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ワールド・エゴ 〜世界を創りし者〜

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world war6-『要の歯車』-

 
前書き
アッシュさんと『 』さんの詠唱はワルエゴオリジナルです。Askaさん、神崎さん、申し訳無い。 

 
その猫は、扉に入ってからは一度も振り向くことなく、奥へ、奥へと歩き続けた。
当然三人もそれに続く。

トラップのような何かが何度か作動しかけたが、何故か猫がそれを見れば止まった。

今更分かり切った事だが、やはりこの猫は只者ではない。味方であれば巨大な戦力となるだろう。
いや、『あれば』ではない。味方なのだ。そうでもなければ此方を助けるなどあり得ない。

戦は騙し、騙され合いの応酬。

そうはいっても、過度な援助は自らの首を締める事になる。
これは明らかに過度な援助だ。歯車が無ければどうしようもない自分達への救済レベルの行為。

つまり、敵の策では無い。

__兎に角、今は歯車の入手が先決。グダグダ考えてる暇はない。

--否。

--先ずは障害を抜ける事が先決か。

「二人共」

「分かってます」

「ちょっとこれは苦しそうですねぇ」

気配--なんて生易しいものでは無い。
殺気--でもまだ温い。


--死が、迫ってくる。

「『世界が求むは有象無象の儚き十字--イグザルト・レイ』ッ!」

アッシュの持つ杖から、光の十字架が噴き出す。
十字架はアッシュ達が通った道を塞ぎ、埋め、そして焼いた。

眩い光が道を照らし、熱気は空気を伝って本人の肌すら少し焼く。


--だが

--やはり、その『死』は止まる事を知らない。

光が、食い潰される。

伸びた手が光を飲み込み、その闇を誇張する。

踏み出せば大地が腐り、瘴気は壁を喰らっていく。

「……滅びろ、弱小な存在共」

『 』の存在は、其れ程の物だった。

闇が、アッシュ達の『(セカイ)』を覆う。

命を喰らい、生を喰らう闇が、三人の心の臓を喰らわんと、その暗闇を広がらせた--

が。

「……邪魔をしないで下さい--『機械仕掛けの神の白昼夢(ソーニャ・ディドリーム・シアター)』」

--それは、次の瞬間には消え去った。

無謀な努力が、儚く潰える様に。
宇宙へと放された風船が、いつの間にか忘れ去られる様に。
幼い子供の妄想が、いつかは現実というペンキに塗り潰されるように。

闇は、『夢』へと消えた。

いつの間にか三人の前に佇んでいたその少女が、欠伸をしながらその闇を消し去ったのだ。

三人の前を先行していた猫はいつの間にか居ない。それに、猫とその少女の雰囲気は何処か似ている。
つまり、先程の猫の正体がこの少女だという事なのだろうか。

「……『夢の主』か。邪魔をするならば、貴様でも消すぞ」

「出来る物ならやってみては?貴方の干渉は、私には通じませんよ」

「物語から消さずとも、殺してしまえばいい」

「それすら、貴方には出来ない」

「やってみれば分かる--『及バヌ神ハ流星ヲ見ル(スターバースト・ストリーム)』」

「……付き合っている暇はありません--『機械仕掛けの神の悪夢(ソーニャ・ナイトメア・シアター)

