我輩は逃亡者である
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第一章 ただいま逃亡中ぼっち。
06.犯人はお前だ!
夏だ!海だ!密航船だぁ!ヒャッホー!
前に飛行機で高飛びしようとしたことがあったけどパスポートがないから出来なかった…しかし世の中にはルールなんて破るためにあるんだと言わんばかりの反骨精神あふれる方々が存在するのだ。
--まあ港に来たときに真っ昼間から酒盛りしてるおっさんたちに絡まれたと思ったら密航うんぬんについてベラベラ話したのだが…酔いの覚めたときに簀巻きにして沈められかけたりもしたが何とか同行を許可してもらえた。寧ろ同行か簀巻きで溺死の二者択一だった。
「しかしそんな酔っぱらってベラベラ喋るなんておっさんたち大丈夫か?」
と問うと
「--大丈夫だ、問題ない」
と言われた。この密航は恐らく失敗する、今からそんな気がしてきた。
--そして近辺の漁師や船を使う企業に海に出ないよう国から警告があったらしい。しかしその警告を聞いたおっさんらは出航の支度をしていた。以上現在までの流れ!
「え?おっさんたち今出るのか!?」
「あたりめぇよ!海が国からの警告で封鎖されたってことは恐らく何かドンパチでもするってことだ。その混乱に乗じて密航するって寸法だ!!」
え、えー…これは本格的に失敗どころか死亡フラグがたってますよ?いやそれより何で国からの警告がこの密航船にも来たのか甚だ気になるのだが…
チクショウ!こんなことなら海に来なけりゃよかった!樹海に迷…いたときより冷や汗が止まらない。
「いやいや!考え直しましょう、絶対ヤバイですよ!」
「あぁ?俺らの考えが間違ってるってのか!簀巻きにして沈めんぞ!」
「よーし出航しましょう!さあ早く支度を済ませて!」
先の命より今ある命だよね!まあこんなのただの予感がするってだけだけだし、当たるとは限らないよ!もしかしたらなーんもなく平和にいけるかもしれないし。
--そもそも今思えばあんなこと考えた時点でフラグが建っていたのかもしれない。
そして現在密航の最中、船の上で空を見てたのだが
ん…んんんん!?
--あ、あれは…ISが!ISが戦ってるよ!?お前ら元宇宙用、現在競技用じゃないのか!?海の上でドンパチするなよ、競技場でやろうよ!あ、そういやIS用のスーツってレオタードみたいって聞いたことがある。近づけば際どいアングルで見えるのか!?
いやいやそんなこと言ってる場合じゃない!最悪死ぬ!
「おっさん空見て!ISが戦闘してる、戻ろう!今すぐ戻ろう。こんなん突破するのは無理だよ!」
「なんだと?そんな訳『ボス!空でISが戦闘してます!』本当かよ!?離れるように旋回して引き返すぞ!全員何かに掴まれ!全速力でいくぞ!」
まったく、悪い予感ほど当たるっていうけどこれはないでしょ!あれに巻き込まれるとかマッパでハリケーンに巻き込まれるようなもんじゃん!あ、マッパハリケーンって何か語感いいね。
『お、親方!空から、空から流れ弾が!』
「うるせぇ!そんなことよりISからは離れられてるのか!?」
『はい!もう目で確認できる限りでは豆粒サイズですよ!』
…ふぅ、早めに気付けたのが功を奏したか巻き込まれずにすんだようだが…豆粒サイズで視認できる距離離れてるのに流れ弾が跳んでくるとはIS恐るべし!双眼鏡で見てみるが動きが早すぎて殆んど見えない。
バルスって言ったら落ちないもんかね、バルスッ!……あ、ホントに一機爆発しながら落ちていった。あれ生きてるのな?やっぱISって競技用と書いて戦闘用って読むんじゃないかな。
いやそのISに俺も乗れるらしいけど乗ったことないしよくわからんけど。ただ宇宙用につくられたISとその開発者にはご愁傷さまですと言いたい。
--さてそろそろ岸についたら簀巻きにされる前に逃げる準備をしますかね。
▼▼▼▼
臨海学校で海へと来ていたのだが二日目の換装装備(パッケージ)確認の演習を始めた直後に箒の姉、束さんが来た。昔から何をしでかすかわからない人ではあったが今回はなんと箒の誕生日プレゼントといいIS、それも第四世代を持ってきたのであった。何でもその第四世代の紅椿には展開装甲という機能が全身についているようだ。因みに俺の白式、正確には雪片弐型にもその機能がついているらしい。
……そのやりとりの時点で周りの空気が凍りつきかけてたのだが千冬姉にやり過ぎるなといっただろうと言われたときに
「えー、これでも押さえたんだよ?束さんからしたらどうしてそんな第二世代第三世代みたいなアンティークをつくって乗っているのか理解できないよ」
と返した一言で完全に空気が凍りついた。世界じゃ第三世代がようやく形になって使用出来はじめたところだからな……
そんなやり取りを行ったあと専用機を手にいれた箒を交え演習を行おうとしたところに山田先生が走って千冬姉に慌てて何かを報告していた。
--それはアメリカとイスラエル共同開発した第三世代型軍用IS、銀の福音(シルバリオゴスペル)が暴走してここへ向かっているということだった。
そして銀の福音を止めるのに選ばれたのは一撃必殺が可能な白式と現在最高スペックであろう紅椿……俺と箒だったのだが
「シールドエネルギーが残り少ないッ!」
銀の福音への奇襲が失敗しそのまま戦闘へと移行したが銀の福音の速度と弾幕に翻弄され箒は何とか追いつけているが俺は雪片弐型の届く範囲に入ることすらできていない
「ッ!私が福音を止める!その隙にお前が切れ!」
「わかった!」
そして箒は紅椿の武装である雨天、空裂で牽制しつつそのまま銀の福音の動きを止めようとしたのだが
--雨天と空裂が消えた?……ッ!具現化維持限界か!
