~・・・」
「うぅ・・・あんたは?」
ハッピーは目を回しながらも二人に声をかけ、セシリーとシャルルも反応する。すると、シャルルが何かを見つける。
「ハッピー!セシリー!あれ見て!」
シャルルの視線の先にあるのは、浮遊島の上にある大きな魔水晶!
「魔水晶が浮いてる!!」
「王都で見たのより大きい・・・」
「あれが妖精の尻尾のみんなってこと~!?」
「あんなところにあったんだ・・・」
ハッピーたちが魔水晶を眺めていると、シャルルは今度は下を見ている。
「どういうこと?」
「なんで王都がこんなに下に~?」
「ここ、空に浮かぶ島だったのか!!」
ハッピーたちも下を覗くと、そこには先ほどまで三人のいた王都があった。
「つまり、こんな位置関係なのね」
シャルルは木の枝を使って、地面に位置関係を書く。
下に王都があり、その斜め上にエクスタリア、そしてその隣に魔水晶があるといった感じだ。
「どうやって王都まで降りよう・・・」
「今の私たち、翼が使えないし・・・」
「う~ん・・・」
三人が頭を抱えて悩んでいると、後ろから声がする。
「コラァ!オメェら!オイラの畑で何してやんでぇ!!」
「「!?」」
「しまった!!」
三人が振り返ると、そこには大きなクワを持ち、泥棒ひげを生やした白いエクシードがいた。
「はは~ん・・・兵隊どもが探し回ってる堕天てのは、おめぇらのことだな?」
そう言うエクシードにハッピーは身構え、シャルルはうつむき、セシリーはあたふたしている。
「かぁーーー!!!」
「「ひぃっ!!」」
すると白いエクシードは三人に向かって鍬を振り回し、三人はそれをかろうじて避ける。
「出てけ出てけー!!」
「あい!」
「ごめんなさい~!」
白いエクシードにそう言われ、ハッピーは尻餅をつき、セシリーは立ったまま謝る。
「荷車が転がっていたのはこの辺か!?探せ!!メェーン!!」
すると、先ほどハッピーたちが投げ出された崖の上で、近衛師団がハッピーたちを捜索しているのが見える。
「もう追ってきた・・・」
「まずいよ~・・・」
「・・・」
三人はそれを見て焦る。すると、白いエクシードが三人にまた怒鳴る。
「かぁーーー!!!畑から出てけー!!」
「あい!!すぐに出ていきます!!」
「でもってうちに来い!!」
「はい~!すぐに行き・・・え?」
「え?」
「?」
三人はいきなりそう言われ困惑するが、ひとまずそのエクシードの家についていった。
ハッピーたちは白いエクシードについていき、今は家の前まで来ている。
「兵隊たちは?」
「まさか・・・もう通報されてて・・・」
ハッピーとセシリーが不安そうにそう言うと、
「かぁーーー!!!」
「「ひぃっ!!ごめんなさい!!」
白いエクシードの迫力にビビり、謝る。すると、その家の前で、青いエクシードがトマトなどの入ったかごをもっていた。
「あなた、今日は早かったのね~。あら?」
その青いエクシードはハッピーたちに気付く。すると、白いエクシードは一人で家の中に入っていってしまう。
「こんにちわ」
「こ・・・こんにちわ」
「どうも~・・・」
ハッピーたちは緊張しながら挨拶する。
「お名前は?」
「オイラ、ハッピー」
「僕はセシリー」
「シャルル・・・」
「そう。素敵な名前。とにかく中へどうぞ」
青いエクシードはそう言うと、家の中へと案内してくれる。ハッピーたちはついていくように、家の中に入った。
家の中に入ると、事情を説明したあと、なぜかすくにテーブルに座らされる。ハッピーたちは、いまだに状況を飲み込めないでいる。
「あらあら、それはたいへんだったわね」
マールはそう言うと、テーブルの上にお皿いっぱいに乗った魚をおく。ハッピーはそれを嬉しそうに見ている。
「おじさん!おばさん!かくまってくれてありがとう!!」
「かぁーーー!!!飯食え!飯!」
「あい!」
「ありがとう・・・」
「ありがとうございます~」
ハッピーは二人にお礼を言うと、ラッキーにテーブルをドンドンと叩かれながらそう言われ、ハッピーは返事をし、シャルルとセシリーはお礼を言う。
「うちの人ってば、王国の考え方とそりが合わなくてねぇ、昔追い出されちゃって、
