美しき異形達
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第五十話 明かされる真実その十五
薊は首を傾げさせてだ、こう言うのだった。
「この別嬪さんも急に出て来たけれどな」
「そうね」
菖蒲もその研究室の見えない果てを見つつ言った。
「この研究室は」
「随分広いな」
「変わったお部屋ね」
「まさかこの部屋もな」
「何かあるのかしら」
「錬金術?」
菊が首を傾げさせて言った。
「それを使ってるとか」
「この場合は魔術なんじゃないの?」
向日葵はこう考えて言った。
「お部屋の先が見えないことについては」
「あの、博士」
桜はこの部屋の主である博士自身に問うた。
「このお部屋は」
「うむ、実際に魔術でな」
博士は桜のその問いに笑顔で答えた。
「空間を縮めてな」
「そうしてですか」
「果てしなく広くしておる」
研究室の中はというのだ。
「何しろわしの持っておる本は多いからのう」
「それで魔術をですか」
菫はその本をざっと、しかも離れた場所からであるが見ていた。見れば日本語だけでなくアルファベットや略体字、そして古い文字と様々だ。
「使われて」
「そうじゃ」
「だからですか」
「うむ、魔術を使っておるのじゃ」
「それでこの方は」
鈴蘭は美女のことをだ、博士に問うた。
「博士の」
「秘書のろく子君じゃ」
「宜しくです」
紹介を受けた美女は一行ににこりと笑って応えた。
「博士の秘書の長首ろく子です」
「長首さんですか」
「ろく子とお呼び下さい」
こう一行に言うのだった。
「これからは」
「わかりました、ただ」
ここでだ、黒蘭はそのろく子に対して問うた。
「一つ思うことは」
「何でしょうか」
「貴女は博士の秘書とのことですが」
それでもというのだ。
「何か違う気配が」
(普通の人とですか」
「私達は怪人とはまた違う」
「だよな、何かこの人の気配ってな」
薊もだ、ろく子を見つつ鋭い目になって言った。
「普通の人とな」
「違ってるわね」
「博士のそれに近いか」
「ほっほっほ、わしにか」
「そんな感じだぜ」
薊は笑って言う博士にも答えた。
「何かな」
「まあわしが近付いているのやもな」
「ろく子さんにかよ」
「沢山の古くからの友達にのう」
「何かよくわからない話だな」
「そのうちわかるやも知れぬ、とにかくな」
また言う博士だった。
「二人の伯爵については任せてくれ」
「ああ、悪いな」
「では羊羹のおかわりじゃ、お茶もじゃ」
「はい」
六個は博士の言葉に笑顔で応えた、そうしてだった。
研究室の奥に一旦消えてからだった、その羊羹とお茶を盆に乗せて持って来た、博士はここであらためて言った。
「どんどん食べてくれ」
「どんどんかよ」
「そうじゃ、遠慮はいらんからのう」
こう言ってであった、そのうえで。
一行は博士から羊羹をさらにご馳走になった。彼女達の運命の核心に迫る話の後で。
第五十話 完
2015・2・20
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