ルイズが赤い弓兵を召喚
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アルビオン
前書き
作者がグダグダしてきそうなので、展開飛び飛びに。
もちろんルイズさんはかなり変わってます。
すみませぬ。
「よかろう」って心の広い方はどうぞ。
夢を見た。
どんな夢だったのか、いつだって目が覚めると大概思い出せない。
今日だって同じ。
ただ、多くの人の命を守った誰かが、居たような気がした。
――――――――――――
(あれがこの国の王女か?)
あれとか言うな。
無礼よ。
あと様をつけなさい。
(手を振っているな)
(髭の男に手を許しているぞ)
(顔色を見る限り、元気、というわけではなさそうだが)
私からは遠すぎて全く見えないというのに、どうやらこの使い魔ははっきりくっきり見えているらしい。
どれだけ目がいいのやら。
さっきから逐一姫様の行動を報告してくる。
うん、させてるんだけどね。
――――――――――――
(何ともきな臭い話だが)
夜。
こんな場所(私の部屋)においでになりお聞かせ下さった姫様のお話を臭いなんて言わないで。
アルビオンでは貴族達が王家に対し反乱を起こし、既に王家は倒される寸前とのこと。
そしてアルビオン王家が倒れた後、待っているのは我が国、トリステインへの進行らしい。
トリステイン王国は帝政ゲルマニアと同盟を結ぶことで、アルビオンからの進行に備えたいのだろう。
そのための、姫様のゲルマニア皇帝とのご婚姻。
ゲルマニアから要求された、同盟の条件。
思う所があるものの、姫様が良しとおっしゃるのなら、私には何もできない。
自分の無力さを痛感していた時に、姫様から重大な任務を授かった。
アルビオン王家、ウェールズ皇太子に宛てた姫様の手紙の回収。
手紙が反乱軍に渡ればゲルマニアにその内容を伝えるのは必至。
ゲルマニア皇帝との婚姻の障害になるという。
それほどの手紙とはいったいどういった内容なのか。
姫様から説明は無かったけれど、想像に難しく無い。
姫様から、今回の事についてのウェールズ皇太子への手紙と、お守りとして賜った『水のルビー』をしっかりと胸に抱き、決意する。
「明日の朝、出発いたしますわ。姫様」
この任務、絶対に成功させなくちゃ!
――――――――――――
「そう言えばフーケの事件のあとちょっとごたごたしてて忘れていたけど、あんた本当に剣いらないわけ?」
早朝、馬に荷物を乗せながら、何処と無く乗り気でないアーチャーに話しかける。
(ああ。買ったとしても、持ち歩くのは私ではくマスターになる。剣を持ち歩く貴族となると、余りいい顔はされ無いのだろう?)
まあその通り。
でも何かある度に令呪の使用を考えて過ごすわけにもいかない。
というか、令呪を使うつもりなんてないが。
しかし、今から行くのは紛争地。
場合によっては戦う必要があるかもしれない。
そうだ、護身用のような短刀なんてどうだろう。
(ルイズ。君は何か勘違いしているようだが、私は剣を作らなければ弱い、というわけではないぞ? あの時のゴーレムがそれだけ強かったと言うだけのことだ。まあ今考えれば、あの剣を使うまでも無かったかもしれないが)
ふーん。
「でも、そう言われたって私はあんたが戦う所なんてあれしか見たことないもの。……避けるのは上手かったわね」
仕方ないじゃない。
それにしたって今の私、傍から見たら独り言を繰り返す危ない人に思われるんじゃ……。
(む。その評価、いずれ覆して見せよう、マスター)
どうやら私の使い魔は拗ねてしまったらしい。
少しからかってやろうか。
「なに?あんた拗ねてるの?」
(そんな分けないだろう。ただ正当な評価を……む、誰か来たようだ)
言われて振り返る。
聞こえてくる足音と、朝の靄から現れる姿。
あれは!