「かぁーーー!!!いらんこと言わんでええ!!」
「はいはい」
マールが説明すると、ラッキーはそれに大声を出し、マールは笑顔で返事をする。
「そっか。それでオイラたちを」
「そんなんじゃねぇやい」
ハッピーが魚を手に持ちながら言うと、ラッキーはそっぽを向きながら否定する。
それに対してハッピーとセシリーがクスクスと笑うと、ラッキーは立ち上がり、
「食ったら仕事手伝え!!かぁーーー!!!」
「「あ、あい(は、はい)!!」」
ラッキーの声の大きさに、ハッピーとセシリーは驚きながらも返事をする。その後もラッキーは、
「かぁーーー!!!これ着ろ!!」
と言い、服を貸してくれたり、畑仕事をハッピー、キッチンの仕事をシャルルとセシリーが手伝ったあと、三人に対して
「かぁーーー!!!風呂入れー!!」
とお風呂にいれてくれたり、お風呂から出てきたあとには、
「かぁーーー!!!この辺で勝手に休めー!!」
などと、三人の面倒を見てくれた。
三人は今、家のベランダでゆっくりとしている。ハッピーは仕事をやりきった達成感とセシリーはひなたの気持ちよさで笑顔であるが・・・シャルルは相変わらず暗い表情をして、ウェンディのことを思い出している。
「お疲れさま!ここ、お風呂上がりは気持ちいいでしょ?」
すると、マールが三人の元にやってくる。
「あい!」
「お風呂上がりじゃなくても気持ちいいよ~!」
ハッピーとセシリーは笑顔でマールに答える。
「ハッピーとシャルルとセシリー・・・だったわね。アースランドで生まれたんでしょ?誰が名前をつけてくれたの?」
「ナツ。友達だよ!」
「僕のはシリル!友達なの~!」
「私も・・・そう・・・友達・・・」
マールの質問に、ハッピーは手を上げ、セシリーは笑顔で、シャルルはうつむきながら答える。
「その友達が王都に捕まってるんだ」
「うん!僕たち、助けにいかないと~!」
「人間を助けるのね」
ハッピーとセシリーが言うと、マールは笑顔でそう言う。するとシャルルは、
「エクスタリアでは、その考え方は間違ってるのよね・・・」
シャルルは一人、悲しそうにうつむく。しかし、マールはシャルルを優しい眼差しで見ながら答える。
「そんなことないわ。素敵なことよ。友達に、エクシードも人間も関係ない。
だって、見た目が違くても、大好きって言う心の形は同じなの」
「心の・・・形・・・?」
「そう。大好きの心の形は、みんな一緒」
マールは優しく微笑みながらそう言う。それを聞いて、ハッピーとセシリーは笑顔になるが、シャルルは変わらず、うつむいてしまう。
「私の心は・・・私じゃない誰かによって、操られてる・・・
今、話してる言葉さえ、私のものなのか・・・どうか・・・」
シャルルは悲しそうにそう言う。それに対してハッピーとセシリーは、
「シャルルの言葉だよ!!シャルルの心だよ!!」
「そうだよ~!!シャルルのウェンディへの気持ちも、ハッピーのナツくんへの気持ちも、僕のシリルへの気持ちも、みんな僕たちのものだよ~!!」
「ハッピー・・・セシリー・・・」
二人の言葉に、シャルルは顔を上げる。
「そうね。今はちょっと迷ってるみたいだけど、きっと大丈夫よ」
マールの言葉に。シャルルは耳を傾ける。
「だって、こんな素敵なナイト様と友達が、近くにいるじゃない」
「な・・・ナイト様////」
「ヒュー!!」
マールの言葉に、ハッピーは顔を赤くする。
「あなたは自分の心を見つけられる。
ううん。本当はもう持ってるの。あとは気づけばいいだけなのよ。【大好き】の気持ちを信じて」
マールの言葉を聞いて、シャルルの顔に笑顔が戻ってくる。
「よかった。ようやく笑ってくれたわね。とってもかわいいわ」
「おばさん変わってるのね」
「そうかしら?」
シャルルは笑顔で言うマールに、少し困惑する。
「だって、エクシードはみんな、自分たちを天使か何かかと思ってる。人間は劣等種だって言ってた」
「そうね・・・昔はね、そういう考えだった。でも・・・子供を女王様にとられてね」
マールは優しそうな顔の中に、少し、悲しみの表情が見える。
