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東方大冒録

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命蓮寺と、兎の願い。

 
前書き
遅れて申し訳なかった。
さぁ、話を進めましょう。 

 
暗基たちは質素ではあるが朝食を食べたあと、聖の案内により、自分達が寝ていた場所とは違う客室に向かった。

「どうぞ、お入りください」
「ありがとう」
「邪魔するわ」
「邪魔するぜ」
「お邪魔するわ」

軽く挨拶をして客室に入る。

「それでは、しばらくお待ちになってください」

聖は客間のふすまを閉じる。そして部屋の中を改めて確認すると、そこには暗基も見たことのある人が3人、先に客室にいた。

「あら、面白い面子(めんつ)ね」

その中の1人、まさに昔の十二単(じゅうにひとえ)のようで違う服を着た女が声を上げる。それに対して霊夢も返事をする。

「それはこっちの台詞よ、輝夜。それと、うどんげ、てゐ」

蓬莱山輝夜と、うどんげこと鈴仙・優曇華院・イナバ、因幡てゐが、なぜか命蓮寺の客室にいたのだ。続けて霊夢が話すと、輝夜が返事をした。

「なんであんたたちがここにいるのよ?」
「ちょっと色々あったのよ。あとで話すわ。ところで、そこの方は?」

輝夜はそういいながら暗基を見る。

「暗基零だ。紫から、うちの姉貴が迷惑かけてるって話を聞いて、その後始末のためにここに来た外来人だ」

暗基がそういうと、輝夜の隣に座って警戒していたうどんげが手を拳銃のように構えた。

「信用ならないわ。暗基ってことは、優理亜の家族か何かでしょ? 私からすれば信じろって言うほうが無理な話よ」
「鈴仙と同意見ウサ」

それと同時にてゐも臨戦態勢に入る。しかし暗基は構えるわけでもなく、冷静に返事をする。

「まぁ、そういう感じになることは予想できてたけどな。おれが霊夢や魔理沙と一緒にいるとしても信じてもらえないか?」
「そいつらこそ偽物なんじゃないの?」
「うどんげ、てゐ。心配しなくてもこの人は大丈夫だと思うわよ」

あからさまに警戒されていたが、輝夜がうどんげとてゐに言った。それに対して暗基は驚きを隠せなかった。

「えっ、信じてくれるのか!?」
「えぇ。なんとなくそんな気がするからね」
「ひ、姫様!?」
「信じていいウサか!!?」

うどんげもてゐも声を荒げる。それを見た霊夢がうどんげとてゐに声をかける。

「まぁ、何であれ主は信じてくれるらしいけど、うどんげとてゐはどうするのかしら?」

するとうどんげとてゐは嫌々というのがまさに正しいだろうと言える顔をしながらも、

「……、まぁ、姫様が信じるのなら……」
「信じておくウサ。疑いを持てそうなことをしたら、すぐお前を消すウサ」
「はぁ、わかりきってはいたがやっぱりいやなもんだな……」

うどんげとてゐの態度に暗基はため息をついた。無理もない。もしかしたら今後ずっと、同じような反応を本物たちから受けなければいけないと考えたら、ため息のひとつもつかなければやっていけないと感じたからだ。そこに、聖が命蓮寺のみんなを連れて入ってきた。

「お待たせしました。それでは、話を始めるとしましょうか」
「あ、あぁ。分かった」

全員が適当な場所に座り、聖が話を始めた。

「今おそらく、零さんが知りたいと思っている情報は、姉である優理亜がどうしてこのようなことをしてしまっているのかということ、そして、あの『偽りを捻じ曲げる程度の能力』はどう対処すればよいのか、ということでしょう?」
「あぁ。特に知りたいのはその2つだな」

暗基は返事をする。それに対して聖は軽く微笑むと、話を続ける。

「では、まず優理亜がなぜこのようなことをしたのか、からですね。私達が独自に調べを進めて行った結果を言わせて頂くのですが」

聖は一度息を吸い、話すための準備をする。暗基とその他の者、特に霊夢、魔理沙、咲夜の3人は真剣に話を聞こうと姿勢を正す。すると、聖の口から、とんでもない発言を聞いた。