「ワルド様!?」
「そうだよ。僕だ、ルイズ!」
お髭も似合う私の婚約者。
長身に、でもしっかりとした体つき。
そして羽帽子。
どうしてこんな所に彼が?
「ああルイズ!僕の可愛いルイズ!」
わわっ!
急に抱き上げないで!
「ワ、ワルドさま、恥ずかしいですわ」
「おぉ!すまないルイズ。婚約者との久しぶりの再会に、少しばかり我を忘れてしまったようだ」
そう言って私を降ろして……下さる訳ではないらしい。
彼の口笛と共に現れたグリフォンに、そのまま乗せられる事になった。
噛み付かれたりしないわよね?
「どうして貴方が?」
荷物を馬からこちらに移している彼に尋ねると、驚いた顔をした。
「これから向かうのはとても危険な場所だ。そんな所へルイズ一人で行かせるような事、僕も、当然あの御方も良しとしないよ」
あの御方?
「まさか姫様が!?」
「その通り」
にこりと笑うワルド。
アーチャーもいるから私一人というわけではないけれど、それでも心強い。
やっぱり姫様は優しい御方だわ。
あ、そう言えば、姫様にはアーチャーについて説明していなかったっけ。
(そうしていると、まるで貴族のお嬢様のようだな)
やっぱり姫様と会わせたりなんかしないで良かった。
どんな粗相をするか分かったもんじゃない。
あとアーチャー。
私は正真正銘貴族のお嬢様よ?
どうやらこの使い魔、まださっきのことを根に持っているご様子。
子供かあんた。
――――――――――――
トリステイン南側にある都市ラ・ロシェール。
ここから『船』に乗ってアルビオンへと向かう予定だったのだけど……。
宿屋『女神の杵』
アルビオンへの船が2日後までないとのことで、ここで足止めとなってしまった。
急ぎの任務だっていうのに!
「覚えているかい?お屋敷の中庭の……」
そうして始まった公開処刑。
ワルドが懐かしそうに、嬉しそうに昔の私との思い出を語ってくれている。
二人部屋しか取れなかったという事で、私と彼の二人きり。
(はっはっはっ!そうかそうか。かつてのマスターは随分可愛らしかったようだな)
なんてことはなかった。
うううぅ。
ワルドから使い魔について尋ねられた時に
「あ、後から合流します」
とか今考えても意味不明な答えをしてしまったために、アーチャーを紹介する機会を逃してしまった結果がこれだ。
もういい!
いいからもう出てってよ!
泣くわよ!
その後ワルドから結婚の申し出があった辺りでアーチャーの煽りに耐えられなくなり、私はワインを一気に飲み干し酔って寝たふりを敢行する事となった。
――――――――――――
声にならない慟哭を上げたのは、いったい誰だったか。
ああ、あいつの声が聞こえる。
どうして、そんなに穏やかな声で。
「――だが残念だ。私が死ぬ時は、正しい糾弾の元に裁かれるものだと信じていたが――」
――――――――――――
「あ、あの、ワルド?こいつが私の使い魔です」
「ほう、人……では無いのかい?」
あの寝たふり特攻の次の日。
朝食の後、ひと気のない場所がないかワルドに聞くと、中庭の練兵場が丁度いいとのことで、アーチャーのお披露目と相成ったところ。
急に現れたアーチャーに対して、あまり動揺していないようなワルドに私ビックリです。
「お初にお目にかかる、子爵殿。彼女のサーヴァントである『アーチャー』だ。見ての通り余り褒められた出自でもない故、多少の無作法は御許し頂きたい」
ちょちょちょ。
誰あんた。
「いやいや、そんなに畏まらないでくれたまえ。かく言う僕も礼儀作法なんてものは苦手でね。君とは気が合いそうだ」
はっはっはっ!
