我輩は逃亡者である
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第一章 ただいま逃亡中ぼっち。
壱。我輩は天災である
彼女、篠ノ之束は天災である。道行く人に問えば皆そう答えるであろう。そんな彼女に不可能なことといえば死者蘇生や時間停止くらいなものであり、まあ時間停止に関してはAICを応用すれば擬似的に似たことは可能ではないかなと思い始めたこの頃だったのだが。
「むきー!なんなんだよこいつ何でISを動かせるんだよっ!いっくんが打鉄を動かせたのは束さんがちょろちょろーっと弄ったからだけどこいつには何もやってないのに!」
そんな天災である束は自信のラボである我輩は猫であるで荒ぶっていた、全国で男性IS操縦者を探すテストがあるとは知っていたが無駄だとわかっていたのである、ISの製作に取りかかっていたのだが…そのときとある試験会場にあるISから反応があったのだ。そのことに久しぶりに驚いた束は急いで監視カメラをハッキングし確認してみると
--会場より全力疾走で逃げ出すISを起動させたであろう男、上代翔の背中が写っていたのである。
「しかも何で逃げてるのさ!わけがわからないよ!」
めんどくさかったが取り敢えず片手間に身元を調べて差出人不明で警察署へ情報を流した。こんな一般人さっさと捕まって解剖されればいいんだよ!と思った束であった。
のだが
▽▽▽▽
上代翔の情報を流してから3日。ふと、そういえば訳のわからないアイツはどうなったのか気になった束はものの数秒足らずで調べあげたのだが…
『3日前に発見されて以来消息不明だった男性IS操縦者、上代翔さんがついに発見されました。がしかし警察が夜を徹して必死の追跡をするも遂に振り切られてしまいました…現在当TV局はヘリにて上代翔さんが逃亡したと予想される郊外を空から捜索中です……』
「なん…だと?」
奇しくもそれは男性操縦者である上代翔が逃亡したと聞いたときの一夏と同じ反応であった。
束は今頃上代翔は捕まっておりバースデーケーキよろしく切り分けられて世界中に体のパーツが散らばっているだろうと思っていたのだが
「いくら束さんにとって他の人間が魑魅魍魎の有象無象とはいえ日本の警察は世界的に見れば優秀な方なのに…これは流石の束さんも予想だにしなかったよ」
『あれは…上代翔さんです!あのペイントボールで真っ赤な背中は間違いありません!警察に連絡をいれながら空から追跡を続けたいと思いま…あ、あれは富士さ、いえ!樹海です!上代翔さんは何故か樹海に向かって走っていきます』
「……」
『上代翔さん止まってください、ホント止まってください!ああ!?樹海へそのまま入ってしまいした…追跡を続けたいのですが樹が邪魔をして空からの追跡は困難です。一度地上へと降り警察の方々と合流したいと思います!』
「……ホント予想だにしなかったよ、樹海に突っ込んでいくなんて。目は血走って変なこと叫んでるし」
これが束の中で上代翔が有象無象の一般人から予想できない変態へと変わった瞬間であった。
「それにしてもあの逃亡中の危機せまる表情とスピードはちーちゃんを彷彿とさせるものがあったね。流石にちーちゃんの方が怖いし速いけど。それにちーちゃんは追う側だしね」
うーん樹海に入られると衛星でも中々見えないなぁ、そんなことを呟きながら新しい人間の行動に少し興味をもった束であった。
▽▽▽▽
そしてまた日がたったある日のこと
「いけぇ!ゴーレムl号くん!いっくんと白式の勇姿をその頭部に収められたカメラで記録するのだぁ!いけ今だ、シャッター!」
篠ノ之束はIS学園に無人機を送り込み親友の弟を盗さ…撮影していた。なんとこの無人機両腕からビームが出るだけでなく頭部に収められたカメラで撮影が可能なのだ、寧ろ両腕の武装は撮影時間を稼ぐためのオマケである。……そのオマケの威力が洒落にならないのが問題なのだが。更に本人はその事を欠片も気にせずノリノリで遠隔操作してるのだが。全くもって甚だ迷惑なやつである。
--しかし
「うわ、片腕切られたよ!?いっくんやるね!でもまだ頭部のカメラは生きてるもっぁぁぁあ!?返す刀で頭も切られちゃったよ!」
調子にのって遊びすぎたせいで片腕だけでなく頭部(カメラ内蔵)まで切り落とされてしまった。
「むむ、流石いっくん。撮影用無人機とはいえゴーレムl号くんの頭を切るなんて、まあもう撮影できないし自動操縦でいいや」
そんなことを言いながらポイッとゲーム箱風のコントローラーを投げ捨てる束。
そして最後にアリーナに見当たらなかった愛しい妹を探そうと校内の監視カメラをハッキングしてみると…
--保健室の窓から飛び出す上代翔の背中が見えた。
「ちょっ!何できみがいるのさ!?てかまた逃げてるし…でもIS学園から出ようと思ったらモノレールに乗らないと出られないんだよ?来たことないはずの場所で一直線にモノレール目指せるのは凄いけどさ…」
…久々に、本当に久しぶりに束の予想を外し驚かせた人間であった。そしてその彼がこのまま捕まって解剖されるのは惜しい気がした。
因みに捕まっても解剖されると決まったわけじゃない。
「ま、これも何かの縁と思ってこの束さんがモノレールくらい動かしてあげようじゃないか」
まあ君ならモノレールが動かなくても逃亡しそうだけどねー、そう呟きつつも上代翔がモノレールで移動できるよう手助けする束であった…
--無人のモノレールのドアが自動で開いたり勝手に動くのに特に反応もなくモノレール内でくつろぐ彼は確実に感覚がずれていると思いながら。
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