美しき異形達
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第五十三話 山師その九
「詐欺師はいざという時に出るわ」
「その嘘吐きの性根がな」
「だから私達にもね」
「嘘言うこともあるか」
「その時はね」
「そのことはね」
カリオストロ伯爵が薊達に対してもう戦わないと口約束をしてもだ、それが嘘に過ぎず後でまた仕掛けてくるのではという疑念についてだ、智和が言った。
「サン=ジェルマン伯爵のお仕事かな」
「あの人のか」
「そうなるかもね」
「同じ錬金術師でライバル同士だからか」
「そして同じ組織に所属しているからか」
「それならね」
「そうしたことはあの伯爵さんか」
薊は智和の言葉を聞いて言った。
「あの人がやってくれることか」
「そうなると思ったけれど」
「よし、じゃあ伯爵さんにな」
薊は智和にすぐに答えた。
「話してみるか」
「それがいいね」
「あたし達は怪人のことはどうにかなっても」
「カリオストロ伯爵についてはね」
「どうにもならないか」
「錬金術師のことは錬金術師だよ」
幾ら力を持っているとはいえ少女達ではというのだ。
「相手が違うよ」
「そういうことか」
「じゃあ伯爵のところに行ってくれるかな」
智和は優しい笑みになって薊に言った。
「行く前は」
「ああ、そうするよ」
「じゃあ僕達はね」
智和は今度は裕香を見て話した。
「ピクニックの用意をしておくよ」
「お弁当とかのか」
「何がいいかな」
「やっぱりお握りだろ」
お弁当といえばとだ、薊は明るく笑って答えた。
「唐揚げと卵焼き、野菜の佃煮にさ」
「運動会のお弁当だね」
「孤児院でいつも作ってくれたんだよ」
学校の運動会の時にはというのだ。
「ブロッコリーとかプチトマトもあってさ」
「そしてデザートもだね」
「苺とかオレンジな」
デザートはこちらだった。
「そうしたのだったな」
「わかったよ、それではね」
「全部用意してくれるんだな」
「勿論だよ」
智和は微笑んで快諾の言葉で応じた。
「薊君達がそうしたいのならね」
「じゃあ終わらせて来るな」
薊も微笑んで智和に答えた。
「これから」
「うん、待ってるわね」
裕香も微笑んで薊に言った、そしてだった。
薊達は智和の屋敷を出た、伯爵に連絡したことを確認したうえで。裕香はそのまま寮に帰った。するとその玄関にもうだった。
あのリムジンがあった、その持ち主も立っていた。
「来たよ」
「早いな」
「行動が早いのも私の長所でね」
サン=ジェルマン伯爵は薊に温和な笑みで応えた。
「呼ばれれば」
「何時でもか」
「来るのだよ」
「神出鬼没か」
「そうなるね、ではね」
「ああ、今からな」
薊は伯爵にあらためて言った。
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