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オズのベッツイ

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第十幕その四

「こうして降るのよ」
「豪雨ですね」
「この大雨が一時間位降るの」
「もう道も草原もお池みたいになってますね」
「凄いでしょ、けれどこの雨がね」
「皆の恵みになるんですね」
「そう、物凄く有り難いものなのよ」
 この豪雨が、とです。ベッツイはナターシャに笑顔で答えました。
「雨が」
「そうですね、けれど」
「ええ、一時間位はね」
 その雨が降っている間は、でした。
「動けないから」
「だからですね」
「その間何をするかよね」
「何をしましょうか」
「さっきお菓子の話が出てたわね」
 ベッツイはここでこのことをお話に出しました。
「それじゃあね」
「お菓子を食べてですね」
「お喋りもしてね」
 にこりと笑ってこのこともお話に出すのでした。
「そうしてね」
「時間を潰すんですね」
「そうしましょう」
 こう笑顔で言ってです、すぐに。
 ベッツイはテーブル掛けを出してでした、そのテーブル掛けにお菓子とコーヒー、お茶を出しました。そしてそのテーブル掛けからです。
 皆はそれぞれお菓子や飲みものを手に取りました、そしてそういったものを食べて飲みつつ楽しくお喋りをしてです。
 一時間程経つとです、実際にでした。
「止みましたね」
「本当に一時間位で」
「雨が止みましたね」
「ベッツイさんがお話してくれたみたいに」
「一気に降って一気に止みましたね」
 五人は雨が止んだのを見て言いました。
 そしてアンがです、その五人にこう言ったのでした。
「そうでしょ、私達の言った通りでしょ」
「はい、本当に」
「すぐに止みましたね」
「それじゃあね」
 雨が止んだからというのでした。
「行くわよ」
「すぐにですね」
「先に」
「そうしましょう」
 こう言ってアンは最初に木の外に出ました、地面は濡れていますがブーツのお陰で安全です。その濡れた地面を踏みながらです。
 一行は道にまで出ました、その道もです。
 かなり濡れていて川みたいになっています、それでなのでした。
 ハンクは自分からです、ガラスの猫に言いました。
「よかったらね」
「あんたの背中に乗って、っていうのね」
「そうしない?そうしたら濡れないよ」
「折角のお誘いだけれど遠慮するわ」
 猫はハンクの好意にこう返しました。
「それには及ばないわ」
「濡れるのに?」
「濡れても拭けばいいじゃない」
 実にあっさりと言った猫でした。
「だからね」
「それでなんだ」
「そう、安心していいから」
 それで、というのです。
「あたしが濡れることはね。むしろね」
「むしろ?」
「濡れて身体を拭いたら」
 そのガラスの身体をです。
「あたしは余計に奇麗になるでしょ」
「ガラスのその身体が」
「そう、だからよ」
「濡れてもいいんだね」
「むしろ後で拭いて奇麗になることを考えれば」
「濡れることはいいことなんだね」
「そうよ、だから折角の申し出だけれどね」
 それでも、とです。猫はまたハンクに言いました。
「お断りさせてもらうわ」
「そう、それじゃあね」
「そういうことでね」
 こうしてでした、ガラスの猫は自分の身体が濡れてもその後に拭いて奇麗になることを楽しみにしながら自分でその濡れた道を歩くのでした。 
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