「暗基優理亜は、操られています」
「は?」

その発言に対し、真っ先に声が出たのは暗基だった。

「操られてるって、姉貴は自分の意思で幻想郷を壊滅させようとしているんじゃないのかよ!?」
「そう。どうやら、裏で優理亜を操るものがいるようなのです。その者の詳細はまだ分からないけれど」
「そんな……」

暗基は本当に驚きを隠すことが出来なかった。暗基は、優理亜が正気じゃなくなってしまい、その結果として幻想郷を作り変えようとしていると考えていたものが、実は優理亜はただただ誰かに操られて行動を起こしているというのだから。聖はさらに話を続ける。

「詳細こそ分かっていませんが、唯一、名前だけは分かりました」
「首謀者の名前ってことか!?」
「えぇ、そのとおりです。その者の名は、『アイギス』」
「アイギス……盾みたいな名前だな」

暗基は思わず声に出してしまった。アイギスといえば、ギリシャ神話でゼウスがアテナに渡した盾の名前だっただろうか、もしくは某カードゲームにそんな名前のモンスターがいたか。などと暗基はこの場面ではどうでもいいことを考える。すると、魔理沙が突然、

「ア、アイギス……、だって……!?」

顔を驚愕の色に染めて声を上げる。それを見てその場にいるみんなが一斉に魔理沙の顔を見る。

「どうした魔理沙? もしかしてアイギスってやつのことを知ってるのか?」

暗基が魔理沙に聞くと、魔理沙は冷や汗を流しながら、暗基に話し始めた。

「アイギスは……、2日ほどだったが、私の家で一緒に暮らしてたんだ……。いきなり現れて、ここに少しだけでいいから住まわせてくれってな……」
「それは本当なのか?」
「あぁ。その時は、ちっちゃくて健気で、可愛さの塊でしかなかったんだが……、まさかこんなことをしているなんてな……」

魔理沙が本当に悲しそうな顔をしながら言う。

(魔理沙……。性別こそわからないが、きっと、魔理沙にとってはアイギスは本当に可愛い弟か妹のような存在だったんだろうな……)

暗基はそんな魔理沙になにか声をかけてやろうとも思ったが、同時に少し気が引けるものがあったので、何も言わないことにした。すると聖がまた話を始めた。

「そうだったのですか……。魔理沙さんにとっては、これから私が言うことはとてもつらいことでしょうね。魔理沙さんにとってアイギスは少しの間でも家族のようなものだったでしょう。ですが今は異変を起こしている元凶です。幻想郷の決まりである通り、異変を起こした者は退治しなければいけません」
「あぁ、分かってるさ。分かってるけど……」

魔理沙は聖の言っていることは頭ではわかっているが、納得が出来ずどうすればいいのか全くわからない様子だ。それもそうだろう。短い期間であってもひとつ屋根の下で共に暮らした仲なのだ。抵抗がないわけがない。

「珍しいわね、魔理沙がそこまで渋るなんて」

霊夢が魔理沙に軽口を言う。霊夢からすれば、これは霊夢なりの気遣いだったのだろうが、魔理沙はさらに悲しそうな顔をして、力なく返事をする。

「霊夢には多分わからないだろうな、この……、うまく説明できないけど……」
「……、悪かったわ……」

霊夢も魔理沙から悲しみを感じ、黙ってしまう。辺りには、まさに葬式の雰囲気が漂ってしまった。

「ほらほら、お前ら心配するな!」

この雰囲気に耐えられなくなった暗基はみんなに、特に魔理沙に対して声を張り上げた。

「確かに、この世界には異変を起こした者は退治されなきゃいけないっていう決まりがあるのかもしれない。だけどそれは始末することが退治って訳じゃないだろ? 考え方を変えていこうじゃねぇか!!」
「……、ぜろ……!」

