FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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エドラス編
アースランド
妖精の尻尾にて
今俺とウェンディはギルドのテーブルでルーシィさんとお話ししている。
「777年7月7日?」
「私たちやナツさんに滅竜魔法を教えたドラゴンが同じ日にいなくなってるんです」
「そういえば、前にナツがガジルの竜も同じ日に姿を消したって言ってたかも」
「俺とウェンディは滅竜魔法を教わったときから一緒にいたんでいなくなったのが同じ日ってのは知ってたんですけど・・・」
まさかナツさんたちのドラゴンも同じ日にいなくなってるなんて・・・何かあったのかな?
「どういうことなの?」
「遠足の日だったのかしら?」
「ルーシィさんも・・・たまに変なこと言いますよね」
「遠足だったらすぐに帰ってくるでしょ~?」
シャルルの問いにルーシィさんがボケをかます・・・さすがのウェンディも少しあきれてしまったようだ・・・
「火竜イクニール。鉄竜メタリカーナ」
「水竜ヴァッサボーネ、そして天竜グランディーネ・・・か」
「みんな・・・今どこにいるんだろう・・・」
ウェンディは少し寂しげな表情をする。ヴァッサボーネたちが姿を消して7年か・・・
俺たちがそんな話をしているとハッピーが元気な声でこちらにやって来る。
「シャルル!!」
「ん?」
ハッピーに呼ばれてシャルルはそちらを向く。するとハッピーは魚を持ち上げたままシャルルの前に飛んでくる。
「これ、オイラが捕った魚なんだ。シャルルにあげようと思って―――」
「いらないわよ。私、魚嫌いなの」
シャルルはそう言うとハッピーから顔を反らす。しかしハッピーはそれでもめげずに話を続ける。
「そっか。じゃあ何が好き?オイラ今度「うるさい!!」っ!?」
ハッピーはシャルルに怒鳴られて思わず怯んでしまう。
「私に付きまとわないで」
シャルルはそう言うと立ち上がってその場を立ち去ろうとする。
「おい・・・」
「ちょっとシャルル!!」
「ふん!」
俺たちがシャルルを呼び止めようとするがシャルルはお構いなしに歩いて行ってしまう。
「待ってシャルル~!!」
そんなシャルルを見てセシリーは後を追いかける。
「何もあんな言い方しなくて・・・ねぇ、ハッピー」
ルーシィさんがそう言うとハッピーは落ち込んだ顔をしている・・・
「シャルル!!ちょっとひどいんじゃないの!?」
ウェンディがそう言うがシャルルは振り返らないでギルドを出ていってしまう。セシリーはそんなシャルルの横を落ち着かせるような動作をしながらついていく。
「待ってよ!!シャルル!!セシリー!!」
ハッピーは急いで二人の後を追いかける・・・シャルルの奴・・・ハッピーに対する態度がなんかひどいな・・・
「なんかシャルルって、ハッピーに対して妙に冷たくない?」
「セシリーとは仲がいいのに・・・どうしたんだろう・・・」
「確かにな・・・」
俺たちはシャルルたちが見えなくなるまでそちらを見ている。そういえばセシリーとも初めの頃は仲がよくなかったな・・・ある日突然仲良くなったけど・・・ハッピーとも突然仲良くなったりするのかな?