と昨日も聞いたような笑い声がワルドから。
ニヤリと口元を歪めながら此方に視線を向けるアーチャー。
そんなに今の私の顔は面白いですか。
ありがとう。
お陰で朝から気分が悪いわ。
「ところでアーチャー君、君は伝説の使い魔『ガンダールヴ』なんだろう?」
ん?
伝説がどうしたって?
なんの話をしてるの?
「ガンダールヴ? さて、私に聞き覚えは無いが」
私も知らないから。
こっちみんな。
それにアーチャーが伝説の使い魔とやらだったら私が嫌よ。
伝説って言うくらいなんだから、やっぱり素敵な騎士様みたいな人がいい。
アーチャー?
見た目は……まあ及第点ね。
だけどあの、ご主人様をおちょくる態度は頂けないわ。
ムチで躾けようにも透明になったらどうしようもない。
何にせよワルド、アーチャーなんかと間違えたりしたら、そのガンダールヴさんが気の毒だわ。
「ふむ、まあいいさ。ところで僕とひとつ手合わせお願いできないかな」
何だか話がおかしな事に。
ていうか伝説の話はもう終わりなわけ?
もう少し続けてくれても良いのに。
はい。
『伝説』とかそういう響き、大好きなだけです。
「構わない。剣を貸してもらってもいいかね」
「あ、ああ。勿論だよ」
アーチャーの即答に、ワルドもやや面食らっているご様子。
え、本当にやるの?
ワルドによる『この場所のウンチク講座』の後、始まった手合わせ。
うん、早過ぎて私にはよく分かりません。
ワルドって魔法を使わないで闘っても強いみたい。
アーチャーも、自分で言っていた通り、弱くないって言うのは本当みたいだ。
勝負の行方?
途中で抜けて来たので分かりません。
――――――――――――
次の日。
予定通り船に乗って出発した私達。
「ワルド。真逆これは……」
「さすがの君もこれには驚いたようだね。アーチャー。これは……」
どうやらワルドとアーチャーは随分仲良くなったようで、互いに敬称無しで呼び合う仲になった模様。
昨日の夜もワインについて語り合ってたし。
むしろワインに詳しいアーチャーに私はびっくりよ。
にしたってなんだかツマラナイ。
今も、現れた巨大な大陸に驚くアーチャーに、ワルドが楽しげにこの『浮遊大陸アルビオン』について説明をしている。
そう言えばこのフネを見た時は、なんだか複雑な顔して
(空飛ぶフネか……。金ぴかでなくて良かった)
とか言ってあんまり感動した様子じゃなかったっけ。
まあ何にしてもツマラナーイ。
――――――――――――
「空賊!?」
せっかくアルビオンへ向けて出発したのになんてことなの!
(どうやらもう面倒事のようだぞ、マスター)
つまり面倒事が起こることはあんたにとって予想済みってこと?
いつも通り全く変わらない様子のアーチャーと、これまた落ち着いている(ように見える)ワルド。
なんだか私が大袈裟に驚いたみたいになってるじゃない。
こういうのでも驚きなさいよ。
二人にお願いして空賊共を懲らしめてもらおうかと思っていたら、アーチャーが
(マスター。この世界の賊が私の世界のソレと意味が同じなら、彼らは随分行儀がいいな)
と言い出し
(相手のトップに会えるよう交渉してみてくれないか?もしかすると面倒事ではないかもしれんぞ?)
と私に丸投げしてきた。
あんたがやりなさいよ、と言いたい所だったが、本当に私が危なくなったら助けてくれるだろうし、姿を現さないからには何か思うところがあるのだろう。
そうして交渉したところ、アーチャーの言う通り、意外にあっさり賊の頭とやらにご対面と相成った。
「私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!あんた達が何処の馬の骨かは知らないけれど、私達は王党派への使いよ!大使としての扱いを要求するわ!」
後書き
ルイズたちが眠った後、アーチャーは屋根の上で一人監視役。
次が最終回の予定。
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