魔理沙は希望を見つけたような顔をしてくれた。しかし、暗基の言葉に咲夜がツッコミを入れる。

「たしかにその考え方は大事かもしれないけど、じゃあどうやって退治するつもりかしら?」

それに対して暗基は自信を持って答える。

「アイギスを説得してやるのさ。この幻想郷がどんなものでも受け入れる場所なんだってことをな。それで異変を起こすのをやめてくれれば、それで退治されたことにはなるだろ? うまく行くのかどうかはわからないけど、何事もやってみないことにはな」
「おそらくうまく行かないでしょうね。無理よ。異変を起こしたやつを言葉で改心させるなんて」

霊夢は暗基に対して、厳しめに言う。だがそれは暗基にとっては予想できていた。

「確かに、無理かもしれない。でも、今言ったろ? やってみないことには始まらない。お前は今まで実力行使でしか異変を解決したことがないからそう言うんだろうけどさ」
「そりゃあ、まぁ、妖怪相手だし、どうせ聞く耳なんて持ってくれないと思っていたから、実力行使でしか解決はしなかったけど……」
「だが、聞く耳を持ってくれないのはただの霊夢の思い込みなんだろ?」
「ま、まぁ……」
「なら、やってみる価値はあるだろ? 答えがまだないんだからさ。どうだ?」
「どうって言ってもねぇ……」

霊夢はいまいち暗基が言っていることを受け入れられなかった。今まで自分は妖怪を相手に実力行使でねじ伏せてきた。確かに、一時は話し合いによって解決することもできたらいいと考えたこともあった。戦うことは正直自分にとっては面倒なものであったからだ。だが、環境がそれを許さなかったというのもあった。
妖怪に関して何かがあれば人里の者たちが自分に助けを求め。
助けを求めなかったとしても、遭遇すれば見境なく襲いかかってくる。
自分も生きるため、自分の生まれ持つ能力と、巫女としての能力で戦い、倒す。
そして、別に嬉しくもない、ありきたりな感謝の言葉を述べられる。
それを今まで、そしてこれからもずっと続くと思っていたことが、外の世界からやってきたというよくわからない男によって変えられようとしているのだから。

「私は、今回はぜろのやり方に賛成だ」

魔理沙が声を上げる。

「魔理沙!? あんた本気で言ってんの!?」
「本気だぜ。だって、アイギスは今は敵だけど、かつては家族だったんだ。家族のことを何とかするのが、家族の仕事だろ?」
「たしかにそうかもしれないけど……」
「私も零に賛成ね」

霊夢が何とか言い返そうとした時、咲夜も零に賛成した。

「咲夜まで!?」
「優理亜が自主的にこの異変を起こしているのであれば、零の意見は却下したわ。でも、今回は違う。そのアイギスという者がどのような目的があってこの異変を起こしているのか、私にとってはどうでもいいことだけど、きっと何か特別な事情がある。もしかすると、お嬢様が異変を起こしたきっかけよりも、ずっと重い何かがね。だから、どんな理由であれ、今回は実力行使はあまりよくないと思った。それだけよ」

冷めたような口調で咲夜が言う。

「……、もう、あんた達何なのよほんとに……。もう、わかったわよ。今回はもう零のサポートしかしないから。勝手にしなさいよ……」

霊夢はもうやけくそ気味に返事をした。ここで、暗基はひとつ気になったことがあったので聞いてみた。

「咲夜って姉貴のこと嫌いなのか? こないだ俺と戦った時もそうだったけどさ」
「えぇ。嫌いよ。あいつはお嬢様と妹様に常に手をだそうとするから」
「……、うちの姉が重ね重ね迷惑をかけます……」
「全くだわ。今度あなたから言ってもらえるかしら?」
「言っておきますハイ……。とにかくだ。これで方針は決まった。姉貴を止めるんじゃなくて、アイギスを止める。いいな」
「えぇ、お好きにどうぞ」
「おう!」
「了解」

こうして、暗基のパーティは、団結力を高めることができた(?)。

























「私達の空気感が……」
「星、それは言わないお約束ですよ」
 
 

 
後書き
書き終わりました。
命蓮寺のメンバーとうどんげ、てゐ、輝夜の空気感パネェ……。これはひどい……。
ちょっとブランクがあると、まぁ書けなくなる。驚き。
次回は、誰もいない人里の探索です。 
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