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戦国異伝

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第二百十一話 磨上原の合戦その七

「よいか、周りの敵を切り伏せてじゃ」
「はい、退けたなら」
「あらためてですな」
「皆鉄砲を持て」
 そうしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「織田の本陣にですか」
「向かうのですな」
「そうするぞ」
 こう言って自ら戦い続けるのだった。
 そうしてだ、戦い続ける伊達家だった。だが。
 やはり数が違い攻め方も防がれた、これではだった。
 徐々にであるが疲れが見えてきた、そしてその疲れにだ。
 織田の軍勢は攻めにかかった、それでだった。
 伊達の軍勢は押されだした、それを見てだ。
 丹羽は兵達にだ、こう言った。
「このままじゃ」
「押して、ですな」
「そのうえで」
「そして潰す」
「そうするのですな」
「そうじゃ」
 まさにその通りだというのだ。
「このまま戦を続けるぞ」
「畏まりました」
「ではこのまま」
「攻め続け」
「そうして」
「潰す」
 数と武具に劣り疲れが見えてきた伊達の軍勢をというのだ。
「そうするぞ」
「そして、ですな」
「勝つのですな」
「無論じゃ」
 このことは当然だった。
「勝つのは我等じゃ」
「わかりました」
「では」
 兵達も応え攻めるのを止めなかった、そして。
 その中でだ、遂にだった。
 風が変わった、これまでとは正反対の方に。
 織田家にとって追い風となった、その風の動きは政宗もすぐに感じ取った。それで顔を顰めさせてこう言った。
「終わりじゃ」
「まさか。終わりとは」
「それは」
「負けじゃ」
 今ここではっきりと言った。
「我等のな」
「風が変わって」
「それで」
「そうじゃ、ここはじゃ」
 無念を顔に滲ませるがだ、政宗は言った。
「退くしかないわ」
「ここで退きますと」
「それは」
「最早」
「我等」
「わかっておる」
 やはり無念の顔で言う政宗だった。
「負けじゃ、我等の」
「ですか、では」
「天下は」
「殿の天下は」
「ないわ」
 自分で言った、このことを。
「ではな」
「はい、では」
「このままですか」
「退きそのうえで」
「織田家に」
 兵達も無念の顔で言う、しかし風は無情だった。
 そのまま織田の追い風となり今度は伊達の軍勢を攻めたてた、伊達の軍勢は追い風を受ける織田の鉄砲や弓矢を受けてだ。
 崩れはしないが攻められていた、そして。 
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