片や、全世界の管理者。総てを追放し、総てを生み出す、『物語』の化身。
片や、夢と幻想の『世界(人々の総意)』の管理者。人々の夢を現へとする、『夢想』の化身。

光を喰らう、滅びの流星が空を駆ける。その姿は、まるで深淵を告げに降りた死神であるかの様に。

夢を抜け出した、一対の盾の姿が現界する。その姿は、まるで総てを拒絶する感情無き騎士の様に。

滅びと夢は混じり、反発し、捻れ、収束し、そして--

__次元を引き裂く、断層へと転生した。

虚空へと消える道。切り離される二つの人影。その内片方は、すぐに走り出すと、その後ろに棒立ちになっていた三人を連れて、奥へと駆けた。

「……少し走ります!少しなら時間も稼げるでしょうが、あくまでも少しだけです。急いで!」

眠たげな顔からは想像もできない様な声。そして『相手より絶対に早く動ける』という異能を持つホロウすら凌駕するスピード。

その全てが、アッシュには異質に見えた。







◇◇◇






ましろと天冠は、その惨状に眼を見開いた。

闇に覆われた街、光が一切無い風景、死に絶えた植物、人の気配一つないビル群。

間違い無い。以前接触した『 』の物だ。それも、ケタ外れに強化された。

--いや、正確には、以前のが『普通より弱い個体』だっただけなのだ。

「……行きましょう、仲間が先行している筈です」

「……分かりました」

天冠が闇を斬り払い、『扉』への道を開く。
その先に待ち受ける、『絶対強者』の元へと繋がる道を--







◇◇◇








「……此処が、『玉座』……?」

扉の奥、其処に広がる『セカイ』の最深部。『玉座(果ての大地)

暗い、暗い夜空の様にも見える天蓋には、数多の星の輝きが見える。
その頂上に浮かぶは、一際大きな輝きを放つ漆黒の球体。

漆黒でありながら光を放つという奇妙な球体は、見ればその中にまた宇宙が広がっているのだ。
光を放っているのは、それらの星々。

その光が照らす大地の中心には、小さな台座があった。

黒曜石のような艶を持った不気味なソレの上には、虹色に輝く美しい宝玉が嵌められていた。その中には、幾重にも重なる波紋が刻まれている。

間違いない、あの宝玉こそが『歯車』だ。

証拠は無い。ヒントすら無い。しかし確信があった。

その確信を自分達に植え付ける程の力が、あの宝玉には眠っている。

「……あの『歯車』は、適性を持った者のみが手にする事が出来ます。ちなみに私は無理でした。手に取ってみてください」

「……はい」

促されるままに宝玉に手を伸ばす。
指先がその宝玉に触れるかどうか--そんなタイミングで、宝玉から発せられた結界が、その手を阻んだ。

「私では無理……のようですね」

「じゃあ私がいきますね〜」

入れ替わるようにホロウが手を伸ばす。それも結界に阻まれた。ダークも同様の結界だ。

「……参りましたね、此処にいるメンバーでは無理のようです。時間は掛かりますが、外と空間を繋いで仲間を呼ぶ--」

ピクリと、ソーニャが元来た道を見た。
何も変わっては居ない。だが、そこから漏れ出す瘴気だけはしっかりと感じ取れた。

「--のは、無理のようですね。なんとか援軍が来るまで持ち堪えましょう」

「ですね〜。……来ますよ……!」

----バクンッ!

突如。

その空間が、『()()』される。

削り取られた訳ではない。破壊された訳でもない。

元から何も無かったかのように、『何の違和感もなく』消え去ったのだ。

「……しつこい男は嫌われるって言葉、知ってますか?」

「……俺という概念に性別は無いし、そもそもそんな人間が作った言葉など知った事では無い」

ソーニャの軽い罵倒に、事務的に返答を返す『 』。
こんな小さな会話ですら、やはりこの二人は『生き物』では無いのだと実感する。





--死地に立たされた時、人は何を思うだろうか。





溢れ出る闇か?
漏れ出す夢か?


心を覆い尽くした恐怖か?
狂った思想からの妄想か?


「--『始祖ヲ眺メルハ終末ナル焔(ジ・イクリプス)』」

「--『機械仕掛けの神の夢(ソーニャ・ドリーム・シアター)』」




--『ソレ』を体現した二つの『世界』は、総てを混沌へと呑み込んだ。













世界転生まで、あと42時間。
 《滅びの依り代》の完成まで、あと40時間。

 
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