エターナルトラベラー
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第三十話
アレから数日、注意深くユーノからのSOSが無いか警戒していたが成果は無い。
ユーノどこ行った?マジで…
うちのなのはさんも変な夢は見てないとの事。
どうなってるんだろう。
これも俺が生まれた影響か?
そんな事は無い…と、思いたい。
さて、そんな俺の葛藤を知らずに事態はまたも予期しない方向へと進んだ。
それはその日もなのは達を迎えに行って一緒に帰宅した日のこと。
「ただいまー」
そう言って俺は玄関をくぐる。
「「ただいま」」
それに続くのはソラとなのはの声。
おい!ちょっと待て、なのは。お前は今日もうちで夕ご飯を食っていくつもりか?
と言うか泊まっていく気まんまんな気がするのは気のせいか?
そろそろマジで桃子さんが泣くぞ?
たまに会う桃子さんから「…二人目、頑張ろうかしら」と言う言葉が出るほどだったんだから。
リビングに入る。
「あの…その、おかえり…なさい」
「あ、ああ。ただい…ま?」
誰?
リビングの扉を開けたら金髪幼女に挨拶された。
「お兄ちゃん、早く入ってよー」
後ろがつかえているのか、なのはが文句を言ってきた。
「あ、ああ」
俺は体を傾けて道を作る。
俺の体を通り抜けてリビングに入るなのは。
「………どちら様?」
なのはも固まったようだ。
俺達が対応に困っているとリビングの奥の方から母さんがやってきた。
「あ、あーちゃん、なのちゃん、ソラちゃん、おかえりなさい」
「あ、うん。…そ!そんな事よりも、えっと…彼女は?」
「あ、あのね…」
言いよどんだ母さんはとりあえず俺たちをリビングへと招いた。
さて、とりあえずリビングで家族全員でソファに座って母さんの言葉を待つ。
「この子はフェイトちゃんって言うの」
うん、それはアレだ。認めたくないけど何となく一目見た瞬間に解ってた。
「うん。で?」
「以上!」
「「「「はあ!?」」」」
俺達四人の疑問の声が見事にハモった。
「いやいやいや、以上て!?他にも何かあるでしょ?何で家に居るのとかさぁ」
「……あの、怒らないでね?」
俺が母さんに何を怒るのさ。
「その子、記憶喪失なの」
「「「はあ!?」」」
なんでもいつものように散歩に出かけた昼下がり。湖の近くの林間ハイキングコースを歩いていた母さんはそこでなぜか豹のような化け物に襲われたんだって。
襲ってきた化け物はツーヘッドドラゴンを駆使してやっつけたらしい。
やっつけると、どう言った理由か子猫と青い宝石に分離したんだと。
その青い宝石を掴んで観察していると、いきなり上空から俺たちが使う魔法みたいなのが降ってきた。
振り向けばなのはやソラと同年代くらいの女の子が斧を持って飛んでいるのが見えたんだそうだ。
その子はいきなり有無を言わさず襲ってきたらしい。
ちょ、なんで母さんがフェイトとエンカウントしているんだよ!?
どんな確率だよそれ…これも俺が生まれたバタフライエフェクトの一つか?
何で襲うのか、襲われる理由は無いんだけどと言っても聞かず、とりあえず此方を戦闘不能に追い込みたいようだった。
恐らく遠目に母さんが化け物を倒したのが見えたのだろう。
それで、話し合いも出来ない間に戦闘開始。
「で?ちょっと力加減を間違えて吹き飛ばした先で運悪く頭を強打。倒れたその子を家に連れてきて介抱してたところ、目を覚ましたら名前以外の記憶が無かったと」
「う、うん…」
力なく頷く母さん。
頭痛くなってきた…なにこの状況。予想外すぎる!