シャルルを追いかけていったハッピーたちは・・・第三者side
「シャルル~!!」
「何よ。付きまとわないでって言ったでしょ?」
「シャルル~・・・そんな言い方ダメだよ~・・・」
シャルルを追いかけてきたハッピーにシャルルは冷たく言う。セシリーはそんなシャルルを注意するがシャルルは聞く耳を持たない。
「オイラ・・・何か悪いことしたかなぁ」
「そーゆーのじゃないの」
しょんぼりするハッピーとそれにため息を漏らすシャルル。セシリーは二人を交互に見てあたふたしている。
「あなたにナツは守れない」
「え?」
「私たちはウェンディとシリルを守る。何があっても絶対に二人を守る!」
シャルルはそう言うとセシリーの手を引っ張って歩き始める。ハッピーもそれについていく。
「オ・・・オイラだってナツを守れるよ!!ナツはオイラを仲間って言ってくれるんだ!!」
「守れないわ。
自分が何者か知らない猫には・・・行きましょ、セシリー」
「う・・・うん・・・」
シャルルはそういって歩き出す。セシリーはハッピーの方を一瞥し、シャルルの後をついていく。
ハッピーはあきらめて、ギルドに帰ろうとすると、そこには顔が傷だらけのガジルが立っていた。
「その傷・・・どうしたの?」
「うっせぇ!!」
二人はそれだけ言うと、揃って肩を落としてギルドへと帰っていった・・・
再びギルドにて・・・シリルside
「あれ?ハッピーだけ帰ってきた・・・」
「本当だ!」
「シャルルとセシリーはどうしたのかな?」
俺たちが入り口の方を見てるとハッピーがとぼとぼと帰ってきた・・・何故かガジルさんと一緒に・・・というか何故ガジルさんは顔が傷だらけなんだ?
「ん?」
俺が入り口の方を見ていると、外では雨が降っているのが見える・・・シャルルとセシリー、傘持ってなかったような・・・
「私・・・二人のこと探してくる!!」
「あ!!ウェンディ!!」
ウェンディが席を立ち、傘を持たずにギルドを出ていく。まったく・・・
「俺も―――」
ガシッ
俺もウェンディと一緒にシャルルたちを探しに行こうとすると、後ろから手を捕まれる。俺はそちらを向くとそこにはグレイさんがいた。
「グレイさん?」
「シャルルのことはウェンディに任せた方がいいだろ。あんまり大人数で行っても、シャルルが可哀想だしな」
「・・・それもそうですね・・・」
俺はグレイさんの言うことにうなずく。確かに・・・俺もシャルルを見つけて注意しようと思ってたしな・・・いっぱいの人に注意されちゃうとなんか面白くないと俺も思うし・・・ここはウェンディに任せるか。
「こっち来いよ。一緒に飯でも食ってウェンディたちを待とうぜ!」
グレイさんはそういって俺の手を引っ張っていく。気づくとルーシィさんもそちらに移動していたみたいで俺もそこに加わって話をする。
「雨やまないな~」
「ねぇ」
「結構降ってますね」
「ププーン」
「ジュビアのせいじゃないと思う」
「誰もそんなこと言ってねぇよ」
俺たちは窓から見える景色を見て、そんな話をする。そういえばジュビアさんって昔は雨女だったそうですね。でもグレイさんに恋したら直ったとか・・・愛の力ってすごい!
「くがーごがー」
「いつまで寝てんだナツ!」
ナツさんはさっきからずっと寝っぱなしだ・・・相当眠たいのかな?何かあったのか?
「顔に落書きしちまおうぜ!!」
「うわぁ・・・子どもの発想・・・」
そういってグレイさんは立ち上がるとペンを片手にナツさんの顔に落書きを始める・・・どうなっても知りませんからね~。
一方、シャルルを追いかけていったウェンディは・・・第三者side
「シャルル~!!セシリー!!」
ウェンディは二人を探してマグノリアの街を歩いている・・・しかし、なかなか二人は見つからない。
「シャルル~!セシリー!どこなの~!?あ・・・」
ウェンディがなおも叫ぶと、前から二つの小さな影が歩いてくるのを見つける。そう、シャルルとセシリーである。ウェンディは二人に素早く駆け寄る。
「シャルル!セシリー!やっと見つけた」
「ウェンディ~!!」
「あんた、傘もささずに風邪引くわよ」
「シャルルたちもでしょ?」
ウェンディは二人の前にしゃがみ目線を合わせる。
「シャルル!私たち、ギルドに入ってそんなにたってないんだから、もっとみんなと仲良くしないとダメだと思うの」
「必要ないわよ」
「しゃ・・・シャルル~・・・」
ウェンディがシャルルに言うが、シャルルは腕を組み興味なさそうにいう。
ウェンディはそんなシャルルを頬膨らませながら見る。
