美しき異形達
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第五十一話 二人の伯爵その二
「いるな」
「そうよね、そうした人とね」
「一緒かっていうとな」
「違うでしょ」
「ああ、どう考えてもな」
実際薊はそうした輩を叩きのめしたこともある、許せなかったからだ。
「そんな奴はな」
「そういう人達こそ人間じゃないから」
「あたし達はか」
「何処が人間じゃないのか」
むしろという口調での言葉だった。
「不思議よ」
「そうか、だから今もか」
「一緒にお風呂も入ってね」
にこりと笑ってこうも言った裕香だった。
「御飯も食べたりして。ただね」
「ただ?」
「私あっちの趣味はないから」
これはジョークであった。
「薊ちゃんもないみたいだけれど」
「ああ、同性愛か」
「そう、薊ちゃんともね」
「あはは、それはあたしもないよ」
薊も笑って返した。
「別に否定はしないけれどさ」
「そっちには応えられないわ」
「あたしもだよ、それは」
同性愛についてはというのだ。
「だからね」
「そっちのことはな」
「一緒のベッドで寝る位は大丈夫だけれど」
そこから先はなのだ。
「無理だから」
「友達でもな」
「友達であって彼女じゃないからね」
「彼女同士じゃな」
「そう、そういうのはないけれど」
「それでもか」
「友達だから」
薊との関係はというのだ。
「むしろ私なんか」
「裕香ちゃんがどうしたんだよ」
「あれよ、平家の隠れ里にいて」
「落ち武者のか」
「末裔、しかも反逆者になるから」
「そんなの何百年も前だろ」
「それでもよ、薊ちゃんが人造人間だったら」
自分もというのだ。
「そんなのよ、田舎なんてものじゃない秘境にいた」
「奈良の山奥のか」
「だからね」
それで、というのだ。
「田舎者もいいところだから」
「田舎者だっていうからどうなんだよ」
「そうでしょ、田舎者でもね」
それでもとだ、裕香は薊にここでまた言葉を返した。
「何でもないでしょ」
「だからどうしたってな」
「薊ちゃん達も同じだって思うわ」
「人造人間でもか」
「だからどうしたよ。サイボーグでも妖怪でもね」
そうした存在でもというのだ、裕香は。
「何だってね」
「裕香ちゃんは思うんだな」
「そう考えてるから」
「これからもか」
「友達よ、実は奈良はね」
裕香は自分の故郷のことにだ、再び言及した。
「結構差別とかの話が多いのよ」
「あれっ、そうなのかよ」
「うちは隠れ里だけれどまあ何百年も前の話だから」
「差別とかはか」
「流石にないけれど」
「それでもか」
「同和問題って知ってる?」
「同和っていうと」
薊もその話を聞いて言う。
「被差別部落の」
「そう、奈良はその問題がずっとあるの」
「そういえば前にも話してたよな」
「そうでしょ、ちらりとね」
「奈良県は同和問題があるんだな」
「関西全体に根深い問題だけれど」
「差別がか」
「あるのよ」
これは実際のことだ、奈良県だけでなく関西全域にこの問題はありただ差別の問題だけではなくなっているのだ。
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