「それで?どうするの?」
「記憶が戻るまで家で面倒見ようと。もちろん親御さんは探すわ。探して謝らないと。だけど手がかりが、ね」
見かけは外国人。その実ミッドの魔法技術を習得しているから異世界関係かもしれない。
そこまで母さんも分ってて警察には届けていないらしい。
「とりあえず、この子が持っていたデバイスは無いの?それが有ればいろいろ分ると思うのだけど」
「デバイス?それってあーちゃんのあの刀みたいなの?」
「そう。この子の場合は話してくれた斧じゃないかな?」
その言葉を聞いた母さんは気まずそうな顔をした後、
「あはははは、置いて来ちゃった」
と、のたまった。
あの後すぐに俺達はフェイトのデバイスを探しに戻ったが時すでに遅く、見つけることは出来なかった。
誰かが持ち去ってしまったのだろうか…
そんな訳でフェイトを交えての夕食。
記憶喪失とは言え、生活に対するあれこれや言語(なぜか日本語)や一般常識は覚えているので生活には困らないようだが、どうやらフェイトは初めて箸を使ったみたいでうまく使えていない。
「あ、あう…」
見よう見まねで箸を使おうとするがうまく行かず、かわいい声がこぼれた。
まあ、仕方ないわな。
俺はすばやく立ち上がるとフォークとスプーンを探してきた。
「今日のところはこれで食べれ。明日からは矯正箸を買ってきて練習だな。付き合ってやるから」
「あ…ありがとう」
顔を真っ赤にしながらフォークとスプーンを受け取ったフェイト。
「や、やばいの。あれは堕ちたと思うの…」
「なのは…」
「ソラちゃん。強敵現るかもしれないの」
おい其処、何を言っているかね。
こんなのでフラグが立つわけ無かろう。
俺に~ポ系スキルは無いぞ。…ものすごく欲しいけどね。
これはアレだ。自分だけ使えないのが恥ずかしかっただけだろ。
「あらあら」
母さんも、駄目ねこの子見たいな顔で俺を見るな。
夕食も終わり、俺たちは母さんを襲ってきた怪物の事について話し合った。
俺たちも以前に同様の怪物に襲われた事。
倒したら宝石が現れた事。
複数個あることからまた同様の事が起きるのではないだろうかと言う事等。
どうしようかねこの状況。
もはや原作なんて当てにならん状況。
なのはは魔改造されているし、フェイトは記憶喪失で現在家にいる。
ユーノは現れず。
あ、そう言えばフェイトの使い魔のアルフはどこだ?
こう考えると問題が山積みで頭が痛い。
ん?ちょっとまて、これって半分は母さんの所為じゃね?
最大のイレギュラーは俺じゃなくて母さんだった罠。
とりあえずジュエルシードの事は出来る限り俺達で回収する事になりましたよ。
回収しないわけにもいかんだろう。
放置すると一般人に被害が出るしね。
さて、就寝といった時、フェイトをどうするのかと言う問題はまあ、母さんがフェイトを自分のベッドに連れてった事で問題は解決。
明日にでも客間を使えるようにしなければならんなと思いながらその日は就寝した。
side 紫
私は今、フェイトちゃんと一緒にベッドに入り、先に眠ったフェイトちゃんの髪の毛を手ですいている。
最初は恥ずかしがっていたが、問答無用でベッドにあげた。
しばらくするとすぐに寝息を立てていたが、無意識の行動だろうか、フェイトちゃんは私に抱きつくようにして眠っている。
フェイトちゃんとお風呂に入ったときに見つけたまだ直りきっていない擦り傷や青あざ。
あれは鞭のような物で叩いた傷だ。
さらに懸命に私に回されたその腕の余りの必死さに私は何となくだけど分ってしまった。
この子は両親に愛されていなかったのではないか?と。
それは余りにも辛い。
私はフェイトちゃんを抱き返して眠りについた。
side out
side アルフ
フェイトどこ!?どこだい?どこにいるんだい!?
あたしは若干パニックになりながら夕闇に染まった街を走り回る。
少し前、ジュエルシードを発見して、本当はあたしも着いていきたかったけれど、エリアのサーチがあったから我慢したんだ。
まあ、そのお陰で発動前のを一個手に入れたんだけど、その後だ。
あたしはフェイトに念話を繋ごうとしたが、一向に繋がる気配が無い。
念話が繋がらないのは拒否されているか…意識が無いか。
フェイトがあたしからの念話を拒否するわけ無いからそれは意識が無いって事だ。
あたしは駆けた。フェイトの魔力の残滓を辿ってたどりついた林の奥。
なにやら戦闘があったと推察できる地面の抉れ。
あたしが必死に辺りを探すと、其処にフェイトの杖、バルディッシュが落ちていた。
あたしは駆け寄り拾い上げ、バルディッシュに問いかけた。
「何があったんだい!」
バルディッシュが見せてくれた戦闘時の映像には20を少し過ぎたくらいの女性と戦闘しているフェイトの姿が。
カウンター気味に当てられた嘗手で吹き飛ぶフェイトが何かに当たって気絶した。
気絶したフェイトを女性は何か焦ったような感じで抱き上げて連れ去っていった。
その時、手から離れていたバルディッシュは回収されずに残っていたと言う事だ。
あたしはその映像を見て怒りで体が沸騰するのが感じられる。
必ず見つけ出すから!待ってて、フェイト!