「あんたたちがいれば、私はいいの」
「もう・・・またそう言うことばかり・・・ん?」
「なに~?」
ウェンディはシャルルに向けていた視線を別のところに移す。シャルルとセシリーもそちらに視線を移すとそこには覆面を纏い、背中に杖を持った男がこちらに歩いてくるのが見える。
「ん?誰?」
「こっちに来るよ~?」
男はウェンディたちの前に来ると、その場に立ち止まる。ウェンディはその男を見ながら立ち上がる。
「ウェンディ」
「え?その声・・・」
「!?」
「今の声って・・・」
男の声にウェンディたちは思わず驚く。その声は三人には聞き覚えのある声だったからだ。
「まさか君たちがこのギルドに来るとは・・・」
男はそう言うとつけていた覆面を取り、顔をウェンディたちに見せる。その顔を見てウェンディたちは驚いた。
「ジェラール!?」
ウェンディは思わずそう言う。その顔は7年前にウェンディとシリルと共に旅をして、ニルヴァーナを止めたときに評議院に捕まったジェラールそのものだった。
「ど・・・どういうこと!?あんた確か捕まって!?」
「評議院に連行されていったよね~!?」
「それは私とは別の人物だ」
驚くシャルルとセシリーにミストガンはそう説明する。
「そんな・・・」
「ウソでしょ!?」
「どう見たってあんたジェラールじゃない!!」
「私は、妖精の尻尾のミストガン。7年前はこの世界のことはよく知らずに、君たちにはジェラールと名乗ってしまった」
「え?」
「(この世界)って?」
ミストガンの説明にウェンディとセシリーは疑問を持ち、シャルルは目を見開かせる。
「ま・・・まさか・・・」
ミストガンはウェンディに向かってうなずいてみせる。ウェンディはジェラールを見つめる。
「あなたが・・・7年前の・・・あのときの・・・ジェラール・・・」
ウェンディは嬉しくて涙を流す。
「ずっと・・・ずっと会いたかったんだよ!!私も・・・シリルも・・・ずっと会いたかったんだよ!!」
「会いに行けなくてすまなかった・・・」
ミストガンは申し訳なさそうにそう言い、ウェンディが泣いているのを見ている。
「だが・・・今は再会を喜ぶ時間はない」
「え?」
「今すぐ・・・」
ミストガンは少しふらつく。
「今すぐこの街を離れるんだ!」
ミストガンはそう言うとウェンディの前に倒れるようにしゃがみこむ。
「ジェラール!!」
「私の任務は失敗した・・・」
ミストガンは雨の降っている上空を悔しそうに見上げる。
「大きくなりすぎたアニマは・・・もはや私一人の力では押さえられない!
・・・まもなく、マグノリアは消滅する」
ミストガンにそう言われたウェンディは驚く。
「ど・・・どういうこと・・・?全然意味わかんない!!」
「もう終わるんだ・・・消滅はすでに確定している」
ミストガンは下を向いたままそう言い、ウェンディはそれにただ驚くしかできない。
「せめて、君だけでも・・・」
「妖精の尻尾は!?シリルたちはどうなるの!?」
ウェンディにそう聞かれ、ミストガンは目を閉じたまま黙ってしまう・・・
「ねぇ!!シリルたちは!?」
「・・・全員、死ぬということだ」
ミストガンがそう言うとウェンディはギルドに向かって走り出す。
「「ウェンディ!!」」
「みんなに知らせなきゃ!!」
セシリーとシャルルが呼び止めるとウェンディは二人の方を振り向いてそう言う。
「行ってはいけない!君だけでも、街を出るんだ!!」
「私だけなんてありえない!!」
「!?」
ウェンディにそう言われ、ミストガンは驚く。
「私はもう、妖精の尻尾の一員なんだから!!」
ウェンディはそういって再びギルドに向かって走り出した。
一方、妖精の尻尾では・・・シリルside
「ぐがーごがー」
「グレイ。そう言う子どもみたいないたずらやめなよ」
「誰が子どもだコラァ」
グレイさんは寝ているナツさんの顔を落書きをしている。ルーシィさんに注意されたけど、グレイさんは楽しそうにさらに落書きを加える。落書きされたナツさんの顔は・・・パンダのような猫のような顔になっている。
「子ども以下だわ!!」
「子どもでもこんなことしないですよ」
「ププーン」
俺たちがナツさんを見てそう言うとナツさんはすごい勢いで飛び起きる。
「ケンカかぁ!?俺も混ぜろ!!」
「はぁ~ぁ。何寝ぼけてんのよ」
「ん?」
「ナツさん・・・顔すごいことになってるんですよ」
「顔?」
俺がそう言うとナツさんは顔をペタペタと触り始める。そんなことしてもどうなってるかわかりませんよ?
