正々堂々と
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4部分:第四章
第四章
黄忠もまた武を見せようと決意したのだ。そしてであった。
周りの者にだ。こう話すのだった。
「明日は弓を使う」
「弓をですか」
「黄忠殿が最も得意とされているそれを」
「それを使われますか」
彼は天下随一に弓の使い手と言われている。その腕に匹敵するのは曹操の腹心中の腹心である夏侯淵かも若くはかつて中原を暴れ回った呂布位しかいないと言われている。そこまで脳でなのだ。
「狙いは決して外さないという」
「ではそれで関羽を」
「倒されますか」
「一撃で」
「見ているのだ」
黄忠は沸き立つ彼等ににこりともせず述べた。
「わしの弓をな」
「わかりました。それでは」
「明日は楽しみにしています」
「黄忠殿の勝利を」
「是非共」
「うむ」
黄忠は頷きはした。そのうえで次の日の戦いを迎えるのだった。そしてであった。
その日の朝だった。両雄はまた向かい合った。黄忠は新しい馬に乗っている。その馬もまた黒馬だった。それに乗って関羽と向かうのだった。
そして関羽もまた赤兎馬に乗り黄忠と向かい合っている。その彼が言う。
「黄忠殿、それでは」
「うむ、今日こそはだ」
決着をつけると言い合ってだった。そのうえで互いにゆっくりと前に出る。
その中でだった。黄忠は弓矢を出してきた。それを見て関平と周倉が言う。
「弓か」
「確か黄忠殿の弓は」
「そうだったな、天下随一の腕だ」
「関羽様は今弓を持ってはおらぬ」
彼とて弓は使える。しかし今は持っていないというのだ。
「そのうえで黄忠殿が弓を出されては」
「まずいな」
関平の言葉は危惧するものだった。
「これでは」
「お命すらも」
彼等の危惧はそのまま相手の期待だった。彼等はこぞって言う。
「これでだな」
「そうだな、勝つぞ」
「黄忠殿が勝たれる」
「間違いなくな」
そのことを確信していた。彼等はだ。
黄忠は弓を構えた。いよいよだった。
関平と周倉はそれを見てだった。焦りを覚えていた。
「義父上が敗れる筈がないが」
「しかし黄忠殿の弓は」
「そうだ、恐ろしいものがある」
「油断はできませんな」
そのことを言う。彼等は関羽を信じているがそれでもだった。危ういものを感じていた。それをどうしようもできなくなっていた。
その間にも黄忠は弓を構えてだった。そしてだった。
弓が放たれた。関羽はそれをよけようともしない。二人はそれを見て驚きの声をあげる。
「馬鹿な、義父!」
「それでは」
こう叫ばずにいられなかった。しかし。
弓は関羽の顔のすぐ側を通っていった。そのうえで消えていく。彼は弓が自分には当たらないことを見切ってそれで動かなかったのだ。
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