「滅竜魔導士抹殺計画とかで、100人もの子供・・・卵が集められた。
そして・・・自分の子供の顔も見れないまま、アースランドに送られてしまったの」
「「「・・・・・」」」
マールの言葉に三人は顔を見合わせる。その100人の中に、自分たちもいるのだと思っている。
「その計画に反対したせいで、私たちは王国を追い出された・・・
その頃からね。私たちは、神でも天使でもない。私たちは・・・ただの親なんだって・・・気づいたの。
そしたら、人間だとか、エクシードだとか、どうでも良くなってきたわ」
マールの言葉に、ハッピーたちは黙って耳を傾ける。
「うちの人も口は悪いけど、私と同じ考えなのよ」
「かぁーーー!!!」
すると、噂をすればなんとやら、ラッキーがマールの後ろからこちらに向かってくる。
「くだらねぇこと話してんじゃねーよ!!おめぇらもいつまでいやがる!!」
「あなた」
「辛気くせぇ顔しやがって!生きてるだけで幸せだほうが!甘えてんじゃねーぞ!!」
ラッキーの声にハッピーはびくつきながら後ずさりしていく。そんなハッピーをラッキーは指さす。
「とっとと出てけー!!」
「あなた、そんな急に・・・」
ラッキーの突然の言葉にマールが心配そうに言うが、ハッピーたちは立ち上がって答える。
「ううん。おじさんの言う通りだよ。オイラたち、早くみんなを助けにいかないと!」
「「うん!」」
ハッピーの顔を見て、シャルルとセシリーもうなずく。
「怯えたままじゃ、できることもできねぇんだ。最近の若ぇのは、んなこともわからねぇのか!!」
「「「!!」」」
ラッキーの言葉を聞いて、ハッピーたちは笑顔になる。
しばらくして、三人はラッキーたちの家から出ていき、手を振る。
「ありがとー!!おじさん!おばさん!」
「また会いましょ~ね~!!」
「かぁーーー!!!二度とくんなー!!!」
「気を付けておいきー!!」
手を振る三人に、ラッキーは地団駄を踏み、マールは手を振って見送る。
三人は、先ほど王都を見た崖まで走っていく。
「シャルル!セシリー!さっきおじさんの言ってた意味、わかる?」
「ええ。わかったわ」
「僕も~!!」
三人は互いに顔を見ながらそう言う。
「エドラスについたとき、オイラ、不安でいっぱいだった」
「うん!!」
「そうね。私も。でも!」
「今は~」
「違う!」
三人はそのまま走っていき、王都に向かって飛び降りる。
「進まなきゃいけないから!飛ばなきゃいけないから!」
(私たちはエクシード。このエドラスにおいて、唯一体内に魔力を持つもの)
(魔法を使えなかったのは、心が不安定だったから~!)
ハッピーが叫び、シャルルとセシリーは心の中でそう言う。すると、三人の背中に翼が生えてくる。
(ほら!自分の心の形が見えたとき、翼が私たちを前に進ませる!!)
三人は互いに顔を見合わせ微笑み合う。
「いこう!!みんなを助けなきゃ!!」
「うん!!」
「あい!!」
三人はそういって、王都へと飛んでいく。
そして、それを見ていたラッキーたちは・・・
「かぁー、見やがれマール。ちゃんと飛べるじゃねぇか」
「飛び方があなたそっくりね、ラッキー」
「バカ言え!!飛び方なんかじゃねぇ・・・」
「そうね・・・」
二人の声は、少し涙声になっている。
二人は涙を噛み締めながら、ハッピーたちをずっと見ている。
「あの白い娘・・・彼女かしら?」
「かぁーー!女連れてくるなんざ、100年早ぇんだよ!!」
「友達思いの、優しい子に育ったのね・・・」
「かぁーー!あい!」
二人はずっと見たかった自分の子供の顔を見ることができ、嬉し泣きをしていた。
後書き
いかがだったでしょうか。
ハッピーの両親って、本当にいい人たちですよね。
セシリーのお母さんはシャゴットと仲の良いという設定にしています。
ちなみに、親同士が仲がいいからシャルルとセシリー仲が良いと言う設定にしようかとも思ったのですが、さすがにそれは無理やりすぎたのでやめました・・・
次回もよろしくお願いします。
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