「お前ら!!たまにはシャキっとしろ!!それでも漢か!?」
違うところではエルフマンさんがレビィさんの後ろで何やらソワソワしているジェットさんとドロイさんに怒っている。ルーシィさんはそれを見てため息をついたあと、ナツさんに手鏡を見せる。
「はい!」
「なっ!!」
ナツさんはその鏡に映る自分の顔を見て驚き、怒りを露にする・・・よく、そんなに書かれるまで寝れましたよね・・・
「誰だ!!これ書きやがったのは!!」
「そんなことするのは、同じような誰かさんしかいないでしょ?」
「はっ!!」
ルーシィさんがナツさんに囁くとすぐにナツさんは誰だかわかったようだ・・・
「てめぇかグレイ!!」
「やんのかコラァ!!イビキがガーガーうっせぇからお仕置きしてやったんだよ!!」
「なんだとこのやろう!!」
二人はそう言いあって殴りあいを始めてしまう・・・やれやれ・・・
「あ~ん♪グレイ様、ケンカしてるお姿も素敵!!」
「ジュビアさん・・・色々と大丈夫ですか・・・?」
ジュビアさんはケンカしてるグレイさんを見てうっとりしている・・・ジュビアさんも変な人だよな・・・幽鬼の支配者にいたときからこんな人だったのかな?
「ぷはっ!雨の日は彼氏とデートに限るね!」
「カナ、お客さんに出す分のお酒は残しておいてね」
樽を抱えて言うカナさんとミラさん。なぜかミラさんはコートを羽織っている。
「あれ?ミラさん、こんな日にお出掛けですか?」
「うん。ちょっと教会まで」
教会?で・・・今日何かあるのかな?
「漢ならもっと強くなれ!!そんなんじゃレビィは守れんぞ!!」
「おぉ・・・」
「わかってるよ・・・」
「エルフマン!行くわよ」
ミラさんはジェットさんとドロイさんを説教しているエルフマンさんに声をかける。ジェットさんたち何したんだ?
「姉ちゃんからも言ってやってくれ!!こいつら、この間仕事でヘマしやがってよぉ、先に伸びちまって結局レビィ一人で仕事を片付けちまったんだとよ!」
「うわ・・・耳が痛ぇ・・・」
「情けねぇ・・・」
ジェットさんとドロイさん・・・そんなことがあったんですか・・・それじゃあ確かにエルフマンさんにしっかりしろって言われますよね・・・
「ジェットもドロイも頑張ってると思うわよ!」
「ミラちゃ~ん!!」
「それなりに」
「ひでぇ!!」
ミラさんが笑顔でジェットさんとドロイさんにそう言う。でも・・・それなりって言ってもらえるだけまだいいんじゃないですか?
レビィさん一人じゃ大変だったでしょうし・・・
そのままミラさんたちが話していくと、しばらくしてミラさんとエルフマンさんは教会に向かう。
「ミラさんとエルフマン、こんな日にわざわざ教会になんだろう?」
「あ、そっか・・・」
「もうすぐリサーナの命日だったね・・・」
「リサーナさん?」
ルーシィさんの疑問にレビィさんとカナさんが答えるけど・・・リサーナさんって?
「ミラとエルフマンの弟なのよ。仕事中の事故で二年前にね・・・命日が近づくとあの二人、教会に通い出すんだ」
「そう・・・なんだ・・・」
その話を聞いて俺たちは少し暗くなる・・・ミラさんたち、辛かっただろうな・・・
「そういえばあんた、リサーナにちょっと似てるわね!」
「そうなの?」
「ナツと仲いいとことか!」
「え!?ナツさんが女の子と仲良かったんですか!?」
俺は驚いてナツさんに視線を移す。ナツさんはいまだにグレイさんとケンカしている。その脇でジュビアさんがその様子を眺めてるけど・・・目をハートにして!!