箒は何が起きたのか咄嗟に把握できずに固まってしまっているが銀の福音が撃ち出した弾幕《銀の鐘シルバー・ベル》が箒に向かっている!
「届けぇぇぇぇぇぇ!!」
何とか箒と迫る弾幕に割り込むことは出来たがシールドエネルギーも底をつきながら銀の鐘を受け…俺の意識はそこで途切れた。
▼▼▼▼
双眼鏡で見ると岸が見えてきたんだけど何人か人がが見える。より詳しく言えば打鉄とラファールを装着した女性たちが見える、因みに皆結構な美人である。
--このままいけばパクられるよなぁ。よっしゃ取り敢えず上の服を脱いで……違うよ変態じゃないよ!こ、これには訳があるんだ!と、取り敢えず脱いだ服をリュックに入れて更にそのリュックをポリ袋に入れてくるむ。
そして上半身裸のまま船のこっそり最後尾へといき
「あばよーとっつあん!」
母なる海へとダイブ!ハッハッハおれは一足先にトンズラこくぜ!因みに台詞は言ってみたかっただけ。
…陸まで結構あるよなぁこれ。えーと波に平行に進めばよかったっけ?まあ真っ直ぐ戻っても結局捕まるしそうするかな。ってか足が重い、ズボンも脱げばよかった。寧ろ全裸でもいい。
そういえばバルスで落ちてたあの人は助かったのであろうか?自分のバルスで人が亡くなるのは嫌すぎなので無事を祈っておくとしよう。
▼▼▼▼
銀の福音に撃墜されてから寮に運ばれ目が覚めるとなぜか傷が治っていた。その後セカンドシフトした白式で銀の福音を落とすため出ていった皆を追いかけセカンドシフトした白式で救援に入ったが……またシールドエネルギーがつきかけた。
しかし箒が単一仕様能力、絢爛舞踏を発動させ白式のシールドエネルギーが回復し何とか銀の福音を撃破することができた。
「にしてもただでさえ燃費の悪かった白式が更に燃費が悪くなっちまった……」
ピーキーすぎる機体も考えものである。
--その頃海岸では
「おい、束。今回の件お前の仕業か?」
「わお!ちーちゃん直球だね!」
「回りくどいのは嫌いなんだ、でどうなんだ?」
「さーてどうでしょう?ちーちゃんのその筋肉が詰まってそうな頭で考えアイタタタタタ!?アイアンクローはやめて!中身が出ちゃうよ!?」
はぁ……こいつはいつも素直に本当のことを話そうとしないから困る。
「まあ、そんなことは置いといてちーちゃん。もう少ししたら2キロほど離れた岸に密航船がつくよ?」
「何?どういうことだ」
「漁師とかには国からの警告があったでしょ?海に出るなって。で封鎖された海で何かドンパチがあるだろからそれに乗じて行っちゃえーってバカが強行しようとしたんだけどドンパチの内容がISだったから引き返してきたってとこだろうね」
「チッ、底抜けの馬鹿がいたものだな。因みに私としては何故そいつらが海が封鎖されてたか知っていたのか、今の今まで探知されなかったことが気になるんだがな?」
そうだ、国から警告を出すのは正規の企業などに限る。そして密航船の者たちが知っていたとなれば……
「私がリークして隠してたんだよ!テヘペロ☆」
「ふんッ!」
「ふべ!?ちーちゃんが殴った!」
「おい何故そんな情報を流した」
「いやー、その密航船にかーくんも乗ってたんだよねー」
だから帰ってくる船に捕まえれば一緒に捕まえられるかもしれないから他のやつでも向かわせたら?と束は言った。
--のだが、かーくん?もしかして上代翔のことか?何故こいつが上代翔がその船に乗ってることを知って……いやそもそも
「わかった、まあ密航船も捕まえねばなるまいし他の教師を向かわせる……しかしどうしてお前が他人の名前を覚えてるんだ?」
「酷い!ちーちゃん酷いよ……ってのは冗談として私も始めにかーくんがISを動かしたときにはムカついて警察に個人情報流したり色々したんだけどねー。一向に捕まらないんだよ。それにこの束さんの予想外ばかりの行動をとる。ちょっと興味が湧いちゃったのさ」
……上代翔、こいつに興味を持たれるとは凄いのかおかしいのか。一応ご愁傷さまであるとだけ言っておいてやろう。
「そうか、でその上代翔が乗る密航船に情報を流したのは何故だ?」
「面白そうだから!」
「おい」
「まあ実際は巻き込まれる前に回避しちゃったんだけどねー、見事なイベント回避だったよ!」
まったくコイツは……巻き込まれたらただでは済まんだろうが。
「ま、そこで巻き込まれるのを回避できるのも今まで逃げ続けられてる理由かもね」
「そうかもしれんな」
「……ねぇ、ちーちゃん。今の世界は楽しい?」
「……そこそこにはな」
そう私が答えると束は
「そう……私は--」ザッパァ!
「ん?」
「うぇ!?」
何か答えようとしたが何やら海からおかしな波音が聞こえそちらへ目を向けると
--上半身裸の上代翔がいた。
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