side out
都合のいい事に次の日は土曜日で、未だ学生の身である俺は休日である。
さて、その休日をいかに過ごしているかというと…ぶっちゃけ荷物持ちです。
預かる事になったフェイトの日用品から下着、洋服まで一通り揃えようとデパートまで来ている。
父親が残してくれた遺産があるため、多少の余裕はある。
なのでとりあえず御神一家総出で買い物へ。
まあ、そこにいつものようになのはが居るのはご愛嬌。
「あ、この服可愛い。うん、フェイトちゃんに似合うと思うよ。ねーソラちゃん」
「本当だ、可愛い」
「あの、私はもっと落ち着いた色の方が…えと、これみたいに」
まだ一日しか経っていないがどうやら女の子同士打ち解けたようだ。
しかし…仲が良いのは良い事なんだけど…うん、もう原作にあるフルボッコから始まるお友達の展開は望めないかも。
ちょっと見たかったんだけどなぁ。ファンとしては。
「えー?こっちの方が似合うと思うけど。お兄ちゃんはどう思う?」
「ん?フェイトは確かに黒が似合う、だが若い時から黒ばかりだと損した気分になるから明るい色も良いと思うぞ」
バリアジャケットからして黒っぽいし、私服も黒っぽいイメージが確かにあるね。
でも、明るい色も似合うと思うんだ。
「あ…う、それじゃ、それ着てみるね」
そう言ってなのはに進められた服を持って試着室へと入っていくフェイト。
数分してカーテンが開けられた。
「どう…かな…」
顔を真っ赤にしつつ感想を聞いてくるフェイト。
「わぁ、似合ってるよフェイトちゃん」
「うん、確かに似合ってるね。かわいい」
「あ、あう」
ぷしゅーっと音が出るのではないかという位真っ赤になってから、
「こ!これにします!」
そう言って勢い良くカーテンを閉めた。
むむ、もう少し見ていたかったのだが…まあ、その内家で着てくれる機会もあるだろう。
その後、食器やタオルなども買い、帰宅した。
さて、帰宅した俺は買い物袋の中から買っておいた矯正箸と小豆を取り出す。
取り出した小豆を皿に盛り、もう一つ空の皿を用意。
「さて。フェイトー、ちょっとこっち来い」
「あ、はい」
まだ遠慮が残る声で返事をしたフェイト。
「箸の使い方の特訓をするよ。まあこの箸は正しい持ち方が出来るように開発されたものだから、頑張ろう」
「はい」
元気良く返事をしたフェイト。うん、いい返事だ。
「何やるの?」
興味を引かれたなのはやソラが近づいてきた。
「定番と言ったらこれだろ。小豆移し。皿に盛られた小豆を一個ずつ隣の皿に移動させていく。これが出来るようになればもう怖いものは無いよ。あ、そう言えばなのはもすこし持ち方がおかしいか?」
「にゃ?私は大丈夫だよぉ。ささっ!フェイトちゃんやってみよう」
話が自分に向いた瞬間に急いで話を反らしたなのは。
「まあ、今回は左利き用の矯正箸は買ってこなかったからな。また今度ってことで、フェイト?」
やるぞーと声を掛けて矯正箸を持たせる。
「それじゃ、よーい、始め!」
もくもくと目の前の小豆と格闘するフェイト。
最初のうちはフルフル震えながら一個移動させるのも時間がかかっていたのだが、繰り返すうちにだんだん時間が短くなっていく。
しかし驚異的なのはその集中力。
普通ならば飽きてしまうだろう作業を凄い集中力を持ってやっているので上達も早い。
これならすぐにマスターするだろうて。
案の定、フェイトは一週間もかからないうちに何でも箸で食べれるようになっていました。
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