しばらく見ていると二人は疲れたのかケンカをやめる。
「ったく、どんだけ力余ってんだよ」
「ぐがーごがー」
「うおっ!もう寝てるよ!!」
ナツさんはケンカが終わるとすぐに椅子に座って寝てしまう・・・そんなに疲れたんでしょうかね?
「ふ~ん。昔ナツが女の子とね~」
ナツさんをニヤニヤしながらルーシィさんが言う。
「何ニヤニヤしてるんですか?」
「あー!!もしかしてルーちゃんナツのこと!!」
「えぇ!?ち・・・違うわよレビィちゃん!!」
赤くなるルーシィさん。まぁルーシィさんがナツさんのこと気になってるのは前から知ってたから俺はおどろかないぞ?
そんな話をしていると周りではグレイさんとジュビアさんがイチャイチャしたり、それを見てアルザックさんとピスカさんが何か話したり、マスターとエルザさんも何かを話している。
「あぁ!暇だね~」
「こんな雨だと仕事する気も起きないしね」
「なんかテンション上がりませんね~」
ルーシィさんとレビィさんと俺は集まってそう話している。俺は雨は別に気にしないけど、なんか今日は異様にやる気しないんだよな~・・・
「ん~・・・なんか面白いこと起きないかな~」
「面白いことですか~・・・」
こういうときは鏡でも見てきたら?って言うのがベタだけど・・・怒られそうだからやめておこう。
なぜか俺の意識は、そこで途切れてしまった・・・
その頃ウェンディは・・・第三者side
「ハァハァハァハァ」
ウェンディはギルドのみんなに危険を知らせるためにひたすらに走っている。
「きゃっ!!」
走っている最中にウェンディは転んでしまい、水溜まりに倒れる。ウェンディはすぐに立ち上がろうとしたがその水溜まりに映っている空を見て動きを止めてしまう。
ウェンディは立ち上がって空を見上げる。空には雨雲の間に大きな穴ができており、時おりその穴から何かが光る。
ウェンディはそれを見てさらに不安になり、再びギルドに向かって走り出す。
しばらく走るとギルドが見えてくる。しかし街の中では石や建物などが空に向かって吸い寄せられている。
「シリル!!みんな!!大変なの!!空が!!」
ウェンディがギルドに駆け込もうとすると目の前でギルドは何かに覆われ、歪み、徐々に姿を消していってしまう。
「何これ!?みんな!!きゃあっ!!」
ウェンディはギルドの前で叫ぶが風によって後方に飛ばされてしまう。
そんな最中もマグノリアの街はあらゆるものが消えていき、空に吸い寄せられていき、やがて全てのものが無くなってしまう・・・
「ん・・・んん・・・」
ウェンディが起きて前を見るとそこには先程まであった妖精の尻尾がなくなっているのが見える・・・いや、それだけではない。周りにも何もなく、ただただ真っ白な広野が広がっている。
「ウソ・・・ギルドが・・・消えた・・・?街も・・・全部・・・そんな!」
ウェンディはゆっくり立ち上がる。
「一体・・・何が起きたの!!」
ウェンディはギルドのあった場所に立って叫ぶ。
「誰かいないのー!?誰かー!!!」
ウェンディが叫ぶが誰も姿を現さない。ウェンディは立ち尽くし、やがて膝をついた。
「・・・誰か・・・あれ?」
ウェンディはそこまできてあることに気づく。
「なんで・・・なんで私だけ・・・ここにいるの?」
ウェンディは自分の手のひらを見て呟く。
「街も・・・ギルドも・・・みんななくなっちゃったのに・・・なんで私だけ・・・」
そう言うウェンディの目からは涙がこぼれる。ウェンディが呆然としていると脇で何か音がするのでウェンディはそちらを向く。
じっと見ていると突然地面が小さく競り上がる。
「ひっ!!」
「ブハァッ!な・・・なんだ?」
競り上がった地面からはナツが姿を現す。
「ナツさん!!」
「ウェンディ!!あれ?ここどこだ?」
