美しき異形達
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第五十三話 山師その八
「それしようぜ」
「パーティーね、それじゃあ」
「寮でするかい?」
「ピクニック行かない?」
これが裕香の提案だった。
「それなら」
「ピクニックか」
「お外に出てね」
「じゃあ六甲の山で」
「それもいいわよね」
「だよな、まだちょっと暑いけれどな」
普通ピクニックは春や秋にする、だから薊は季節のことを考えてこうも言ったのだ。だがそれでもだった。
裕香のその言葉に乗ってだ、こう言ったのだった。
「それもいいな」
「そうよね」
「ああ、それじゃあな」
「帰って来た時はね」
「行こうな」
薊は微笑んでだ、裕香にこう答えた。
「それで山の上でお弁当食おうぜ」
「皆でね」
そうしたことを話してだ、そのうえで。
薊は今度は自分以外の戦える少女達にだ、確かな顔で言った。
「じゃあ行こうか」
「サン=ジェルマン伯爵と合流してから」
「ああ、それからな」
菖蒲の問いにもすぐに答えた。
「行こうな」
「そうね、そうあるべきね」
「やっぱりすぐに行ってもな」
それでもというのだ、智和を見つつの言葉だ。
「幻術で目晦ましされて逃げられるからな」
「そうなったらね」
どうかとだ、菊も話した。
「振り出しに戻りだから」
「ここで終わらせないとな」
「そう、だからね」
「伯爵の力を借りてでも」
「終わらせよう」
向日葵も普段以上に強い顔で言葉を出した。
「もうここでね」
「だよな、確実にな」
「正直もう戦いたくないから」
向日葵のこの言葉はメンバー全員の本音だった。
「だからね」
「それだけにな」
「サン=ジェルマン伯爵にカリオストロ伯爵の幻術を防いでもらって」
博士が智和に伝えたカリオストロ伯爵の術は薊達の心に強く印象付けられていた、それを念頭にしての言葉だった。
「それからよね」
「そして、ですね」
桜はいつもの穏やかな口調だが柔らかさはなかった、普段のそれは。
「伯爵と会って」
「あたし達にちょっかいを出させない」
「そのことを約束してもらいましょう」
「だよな」
「伯爵に会っても」
菫が言うことはというと。
「果たしてそれを約束してくれるかしら」
「その時は約束してもか」
「後でまた怪人を差し向けてくる」
「それもあるか」
「そのことが心配だけれど」
「そうよね、あの伯爵さん詐欺師だし」
鈴蘭はカリオストロ伯爵のことを言った。
「そのことを考えると」
「約束を破ることもか」
「あるんじゃ」
「何でも騙す相手は選ぶらしいけれど」
それでもとだ、黒欄も言った。
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