ナツは周りを見回す。ウェンディはナツを見つけ嬉しくなり、顔を赤くし、涙をこらえながらナツに言う。
「何も、覚えてないんですか?」
「寝てたからな」
ナツはそう言い立ち上がる。ウェンディもそれにあわせて立つ。
「ここ・・・ギルドですよ」
「はぁっ!?」
「突然空に穴が開いて、ギルドも街もみんな吸い込まれちゃったんです!!」
ウェンディが事情を説明するとナツは驚いた顔をする。その顔はギルドがなくなったということに驚いたというよりも、ウェンディがおかしなことを言ったことに対する驚きの方が大きいようだが・・・
「本当です!!残ったのは、私たちだけみたいなんですよ!!」
「ウェンディ・・・どっかに頭ぶつけた?えらいこっちゃ」
「違うー!!」
ウェンディの頭を心配そうに触るナツ。ウェンディはバタバタと腕を動かし否定する。するとウェンディは自分とナツとの共通点に気づく。
「もしかして・・・滅竜魔導士だけが残された!?」
「そうよ」
ウェンディの言葉を肯定する声がナツの後ろから聞こえ、二人はそちらを見る。そこには翼を出したシャルルとセシリーがいた。
「シャルル!!セシリー!!よかった!無事だったんだね!!」
「まぁね」
「なんか助かっちゃった~」
ウェンディは二人に駆け寄り笑顔をこぼす。
「滅竜魔導士の持つ特殊な魔力が幸いしたようね。よかったわ、あなたたちだけでも無事で」
「シャルル・・・」
「そりゃあ聞き捨てならねぇな!!他のみんなはどうでも・・・って!!本当に消えちまったのか!?」
「・・・うん」
「さっきからウェンディがそういってるじゃ~ん!!」
ナツはウェンディとセシリーの言葉を聞くと後ろを振り向いてみんなを探す。
「消えたわ。正確に言えば、アニマに吸い込まれて消滅した」
「アニマ・・・!!」
「さっきのジェラールくんの言ってた・・・」
シャルルとウェンディとセシリーがそう言う。シャルルは腕を組み話を続ける。
「さっきの空の穴よ。あれは向こう側の世界、エドラスへの門」
「向こう側の世界~・・・?」
「エドラス・・・!?」
シャルルの言うことにウェンディとセシリーが驚く、
「お前!!さっきから何言ってんだよ!!みんなはどこだよ!!」
「ナツさん!!」
「ナツくん落ち着いて~!!」
今にもシャルルにつかみかかりそうなナツをウェンディとセシリーは押さえる。ウェンディはナツを押さえながらシャルルを見る。
「ねぇシャルル、何か知ってるの?そういえば、なんでシャルルとセシリーが無事だったの?」
「・・・」
「僕らだけじゃないよ~。ほら」
ウェンディの問いに無言のシャルルと何かを指さすセシリー。セシリーの指差した方向からはハッピーが飛んできた。
「ナツー!!何これー!?街がー!!!?」
「ハッピー!!」
「無事だったのね」
無事だったハッピーを見て笑顔になるナツとウェンディ。しかし、シャルルだけは依然として暗い表情のままである。
「私は向こう側の世界、エドラスから来たの」
「「「「え?」」」」
シャルルの言葉に四人は変な声を出す。
「そこのオスネコとセシリーもね」
「「?」」
「どういうこと?」
ウェンディが聞くとしばらくの沈黙が訪れる。シャルルはうつむいたまま話始める。
「この街が消えたのは・・・私たちのせいってことよ・・・」
四人はシャルルの言葉に呆然とするしかなかった・・・
後書き
いかがだったでしょうか。
途中からシリルがフィードアウトしましたが忘れてたわけではありません。ちょっと遅れて出てきます。
ちなみにセシリーとシャルルが仲がいいのもちゃんと理由は考えてありますが納得してもらえるか不安です・・・
次回はエドラスへと向かいます。
次回もよろしくお願いします
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